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新専門医制度の1年延期を社員総会で了承

新専門医制度の1年延期を社員総会で了承

新専門医制度の1年延期を社員総会で了承

【日本専門医機構】
9月初旬には対応方針を四病協に報告

 日本専門医機構(吉村博邦理事長)は7月25日の社員総会で、前号既報のとおり、新専門医制度の開始を1年延期し、「2018年度から一斉にスタートする」方針を了承するとともに、当面のスケジュールを決めた。7月中に各学会から地域医療への配慮した対応を聴取。8月中にその内容を精査し、9月初旬には結果を四病院団体協議会や日本医師会、社会保障審議会・医療部会などに報告する。

 日本専門医機構は7月20日の理事会で、新専門医制度の1年延期の方針を決めた。社員総会でその方針を伝え、社員から反対はなかった。2017年度は、各学会に従来のプログラムの実施を求めるが、新制度のもとで準備しているプログラムについても地域医療への配慮が確認された場合は「暫定プログラム」として認める。社員総会では、今後の方針が決まったことを受け、当面のスケジュールを固めた。
 まず7月中に18基本診療領域の学会から、2017年度の対応を報告してもらう。従来の研修を継続するのか、あるいは新たな研修を「暫定プログラム」として実施するのかを聞いた上で、従来・暫定プログラムを問わずに、地域医療に配慮した取り組みを聴取する。
 8~9月にかけて、各学会からの報告内容を精査し、問題が残ると判断した場合は学会と協議する。地域医療への配慮としては、「様々なオプションがある」(吉村理事長)としているが、医師偏在の拡大が懸念される中で、最も問題視されているのは、これまでの研修の実績と募集定員との倍率であり、例えば1.2倍程度に収めることを求める。現状ではどのプログラムも倍率が2倍を超えていて、大都市に「専攻医」が集中するおそれがある。
 また、基幹施設と連携施設との関係、連携施設や指導医の要件の緩和なども重要な対応となる。
 対応策が決まれば、各学会が都道府県の医療対策協議会に報告する。あわせて専門医機構が厚生労働省や社会保障審議会・医療部会に説明する。6月7日に地域医療への懸念を表明し、機構に文書を送付した四病院団体協議会と日本医師会に対しても報告するとしている。これらを9月上旬までに行う。
 吉村理事長は予定どおり進めば、「専攻医」の募集が9~ 10月に始められるとの見通しを示した。
 今回の見直しで、来年度は機構が正式に認定する形での研修は行わず、18基本診療領域の学会が責任をもって実施することになった。一方、総合診療専門医には既存の研修がない。総合診療専門医も2018年度にスタートすることになっているが、2017年度の暫定的な措置については、「理事会で今後協議する」とした。

サブスペシャリティの議論を早急に

 社員総会では、専門医の資格の更新やサブスペシャリティ、「専攻医」の身分保障の問題など様々な質問や意見が出た。
 機構が認定する専門医は将来、医療法で規定する「広告できる専門医」とするよう厚労省に働きかける予定。しかし機構が認定する研修はあくまで2018年度からであり、それまでの更新の位置づけが不明確になる。このため更新については機構認定の専門医になれるよう遡及措置を検討する。
 基本診療領域の専門医取得後に進むことが想定されているサブスペシャリティについては、現状で「ほとんど決まっていない状況」(松原謙二副理事長)。社員総会では、それを懸念する意見が多かったという。特に、がん関連の学会から、早急に議論を始めることを求める強い意見が出た。また、複数の基本診療領域の専門になる、いわゆるダブルライセンスを「認めるべき」との意見があった。
 「専攻医」の身分保障に関しては、雇用関係を明確にすることが必要との認識を共有した。給与について松原副理事長は「雇っている病院が支払うのが当然だと思う」と述べた。

新たな別の「検討の場」を設置

 新専門医制度を1年延期する今回の方針は、機構に新たに設けた「検討の場」の7月20日の協議の結果を受けて、決まった。「検討の場」に参加した地域医療機能推進機構の尾身茂理事長は、今後の人口構造や疾病構造の変化を踏まえ、あるべき専門医と専門医制度のあり方を検討する場の設置を提案。これを受け、新たに別の「検討の場」を設けることになった。
 その「検討の場」では、2018年度の開始に向けた喫緊の課題ではなく、中長期的な時間軸で、「大局的な大方針」を描くとしている。具体的な議論は、9月以降に始める。
 今回の機構の見直しにより、機構と学会の役割分担が変わり、医学教育に関わるものは学会が多くを担う方向となった。一方、機構の役割は専門医の認定や学会のサポートに縮小することになるが、あわせて、どのような専門医が地域にどれだけ必要かなど大局的な視点を示す役割も期待されている。
 そのような課題が、新たな「検討の場」で議論されることになりそうだ。

 

全日病ニュース2016年8月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 日本専門医機構> 新専門医制度は2018年度から一斉にスタート

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160801/news01.html

    2016年8月1日 ... 専門医機構は、これらの方針を7月25日の社員総会に報告し、了承を得た。 ... 新たな
    プログラムで研修を開始する学会には、地域医療に十分配慮することを要請した上で、
    暫定的なプログラムとして研修を開始することを認める考えだ。

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年6月15日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160615.pdf

    2016年6月15日 ... この日は、機構の理事会や社員総会. の議事録などが ... 日本医療. 法人協会会長の
    加納繁照委員は、. 「新た. な専門医のプログラムはあまりに大. 学病院、大病院中心だ」
    と述べ、新プロ. グラムが始まる ... 四病院団体協議会と日本医師会は6月7日に会見を
    開き、日本専門医機構と基 .... 機能等がある」暫定調整係数の廃止に.

  • [3] 新専門医制度は2018年度から一斉にスタート

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160801.pdf

    2016年8月31日 ... とを要請した上で、暫定的なプログラ. ムとして .... 6月 27日の社員総会で新たな理事を.
    選出し、 ... 日本専門医機構(吉村博邦理事長)は7月 20日に理事会を開き、当初予定
    して ... こでいう、制度には研修プログラムとともに指導医、研修施設.

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