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介護保険被保険者の対象拡大で議論 財政論に懸念示す委員が多数

介護保険被保険者の対象拡大で議論 財政論に懸念示す委員が多数

【厚労省・介護保険部会】

 社会保障審議会の介護保険部会(遠藤久夫部会長)が8月31日に開かれ、厚生労働省は、(1)介護保険の被保険者の範囲をどう考えるか、(2)リハビリテーション機能をさらに強化していく方策をどう考えるか、(3)在宅の中重度者に対する支援をさらに充実していく方策をどう考えるか、(4)今後の特養の役割をどう考えるか、(5)介護手当(現金給付)についてどう考えるか、などのテーマを提起した。
 このうち、(1)の被保険者の範囲では、介護保険の被保険者を40歳未満に拡大する考え方に対して、異論を唱える委員が多数を占める一方で、将来的に検討すべき課題であるとする委員も少なくなかった。(5)の現金給付に対しては、一部の委員が前向きな姿勢を示したものの、多くの委員は反対意見を表明した。
 被保険者の範囲について厚労省は、これまでの議論の経緯を紹介した上で、介護保険を、医療保険のように全世代を対象とした普遍的制度としていくべきか、あるいはこれまでのように高齢者に特化した保険制度でいくべきかと問題提起を行った。
 介護保険部会が2004年にまとめた意見書では、「制度の普遍化を目指すべきとする意見が多数であった」と記載している。さらに、2007年の有識者会議の中間報告では、「介護保険制度の被保険者・受給者範囲については、将来の拡大を視野に入れ、その見直しを検討していくべきというのが本会議が到達した基本的考え方である」と明記した。その後も被保険者の対象年齢を引下げ、介護保険制度の普遍化を図るべきだという議論はあったものの、踏み込んだ議論に至らず、先送りされてきている。
 この日の部会では、日本商工会議所と日本経済団体連合会委員が「第2号被保険者の負担を拡大するという狙いであればこの議論には反対する」と発言、財政論から論じることに警戒心を示した。
 全国市長会の委員は、「市長会の中にも両論がある」とした上で、「40歳未満に負担を求めるのは納得が得られない。保険料だけが取り上げられるが、税の投入はどうなるのか」と反問した。
 日本医師会常任理事の鈴木邦彦委員は「中長期的に制度の拡大は避けられない。しかし、障害者や若年層の納得が得られていない現時点で、時期尚早である」と述べた。
 一方、連合の委員は「以前から普遍化を求めてきたが、それが被保険者の数を増やすという財政論にすり替えられてしまっている」と違和感を表した上で、議論の継続を求めた。
 全国老人福祉施設協議会の委員は、「高齢者に限定しない制度とすべきである。まず、40歳以上の特定疾病の制限を外すべきだ。40歳未満も対象とするのであれば保険料に格差を設けるべきだ」と述べ、普遍化を目指す方向で議論を求めた。
 部会では、被保険者の拡大に関して賛否が分かれたが、普遍化の方向を支持する委員も財政論から論じることに危惧を示した。
 その中で、全国老人保健施設協議会会長の東委員は、「財政論から論じられている。社会保障制度の枠内に収まる話でもない。もっと国民、とくに若者を巻き込んだ議論としていかないとまとまらない」と発言、介護保険部会にとどまらず、関係者の枠を超えた議論としていくことを訴えた。
 介護保険部会は、来年度の制度改正に向けて議論を進め、年末にかけて意見をまとめる予定だ。

 

全日病ニュース2016年9月15日号 HTML版

 

 

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