全日病ニュース

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世界のムナカタ(棟方志功)と富山の文化

世界のムナカタ(棟方志功)と富山の文化

【夏期研修会を富山市で開催】
川渕氏が病院経営のイノベーションを論じる

 全日本病院協会の2016年夏期研修会が富山県支部(藤井久丈支部長)の担当で8月28日、富山市のANA クラウンプラザホテル富山で開催され、103人が参加した。
 夏期研修会では、片岸昭二・南砺市福光美術館館長が世界的な版画家である棟方志功と富山のかかわりについて講演したほか、川渕孝一・東京医科歯科大学大学院教授が今後の医療行政を展望した。
 冒頭に挨拶した藤井支部長は、立山連峰と富山湾の豊かな自然に恵まれた富山の魅力を紹介。全国から集まった全日病の理事や支部長を歓迎した。
 続いて神野正博副会長が挨拶。「OECD 加盟国の中で、日本の対GDP医療費は、アメリカ、スイスに次ぎ3位になった」と紹介した。日本の医療費水準はこれまで先進諸国の中でも比較的低いとされてきたが、状況が変わりつつあると指摘。財政制約が強まる中で、「病院自身がイノベーションを生み出す必要がある」と述べた。
 また、来年の全日病学会は石川県金沢市で開催することを紹介。「大変革の波が押し寄せる時期の開催となる」と述べ、10月の熊本学会とあわせて、学会への参加を呼びかけた。

世界のムナカタと富山
 福光美術館の片岸昭二館長は、「世界のムナカタ(棟方志功)と富山」と題して講演し、棟方志功(1903~ 1975年)の生涯を辿りつつ、富山とのかかわりについて語った。
 青森県出身の棟方志功は画家を目指し、21歳で上京。帝展に入選後に版画家の道を志す。1945年から6年8か月の間、戦火を避けて東京から富山県南砺市(旧福光町)に疎開した。
 棟方志功が疎開地に富山を選んだ理由は、立山があったからだといわれる。
 富山の豊かな自然にふれて、創作活動に打ち込み、立山連峰をはじめとした自然や人々の営みを描き、多くの作品を残した。
 また、この地に疎開していた画家や歌人、文学者などの芸術家と交流し、地域文化の発展に貢献した。地元の人々とも交流を深め、近隣の小学校に講演や作品指導に出かけ、子どもたちに絵の楽しさを伝えた。
 棟方志功が疎開中に住んでいた住居は、地域の人たちによって保存され、福光美術館の分館として今も残されている。「棟方志功は富山に多くのものを残してくれた。文化の香り高い地域となっているのは棟方志功のおかげ」と片岸館長は語った。

医療行政の風を読む
 富山県高岡市出身の川渕孝一教授は、「医療行政の風を読む」をテーマに講演。
 富山県と全国の状況を比較しながら、高齢化や人口減少の影響を概観した。
 富山県には「消滅可能性」があるとされた市町村が5つある。一方、高齢化が急激に進む首都圏では特に介護ベッドの不足が著しくなると指摘。解決策として、首都圏の高齢者が地方に移住する日本版CCRC 構想を紹介した。
 医療介護体制が整い、高齢者を受け入れる能力がある地域として41の圏域を推奨されていて、高岡市もそのひとつ。しかし川渕氏は、富山県内の医療機関のアンケート調査をもとに医療・介護連携や在宅医療に消極的な状況があると指摘。「富山では地域包括ケアは幻想ではないか」と懸念した。
 一方、富山は持ち家率が高く、高齢者は大きな家に住んでいるとし、「最期のマネジメントがその人の終末期のQOL を決める」と強調。「医療の遺言書」である事前指示書やEnding Noteなどのあり方についても言及した。
 川渕氏は、地域包括ケアの成功の鍵として、◇国に先んじて行動するリーダシップ◇顔のみえる連携◇データによる「見える化」◇ヘルスリテラシーの向上─をあげるとともに、地域包括ケアの評価指標を作成し、「何をもって成功とするか」の物差しが必要だとした。
 川渕氏は自らの両親を介護した経験から「地域包括ケアとは、自宅・在宅で末期の水をとること。そのためには国民に相当の覚悟が必要」と述べる。国民のヘルスリテラシーを高め、「お任せ医療」から脱却する必要があると論じた。
 最後に川渕氏は、今後、病院のグループ化が進むと予測。病院間で経営力に差が出てくるとし、民間病院が経営を維持していくためには、組織改革を通じてイノベーションに取り組む必要があると強調した。

 

全日病ニュース2016年9月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 平成28年度 夏期研修会の開催について

    http://www.ajha.or.jp/seminar/summer/pdf/160607_1.pdf

    2016年6月6日 ... テーマ:「世界のムナカタ棟方志功)と富山」. 講 師: 南砺市立福光美術館 館長 片岸
    昭二先生. 10:30~10:40 休憩. 10:40~12:00 講演Ⅱ. テーマ:「今後の医療行政の“風
    ”を読む」. 講 師: 東京医科歯科大学大学院 教授 川渕 孝一先生.

  • [2] 学術レベルの向上と組織基盤の強化を担う10月の熊本学会に1人でも ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160801/news08.html

    2016年8月1日 ... 支部にお願いするのは、日時の決定と特別講演の企画で、富山の研修会では、南砺
    市立福光美術館の片岸昭二館長に「世界のムナカタ棟方志功)と富山」のテーマでご
    講演いただくほか、東京医科歯科大学大学院の川渕孝一教授から、「 ...

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