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新専門医制度見直しについて機構から報告受ける

新専門医制度見直しについて機構から報告受ける

【厚労省・医療部会】
法改正が必要な検討テーマを整理

 社会保障審議会・医療部会(永井良三部会長)は9月14日、日本専門医機構の吉村博邦理事長から新専門医制度の見直しについて報告を受けるとともに、今後の医療部会の検討テーマを確認した。厚生労働省は、来年の通常国会に法案を提出する必要があるため、来年1月までに議論を整理する必要があると説明した。
 新専門医制度については、今年2月18日の医療部会で、来年度の開始は「拙速」との意見が相次ぎ、「専門医養成の在り方に関する専門委員会」が設置された。その後、四病院団体協議会・日本医師会の要請を受けて、専門医機構の理事会において制度実施の1年延期を決めた経緯がある。今回、新たな執行部で理事長に就任した吉村氏(北里大学名誉教授)が、制度見直しの概要を医療部会に報告した。
 吉村理事長は、専門医機構の新たな体制で、「オールジャパンの体制となり、意思決定の透明化と情報公開の徹底を図った」と説明。地域医療への懸念に対しては、「精査の場」を設置して議論。①募集定員が従来の研修医の実績の約2倍に及ぶ②認定施設数が増えている領域と減っている領域がある③後期研修の受入れ実績があるのに連携施設になれなかった医療機関がある─ことなどから、地域医療に影響する可能性があり、1年延期の結論に至ったとした。
 来年度の暫定プログラムにおいても、都市部の専攻医の定員を過去の実績の1.2倍程度に抑えるなどの対応を各学会に要請していることを報告した。
 基本姿勢としては、「機構がすべてを決定し、学会はそれに従うといった上意下達の関係ではない」ことを明確にし、機構と学会が連携して専門医の仕組みを構築することを説明した。研修プログラムは学会が学術的な観点から責任を持って作成する。これに関し委員から「学会に依存しすぎると、(制度創設の理念が失われ)先祖返りする」との懸念も示された。
 吉村理事長が「医師には基本診療領域の研修をできれば3~4年受けてもらいたい」と発言したことから、「すべての医師が専門医になる必要があると言っているようにきこえる」と指摘する意見があった。吉村理事長は個人的な「希望」を表明したにすぎず、「専門医にならない選択肢もあり得る」と答えた。
 また、全日病は日本専門医機構の社員ではなく、四病院団体協議会の構成団体として社員になっている。四病協は各病院団体がそれぞれ社員になれるよう要請しているが、現在、サブスペシャリティの学会をはじめ多くの団体が機構の社員となることを希望しており、その調整に時間がかかっていると報告があった。

医師偏在対策など来年1月に結論

 今後の医療部会の検討テーマとしては、厚労省が右表の項目をあげた。来年の通常国会に法案を提出する内容が含まれるため、来年1月頃までに結論を出す必要があると説明した。全日病会長の西澤寬俊委員は、これらの検討テーマのうち、法改正が必要な項目がどれなのかをできるだけ早く整理することを求めた。
 それぞれの検討テーマは、別に審議会や検討会が設けられ、議論を続けており、基本的にはそこでの議論の結果を受けて、医療部会が結論を出す形となっている。同日の医療部会では、これらのうち医師偏在対策をめぐって、医師養成数との関係でやり取りがあった。
 日本医師会の委員が「医師不足対策に必要なことはほとんどが医師偏在対策だ。医師が過剰になれば医療費も増える」と発言し、医師偏在対策を前提に医師養成数の見直しを求めた。これに対し西澤委員は、「この問題に関し医療界に賛否がある。しかし現状の医師の労働環境を鑑みれば、医師が足りないのは明らかで、その改善が必要」と主張した。
 他の医療提供側の委員からも、「国は働き方改革を目指しているのに、医師は日勤後に当直して翌日に手術をしている」「勤務医の過重労働の放置は医療安全上も問題」など、労働環境の改善を求める意見が相次いだ。
 なお、医師養成数の取扱いについては、「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」で議論する医師偏在対策を踏まえ、理想的な医師の働き方を示した上で、改めて実施する医師需給推計の結果とともに、検討することになっている。

 

全日病ニュース2016年10月1日号 HTML版

 

 

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