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一定の規制伴う医師偏在対策の議論始まる

一定の規制伴う医師偏在対策の議論始まる

【厚労省・医師需給分科会】
地域枠は厳格化し医師の定着図る

 厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」(片峰茂座長)は9月16日、医師偏在対策の議論に着手した。6月の「中間まとめ」を踏まえ、一定の規制を伴う医師偏在対策を検討し、12月上旬のとりまとめを目指す。同日は、都道府県の医師確保策や医学部入学時の地域枠の厳格化などを議論した。
 厚労省が示したスケジュールによると、有識者からのヒアリングも行い、同日を含め4回程度の会合を経て、11月中旬に骨子をまとめる。12月上旬に報告書にして、社会保障審議会・医療部会に報告する。最終的には、医療部会で決定するとした。
 今後の検討は、同分科会が6月に示した「中間まとめ」に沿って進められる。医師需給推計については、医師の働き方・勤務状況の現状を正しく把握するため、新たな全国調査を行う予定だ。また、塩崎恭久厚生労働大臣の意向を受け、「新たな医療の在り方を踏まえた医師の働き方ビジョン」も策定し、その上で改めて需給推計を行う。
 新たな需給推計で、「中間まとめ」の段階で行った推計よりも、将来の医師需要が増える結果になれば、さらに医師を増員する必要があるという判断になる可能性がある。
強力な医師偏在対策を年内にとりまとめ
 これまでの医師偏在対策は、「医師が勤務地や診療科を自由に選択するという自主性を尊重する」ことを前提としてきた。これに対し「中間まとめ」では、「一定の規制を含めた対策」を行うと明示。強力な医師偏在対策を年内にまとめる方針を打ち出している。
 厚労省は、この方針に沿って検討項目を整理して示した(右表)。
 医師偏在対策が不十分な状態のままで地方における医師不足を解決するには、医師の総数を増やすことが不可欠となる。全日病副会長の神野正博委員は、「医師偏在対策で何ができるかが決まらないと、医学部入学定員の取扱いは判断できない」と発言。医学部入学定員の縮小の議論を先行させるべきとの意見に反論した。
 厚労省は同日の分科会に、医療計画に記載する都道府県の医師確保策と医学部・臨床研修・専門研修の医師養成の各段階の対策に関する論点を示した。
 都道府県の医師確保策については、医療従事者の目標設定の記載で、都道府県間のばらつきが大きいことを指摘した。ある県では二次医療圏や診療科ごとに目標医師数を定めているのに対し、ある県では定性的な目標にとどまる。厚労省はPDCA サイクルのもとで、指標に基づいた目標設定や目標達成のための対策を必ず定めることを提案した。
 また、医師の配置を把握するデータベース構築にあたり、医籍登録番号や医師届出票、保険医療機関に勤務する医師のデータを紐付けし、キャリアを通じた勤務状況を把握する案を示した。医師養成過程に関しては、医学部・臨床研修・専門研修の各段階で、様々な調整を行うことを論点として示した。
 医学部については、地域枠の学生が卒業後に地域に定着する割合を高めることを課題とした。医学部定員9,262人のうち、地域枠は1,644人で約18%。厚労省は地域枠の学生よりも地元出身の学生の方が、定着率が高いことを示すデータを紹介した。地域枠における地元出身者の割合は半数程度。地域枠の設定に関し、地域定着率を高める方向で厳格化することを提案した。
 委員からは、「地域枠をすべて地元出身者にすれば、確実に地域定着は図られる」との意見が出た。
 臨床研修については、研修医の都市部への集中を防ぐため、都道府県ごとの臨床研修医数について、実績と募集定員の割合を2015年度で1.2倍、2020年度に向けては1.1倍に縮小することを目指している。この方針を継続するとともに、出身大学と同じ都道府県で研修を受ける医師を増やす方策を検討すべきとする一方で、神野委員は、大学が異なっても出身地での研修と定着についても調査すべきという意見を述べた。  専門研修については、医師偏在の拡大を招かないよう、日本専門医機構が新専門医制度の見直しを進めているほか、都道府県の関与が位置づけられていることを踏まえ、都道府県や日本専門医機構の役割を法律に規定することを提案した。また、地域・診療科ごとに、専攻医の定員を設けることを論点として示した。神野委員は、「診療科別に、各都道府県に必要な専門医数を設定するため、一定の規制をかけてもよいのではないか」と主張した。

表 年末までに検討すべき医師偏在対策

1 医師の配置に係る対策(直接的な対策)
(1)医学部
(2)臨床研修
(3)専門医
(4)医療計画による医師確保対策の強化
(5)医師・診療行為情報のデータベース化
(6)地域医療支援センターの機能強化
(7)都道府県から国等への対策の求め
(8)管理者の要件
(9)フリーランス医師への対応
(10)医療事業の承継税制
2 医師の就労環境改善等に関する対策(間接的な対策)
(1)女性医師の支援
(2)技術革新に対応した医療提供
(3)チーム医療
(4)サービス受益者に係る対策

 

全日病ニュース2016年10月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年5月15日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160515.pdf

    2016年5月15日 ... 考えを示した。医師偏在対策では、一. 定の公的な強制力を伴う対策が並んだ。 厚労省
    は3月30日の同分科会で、将. 来の医師需給推計の結果を公表。医師. 数は2024年に
    は均衡し、その後は供給. が需要を上回り、2040年には医師が約.

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年7月1日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160701.pdf

    2016年8月6日 ...対策室長が講演した(加納常任理事. の講演内容 ... の需給に関する検討や医師
    偏在解消. 策、療養 ..... 院医療等の調査・評価分科会」. (分科会. 長・武藤正樹国際
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