全日病ニュース

全日病ニュース

DiNQLで病院を変える! 看護を変える!

DiNQLで病院を変える! 看護を変える!

【学会企画】
データで評価し、看護の質向上に取り組む

 看護の質向上を目指して「DiNQL で病院を変える! 看護を変える!」が行われ、DiNQL に取り組んだ理由や成果、課題を議論した。
 DiNQL(ディンクル:Database forimprovement of Nursing Quality andLabo、労働と看護の質向上のためのデータベース事業)は、日本看護協会が2012年から取り組んでいる看護の質評価事業。今年度は584病院が参加し、そのうち154病院が全日病の会員病院だ。
 日本看護協会でDiNQL 事業を担当する川本利恵子常任理事が事業の概要を説明した。DiNQL は、看護実践をデータ化し、ベンチマーク評価することで、現場の看護管理者のマネジメントを支援し、看護実践の強化を図ることが目的。労働環境や看護の質に関する評価指標を収集し、データを入力することで、同規模・同機能の病院・病棟を比較し、ベンチマーク評価することができる。他施設との違いや強み・弱みを把握し、その経年変化をみることができる。評価指標は146項目あり、そのうち11項目が必須項目とされている。
全国のスタンダードと比較できる
 鹿児島県曽於市にある昭南病院の朝戸幹雄院長は、「病院が存続していくためには、質の担保が必要であり、とくに一番の大所帯である看護部の質の担保が欠かせない」と述べる。
 朝戸氏はDiNQL のメリットとして、一つひとつの指標について全国的なスタンダードで評価できることをあげる。
 「田舎で医療をしていると競争相手がいないこともあり、自分たちがやっていることが正しいように思うが、本当にそうなのか、常に評価する必要がある。そこでDiNQL が役に立つ」と述べた。
 群馬県にある沼田脳神経外科循環器病院の阿部孝造・副院長兼看護部長は、DiNQL 事業は病院全体で取り組むことが大切だと述べた。
 同病院は、2013年のDiNQL の試行事業から参加した。阿部氏はその理由を「他施設がどうやっているのかがわからず、質向上の指標が欲しかった」と述べる。
 参加に当たって問題になったのは、情報収集だ。「DiNQL に必要な情報が院内でばらばらに管理されていた。また、誰が入力するかが問題になった」という。そこで、情報を看護部に集約する仕組みをつくった。データの入力は、事務員を2人採用してデータを一元管理できるようにした。
 DiNQL データの分析から、人員配置や労働環境の課題が明らかになったが、「看護部だけの取組みでは限界があると考え、他職種を含めた会議にDiNQL データを示し、協力を求めることにした。DiNQL データを使って組織全体の取組みにすることが大事」と阿部氏は強調した。
DiNQL データで人材育成
 福島県の太田総合病院の遠藤利子看護部長は、DiNQL データを使って、自立した看護師の育成に取り組んでいる。同病院は、DiNQL 導入以前からデータに基づく質の改善に取り組んできた。2008年から看護管理に使うデータを看護部に集めていたが、分析方法は病棟ごとに違いがあった。2012年からデータの内容を統一して、データを用いた実績報告会を開催している。
 DiNQL 事業に参加してから、実績報告会ではDiNQL データをもとに報告するようになった。その結果、「プレゼンの能力がついた」「データをまとめる力がついた」などの声が出ているという。
中小病院がDiNQL に取り組む
 岡山県の岡村一心堂病院の松島眞己看護部長は、「自院の看護が全国と比べて優れていることを見える化したいという思いで始めた」という。DiNQLデータで比較したところ、看護職員数は全国と同じ水準であるが、雇用形態別にみると短時間職員とパートが多いことがわかった。フルタイムの職員の負担が大きいと考えられるため、看護補助者との役割分担を見直すことで改善できると考えたという。  また、身体抑制率が高かったことから、ワーキンググループを設けて検討し、改善がみられた。「DiNQL は幅広い指標を含んでいる。ポイントを絞って課題に取り組んでいる」と述べた。
 済生会熊本病院の村本多江子・副看護部長兼病床管理室長は、DiNQL データを用いた改善活動について報告した。同病院は、クリティカルパスを導入するなど、DiNQL 導入以前から質の改善に取り組んできた。DiNQL を導入した理由は、同じ機能を持つ病棟とベンチマーク評価ができることに加えて、入力した結果がグラフ化されてフィードバックされるのが魅力だとした。
 DiNQL の分析により、緊急入院の割合が高いと在宅復帰率が低くなる傾向がみられたので、緊急入院に対する在宅復帰支援の強化が課題となった。
 同病院は、2009年に院内認定退院支援看護師育成制度を導入。退院支援に当たる人材を養成し、現在では全ての病棟に退院支援看護師を配置している。

 

全日病ニュース2016年11月1日号 HTML版