全日病ニュース
処遇改善加算の拡充等で17年度に介護報酬の期中改定
処遇改善加算の拡充等で17年度に介護報酬の期中改定
【厚労省・介護給付費分科会】
「介護人材の処遇改善」の議論始まる
社会保障審議会・介護給付費分科会(田中滋分科会長)は10月12日、安倍政権が2017年度の重点施策に掲げる「介護人材の処遇改善」に関する議論を開始した。分科会は、厚労省が示した「現行の介護職員処遇改善加算の拡充をベースに介護報酬を見直す」ことで一致、2017年4月に同加算を軸とした期中改定を行う方針を了承した。
6月2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」は、介護人材の処遇改善について、「2017年度からキャリアアップの仕組みを構築し、月額平均1万円相当の処遇改善を行う。この際、介護保険制度のもとで対応することを基本に、予算編成過程で検討する」と明記している。これにより、介護保険制度の枠内で処遇改善に対応することが所与のものとなり、介護報酬における介護職員処遇改善加算を活用して実施する路線が敷かれた。
2012年度の「介護職員の賃金・雇用管理の実態調査」によると、一般職(正規職員)の基本給に定昇制度があると回答した法人は53.5%に過ぎない。「ある」とした法人のうち、「賃金表に基づいて昇給する」と答えた法人は35.6%で、さらに少なくなる。
定昇の昇給額に反映される要素をたずねたところ、「収支状況」「人事評価」「役職・役割」がいずれも50%前後(複数回答)で拮抗しているが、人事評価を行う法人(60.1%)のうち、「評価基準や評価方法が明文化されている」と答えたのは34.1%で、全体の20%弱にとどまっている。このように介護事業所の多くは、透明・公正な人事評価とはいえない事情で昇給額が決まっている実態がうかがえる。
この日の議論で委員からは、「加算が増えたところで、定昇がない企業体質のもとでは処遇が継続的に改善されるとは思えない」「加算の使い道は経営者にまかされているので賃金は上がっていないというのが職員の実感ではないか」など、人事管理体制の向上なしに加算が実施されている現状に疑問の声があがった。また、「重要なことは経営マネジメントの導入である。マネジメントのできる人材の養成を急がなければならない」とする具体的な提案もあった。
厚労省は、年末に結論をまとめる予定で、処遇改善に関する議論を続行していく方針だ。
全日病ニュース2016年11月1日号 HTML版