全日病ニュース

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療養病床の受け皿の新施設類型で議論の整理を了承

療養病床の受け皿の新施設類型で議論の整理を了承

【厚労省・療養病床特別部会】
法案を来年の通常国会に提出 経過措置は「3年」と「6年」を併記

 社会保障審議会・療養病床の在り方等に関する特別部会(遠藤久夫部会長)は12月7日、介護療養病床や医療療養病床25対1の受け皿となる新たな施設類型に関する「議論の整理」を了承した。転換に向けた経過措置期間については「3年」と「6年」とする意見が併記された。
経過措置期間は3年、6年を併記
特別部会では、厚生労働省が提示した療養病床の転換先となる新類型の施設基準や面積の具体案をもとに、議論を行った。療養病床の受け皿は、「医療機能を内包した施設系サービス」と「居住スペースと医療機関の併設」の2通り。前者の医療機能内包型については、法改正により新たな施設類型をつくる。新類型は「要介護高齢者の長期療養・生活施設」の性格をもち、さらに2類型に分かれる。施設基準は、Ⅰ「介護療養病床相当」とⅡ「老健施設相当以上」とされた。
 委員からは、「介護療養病床の廃止に反対」(吉岡充委員・全国抑制廃止研究会理事長)との意見を含め、様々な意見が出され、議論の整理に反映されたが、基本的には、厚労省案を認める形で了承。今後、医療部会や介護保険部会、医療保険部会に報告した上で、法案化作業を進め、来年の通常国会に改正法案を提出する予定だ。
 介護療養病床の設置期限は2017年度末までだが、新たな施設類型の人員配置や施設基準、報酬等が社保審・介護給付費分科会で具体的に決まるのは2017年度末になる見込みだ。そのため、介護療養病床を新類型に転換する準備ができるよう、経過措置期間を法律に定める。その長さについて、「議論の整理」では、「3年」と「6年」を併記した。「2018年度から一定の期間内に転換の意向を示してもらう仕組みにすべき」との意見も記載した。
 この経過措置期間については、医療提供側の複数の委員が6年を主張したが、保険者の委員など、3年を主張する委員も複数おり、意見が分かれた。
新規参入は介護保険計画で抑制
厚労省は、法改正により、新類型を恒久措置として法律の本則に規定する方針だ。本則に位置づける以上は、新設を制限することはできず、一般病床など、療養病床以外の病床からの新類型への移行も認めることになる。厚労省は「議論の整理」で、「転換を優先させるべき」と明記した上で、優先期限として「3年」と「6年」を併記した。
 さらに、「急性期の大病院からの転換は原則、認めるべきではない」、「病院からの転換を優先させる観点から、介護療養病床および医療療養病床に次いで、一般病床を優先させるべき」との意見があったことを明記した。
 なお、厚労省は、経過措置期間の設定と新規参入の制限は別の論点である、との考えを示した。その上で、「新規参入の制限を法律に規定するのは難しい。介護保険事業計画の総量規制に関する現行のスキームを使った新規参入の抑制を考えている」と説明した。
 全日病会長の西澤寬俊委員は11月30日の会合で、「新規参入の抑制期間を6年間にすることは可能か」と質問。
 厚労省は、「法的には、3年が限度という意見もあるが、運用で6年にすることも可能と考えている」と回答した。
 「議論の整理」では、大都市部で今後、慢性期の医療・介護ニーズが増大すると見込まれるとともに、施設増設のための土地確保が難しいことから、「要件緩和を認めるべきとの意見があった」と明記した。
 具体的には、「サテライト型を認めて、同一建物と同様に扱えるようにするなどの特例を認める」、「大規模改修の後でも、1室当たり定員4人以下かつ1人当たり面積6.4m2以上を特例的に認める」ことをあげた。ただ、一部の委員からは、「大規模改修後の6.4m2は認めるべきではない」などと反対意見も出たため、その意見も併記された。
 新類型の名称について、「議論の整理」では、病院が一部を新類型に転換する場合にも、全体で「病院」の名称を維持できるようにすると記載した。日本医療法人協会会長の加納繁照委員は11月30日の会合で、「療養病床単独の施設でも、『医院』など、医療の名称を使えるようにしてほしい」と要望した。
 「議論の整理」を了承した12月7日の議論では、新たな施設類型の施設基準や面積、経過措置など重要な事項の多くが、社保審・介護給付費分科会の議論に委ねられることに不満の声があがった。特に、社保審・介護給付費分科会には四病院団体協議会の委員が参加していない。加納委員および西澤委員は、「病院団体はみな参画すべきだ」と強調した。

 

全日病ニュース2016年12月15日号 HTML版

 

 

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  • [1] 療養病床の新たな受け皿の議論始まる|第873回/2016年6月15日号 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160615/news03.html

    2016年6月15日 ... その後、介護療養病床受皿として転換型の介護療養型老人保健施設が創設されたが
    、転換が進まなかったこと ... したがって、診療報酬上の医療療養病床25対1は医療法
    上の6対1経過措置が廃止された後は法的根拠を失うことになる。

  • [2] 介護療養病床等の受け皿でたたき台示す|第883回/2016年11月15日 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20161115/news01.html

    2016年11月15日 ... 介護療養病床等の受け皿でたたき台示す|第883回/2016年11月15日号 HTML版。
    21世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、全日本病院協会が毎月1日と15日に発行
    する機関紙です。 ... 経過措置を検討するとしており、委員からは「6.4m2 /床の多床室
    を認めるべき」との要望が出た。 ... 介護療養病床は2017年度末が設置期限であるため
    、2018年度以降3年程度の経過期間を設け、順次転換を求めていく ...

  • [3] 来年度末の介護療養病床の廃止は不可能|第882回/2016年11月1日 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20161101/news12.html

    2016年11月1日 ... また、遠藤部会長が介護療養病床受け皿となる施設類型のたたき台を示すよう、厚労
    省に要請。 ... 廃止した上で経過措置を設けるかの違いはあるが、来年度末に一律に
    廃止するのは不可能で、一定の経過措置が必要との認識は共有した。

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