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将来の医療需要を見込んで調整会議で地域の医療を話し合う 地域包括ケアシステムにおける病院の役割を明確に

【四病院団体協議会 会長座談会「医療制度の変革期における病院団体の役割」】

将来の医療需要を見込んで調整会議で地域の医療を話し合う 地域包括ケアシステムにおける病院の役割を明確に

西澤 新年明けましておめでとうございます。
 昨年は消費税の引き上げの延期が決まり、社会保障費の財源が懸念される中で、年末には薬価制度の見直しが急浮上しました。また、医療保険・介護保険制度の改正では患者や利用者の負担増が予定されています。医療制度は課題山積ですが、今日は忌憚のないご意見をいただきたいと思います。

地域医療構想調整会議は機能するか

西澤 まず、地域医療構想についてです。2014年から4つの医療機能に基づく病床機能報告制度が始まり、今年度中にすべての都道府県で地域医療構想を策定することになっています。各医療圏で調整会議が開かれていますが、順調に進んでいるとはいえません。
 地域医療構想では、日医と四病協の提案に基づいて4つの機能にグループ分けしたことはよかったと思います。
 問題は、協議の場が本当に動くのかということです。
 地域における協議がたいへん重要になってくるのですが、その情報が入りにくいと感じています。医療現場がどうなっているか注意深くみる必要があります。
加納 地域医療構想は、4つの医療機能を点数で区分して各機能の患者数を計算し、必要な病床数を出していますが、あくまで将来の患者数の推計値であって、これをもとに回復期を増やすとか慢性期を増やすという議論をするのは無理があります。
 ただ将来の医療需要を見込んで病院を運営することは大事なことで、そのことを認識しながら調整会議で話し合って決めていくことが大事だと思います。
西澤 おっしゃる通りです。2011年に急性期病床群の提案が厚労省からあり、これに反対して協議を重ねた結果、病床機能報告制度によって各病院が自主的に機能を報告し、それをもとに地域医療構想を策定することになりました。
 ただし、調整会議の話し合いはそう簡単ではありません。まず我々の意識と都道府県の意識がかなり違います。
 地域医療構想は今までの医療計画のつくり方と違うはずなのに同じようにやっている気がします。堺会長が言われたように、中央にいると地方の情報は入りにくい面がある。四病協として地域の情報を収集し、協調して取り組んでいく必要があります。
 2025年の必要病床数の推計値は、NDP 及びDPC データに基づいて、病床単位で投入した資源量(出来高点数)で医療機能を区分し、それを積み重ねたものです。一方、我々の病床機能報告は病棟単位で行っています。一つの病棟にはいろいろな病態の患者が混じっていますが、一つの機能で報告するので、その間に違いが出るのは当然です。
 この辺がなかなか理解してもらえなかったと思います。それから2025年の姿であるのに、すぐそこに移行しなければならないような勘違いがあったと思います。きちんとした情報を出して誤解がないようにしなければいけません。

欠席裁判は許されず当事者の参加は不可欠

山崎 病院の機能を厳密に4つに分類する必要はないと思います。もともと日本の病院は、診療所から有床診療所になって病床を増やしてきた経緯がある。海外のように最初から大きな公立病院ができたわけではなくて、地域密着型の病院が中心です。
 また、100 ~ 300万人の人口がある地域であれば、機能を持った病院の棲み分けができますが、20~ 30万人の都市で地域医療構想をつくるといっても難しいですね。一つの病院で急性期と慢性期のケアミックスをしている従来型の病院で何がいけないのでしょうか。
 地域医療構想を評価するとすれば、今まで中央で決めていたものを地域で考えると言い出したことです。しかし、それができるかどうか。地域は、何をするかわからず混乱しています。機能区分だけでなく、考え方を明確にする必要があります。
西澤 機能分化の考え方はいいのですが、それをあまり厳格にあてはめると現場が混乱します。そこで、大事なのは構想区域ごとの調整会議です。調整会議のメンバーをみると患者代表などいろいろな人が入っています。そもそもこの制度の基本は病床区分であり、病院の話ですが、病院関係者は10人のうち1人か2人です。そういう場で病院の機能分担を話すというのは不思議な感じがします。欠席裁判のようなことはできないわけで、当事者の参加は不可欠です。各病院の機能を調整するときには、地域の全ての病院が集まらなければ無理でしょう。

地域包括ケアシステムと病院の役割

山崎 高齢化が進む中で、高度急性期の病院に80 ~ 90歳の高齢者を運んで治療をしています。そのことは否定しませんが、財源がないと言いながら、これでは財源がもつわけがありません。
 そういう話も含めて、全体を考えていかなければいけないのに病院の機能の話だけをしているだけです。
加納 確かに今、高齢者が三次救急の病院に運ばれている実態があります。
 そこはある程度、トリアージをする必要があるのではないでしょうか。在宅のかかりつけ医がいれば、ターミナルは在宅で看取るという判断もできるでしょうが、そういう状況にありません。
 二次救急で、トリアージをして、必要があれば三次救急に運ぶというのが本来の姿だと思います。
西澤 直接、三次救急に行くのは問題がありますね。診療所や地域密着の病院であればかかりつけ医機能を持っていますので、そこでとりあえずトリアージを行い、必要と判断した場合に三次救急に送ることにすべきだと思います。
 地域包括ケアシステムは、介護から出てきたものなので病院の位置づけがはっきりしていません。トリアージの問題も含め、病院が連携をとりながら役割を果たすことが求められていると思います。
西澤 医療と介護を無理矢理分けようとしているように感じます。介護を必要とする人は、必ず医療も必要とします。医療法人が行っている介護サービスはかなりの量になりますし、医療と介護には壁がないのだということを明確にする必要があります。

持分なしの医療法人に公費投入を

 ケアミックスはいいと思うのですが、例えば、特定機能病院が地域包括ケア病棟をつくるという話があります。
 そうなると、すべての機能を持っていってしまうことになる。
加納 それは公的病院のあり方にかかわりますね。公的病院の検証が行われていますが、役割も含めて明確にしておかないとそういう話が出てくる。
山崎 政策医療とはどういうものかをきちんと決めて、公的病院は政策医療に限定したらよい。政策医療以外のベッドは減らすという整理をして、政策医療でない部分を補完するのが民間病院であるという棲み分けをする必要があります。
 政策医療と言いますが、定義が難しい。感染症中心の時代には明確でしたが、今はあまりないのではないですか。
西澤 公立病院の役割は政策医療と不採算医療だというが、具体的に何かというとはっきりしません。逆に公立病院がやっているものが政策医療だという冗談のような話もあります。政策医療の定義付けが難しいとすれば、公も民も関係なくて、本当に不採算の医療であれば公であろうと民であろうと、そこに補助金を入れるのが当り前です。
 地域によって公的病院しかないところは公が担わなければならないし、都会では機能分担が必要です。地域ごとに考える必要があります。
山崎 昔は公が担っていたことを今は民が十分にできるだけの技術を持つようになっています。公民をイコールフッティングにすべきだということです。
 したがって補助金も民につけなければいけないが、民については医療法人の持分ありなしの問題がある。持分ありの医療法人では、個人に公的資金をつけるのかという話になりますが、持分のない医療法人であれば補助金をつけるべきだし、増改築の費用もすべて公費で出すべきです。
西澤 大賛成です。
山崎 公費を入れるとすると、持分のない医療法人が最低条件になります。
 流れとしては、その方向ですね。

 

全日病ニュース2017年1月1日・15日合併号 HTML版

 

 

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    2016年3月15日 ... 地域構想ガイドラインと病床機能報告マニュアルの補正・追加を了承|第867回/
    2016年3月15日号 HTML版。21世紀 ... 地域医療構想策定GL検討会が最終回に了承
    したものは、まさに、(1)病床機能報告制度の改善、(2)調整会議の議論 ...

  • [2] 「14年度の報告から答えを急ぐべきではない」と都道府県に注意を喚起 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20150501/news13.html

    2015年5月1日 ... 地域医療策定GLに関する西澤会長の説明(要旨) 2015年度第1回常任理事会(4月18
    日) .... これに関連して、「病床機能報告制度は、初年度には、他の医療機関の報告
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  • [3] 西澤会長「改革に立向かう会員病院への支援を強化する」|第844回 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20150401/news01.html

    2015年4月1日 ... 他方で、病床機能報告制度地域医療構想等かつてない改革が進められていることを
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