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ホーム全日病ニュース(2017年)第887回/2017年2月1日号医療法等改正案に盛り込む事項を了承...

医療法等改正案に盛り込む事項を了承

医療法等改正案に盛り込む事項を了承

 社会保障審議会・医療部会(永井良三部会長)は1月18日、通常国会に提出する医療法等改正案の制度改正事項について審議し、了承した。前回の部会で合意を得られなかった医療機関の管理者権限の明記は、特定機能病院に限定する規定にしたほか、検体検査の品質・精度管理に関しては、別途設置する検討会において、具体的な基準を議論するなどの対応で了承することになった。
 制度改正事項は、前回までに議論した◇遺伝子関連検査等の品質・精度の確保◇特定機能病院のガバナンス改革◇医療機関のウェブサイト等の取扱い─と、同日議論した◇持分なし医療法人への移行促進策の延長◇医療機関を開設する者に対する監督規定の整備◇妊産婦の異状の対応等に関する説明の義務化◇看護師に対する行政処分に関する調査規定の創設─となっている。
 なお、医師偏在対策については、今回の法改正には盛り込まない方向だ。
 遺伝子関連検査等の品質・精度の確保については、医療機関が実施するすべての検体検査の品質・精度管理の基準を定める内容としたことに批判が出ていた。厚生労働省は、法改正の内容は変えないものの、具体的な基準は「医療機関の現状を踏まえ、医療機関の特性、実施されている検査の内容等に応じた基準」となるよう別途、検討会を設置して議論すると説明し、了承を得た。
 特定機能病院のガバナンス改革でも、検体検査の場合と同様に、特定機能病院の改革がすべての医療機関に関する規定とされたことに反対が相次いだ。
 このため特定機能病院に限って、「管理者が管理運営業務を遂行するのに必要な権限を明確化」することにした。
 医療機関のウェブサイト等の取扱いは、当初の提案どおり、医療法上の広告規制の対象外とするが、虚偽・誇大なウェブサイトに対し、罰則を課す。
 持分なし医療法人への移行促進策は、2017年度税制改正で、相続税猶予等の期限が2017年10月から3年間延びるほか、みなし贈与税の猶予・免除が、税務署の個別判断から税法上の規定になった。これに対し、委員から評価する声があがった。厚労省は「役員数、役員の親族要件、医療計画への記載等の要件を緩和し、贈与税の非課税対象が大幅に拡大する」と説明した。
 一般社団法人や一般財団法人の医療機関に対しては、監督規定を強化する。
 具体的には、都道府県知事等の医療機関への立入検査だけでなく、「開設者の事務所その他病院等の運営に関係する場所への立入検査」も可能とする。
 医療機関の運営が著しく不適切であれば、改善命令・業務停止命令を可能とする。医療法人に対しては、現行でこのような規定は存在している。一般社団法人や一般財団法人は、登記のみで設立が可能であるにも関わらず、法人自体を監督する行政庁がないことの問題が指摘されていた。
 妊産婦の異状に対する説明の義務化は、分娩の急変時に助産所から医療機関への連絡がなく、母児が死亡する事例が発生したことに対応するものだ。
 具体的には、助産所の管理者に、妊産婦の異状に対応する医療機関名等を担当助産師が妊産婦に書面で説明することを義務づける。
 看護師等の行政処分については、医師・歯科医師と同様に行政処分をすべきか否かを判断する際に、関係者から事案の報告を求め、関係する病院等に立入検査ができるよう、厚生労働大臣の調査権限規定を創設することとした。
医師偏在対策の議論の遅れに不安の声
 厚労省は同日の医療部会に、「医療計画の見直し等に関する意見のとりまとめ」と「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会の中間的な議論の整理」を報告した。委員からは、医師偏在対策の議論が遅れているために、医療従事者の確保等に関する医療計画の記載事項が決まっていないことなどを不安視する意見が相次いだ。
 全日病会長の西澤寬俊委員は、「都道府県は来年度から医療計画の作成を始めるのに、医師偏在対策の議論が始まるのは来年度だという。地域医療にとって人をどう確保するかが最も大変なことだ。医師偏在対策が3月までに議論できるよう対応すべきだ」と主張した。厚労省は医療計画作成のための指針について、医療従事者の確保等の部分を切り離して、通知する考えを示した。
 働き方ビジョン検討会の中間報告については、「医師を鼓舞する内容になっている」と評価する意見もあったが、「総論的で具体策になると心細い」「今までに言われていることが多く、目新しい内容はない」といった意見が多かった。
 中間報告は目指すべきビジョンとして、◇地域が主導して医療・介護と生活を支える◇個人の能力と意欲を最大限発揮できるキャリアと働き方を実現する◇高い生産性と付加価値を生み出す─と整理。あわせて、医師偏在対策に対する考えも示しており、「強制的手段のみに依存するのではなく、地域が主体となって、医師の意欲と能力を喚起し、能動的な関わりの結果として是正される方策の模索が必要」とした。

 

全日病ニュース2017年2月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 医療機関の管理者権限の明記で反対意見|第886回/2017年1月1日 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170101/news07.html

    2017年1月1日 ... 社会保障審議会・医療部会(永井良三部会長)は12月8日、大学附属病院等の
    ガバナンス改革などをめぐり議論した。 ... 等に限らず、すべての医療機関を対象に、「
    管理者が医療機関の管理運営権限を有する」と医療法に明記することを提案。

  • [2] 全日病ニュース 2017年1月1日・15日合併号

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170101.pdf

    2017年1月1日 ... 三部会長)は12月8日、大学附属病院. 等のガバナンス改革などをめぐり議論. した。
    厚生労働省が大学附属病院等に. 限らず、すべての医療機関を対象に、. 「管理者が
    医療機関の管理運営権限を. 有する」と医療法に明記することを提. 案。

  • [3] 医療法改正の施行日決まる|第870回/2016年5月1日号 HTML版 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160501/news03.html

    2016年5月1日 ... 昨年9月に成立・公布された医療法の一部改正法のうち、医療法人の経営の透明性の
    確保およびガバナンスの強化 ... 会など医療法人の機関に関する規定を整備する
    とともに、医療法人の定款例および寄付行為例、関係通知が改正された。

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