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薬価制度の抜本改革の検討スケジュール示す

薬価制度の抜本改革の検討スケジュール示す

【中医協・薬価専門部会】
高額薬剤の市場拡大への対応で論点

 厚生労働省は1月11日の中医協・薬価専門部会(西村万里子部会長)に、昨年12月20日に決定した薬価制度の抜本改革の基本方針(資料参照)を踏まえた今後の検討スケジュールを示すとともに、「効能追加等に伴う市場拡大への対応」の論点を示した。基本方針では、新薬収載の機会を最大限活用して、年4回薬価を見直すとしており、その具体的な手法を今後議論していく。
 製薬企業の新薬開発意欲を失わせない対応も課題となっている。
 厚労省は、薬価制度の抜本改革の基本方針を薬価専門部会での検討スケジュールに沿って整理。検討事項を①効能追加等に伴う市場拡大への対応②薬価算定方式の正確性・透明性、類似薬効比較方式・原価計算方式③外国平均価格調整のあり方④中間年の薬価調査・薬価改定⑤後発品の薬価のあり方⑥その他に分け、5月頃までに議論を一巡させる方針を示した。
 一定の方向性を出した上で、関係団体からヒアリングを行い、6月以降2巡目の議論を行う。10月にもう1度、関係団体からヒアリングを行い、12月に骨子をまとめる予定だ。
市場拡大再算定の手法を参考に
 当日は、「効能追加等に伴う市場拡大への対応」を議題とした。当初の予測より、市場が大幅に拡大した高額薬剤については、抗がん剤のオプジーボ(小野薬品工業)の薬価を2月から半額に下げる対応を特例で行っている。
 薬価専門部会は、オプジーボのような事例の対応ルール化を検討することになる。当初の予測を超えて市場が大幅に拡大する高額薬剤に対して、現行の薬価制度が柔軟に対応できていないとされているためだ。
 薬価制度改革の基本方針では、その対応として、「新薬収載の機会を最大限活用して、年4回薬価を見直す」とした。オプジーボの場合は当初、悪性黒色腫の効能で薬価が決まったが、その後、肺がんや腎がんへの効能が追加され、市場が大幅に拡大した。現行制度では、薬価は次の改定時まで維持されるため、製薬企業の「企業戦略」に疑念が生じる要因にもなっている。
 当初の予測を超えて市場が大幅に拡大した医薬品に対する薬価引下げの仕組みとしては、市場拡大再算定の「通常」と「特例」がある。「通常」では「予想年間販売額の10倍以上かつ年間販売額が100億円以上」などの場合に最大25%薬価を下げる。「特例」では「予想年間販売額の1.3倍以上かつ年間販売額1,500億円超」などの場合に最大50%薬価を下げる。これらの引下げは2年に1度実施される。委員からは「市場拡大再算定の考え方を基本にすべき」との意見が出た。再算定については、そのほか用法・用量に変化があった場合に、1日薬価を同額とする「用法用量変化再算定」や、効能・効果の変更があった場合に、類似薬の1日薬価に近づける「効能効果再算定」がある。
 検討課題としては、まず対象となる医薬品の範囲の問題がある。市場拡大再算定のように、年間販売額が候補になるが、その場合に、①薬理作用類似薬がなく新たに医薬品市場が拡大するケース②競合品との市場獲得率を変化させているだけで、医療保険財政への影響がほとんどないケースがあり得ると指摘された。加茂谷佳明専門委員は、「医療保険財政への影響が小さいものは除外してほしい」と要望した。
 対象となる医薬品の範囲が決まると、それに該当するかを判断する必要があるが、薬価調査を毎回行うのは困難であるため、別の方法を検討する。厚労省は、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を、四半期ごとに市場拡大の程度を把握するために用いることを提案した。委員からは、「NDB だと、DPC 制度の包括評価部分に含まれる薬剤費が把握できないのではないか」との疑問が出た。
 制度の導入時期については、2017年度中の実施が論点となっている。今後の議論の進展により、「効能追加等に伴う市場拡大への対応」を先行実施する可能性がある。
 厚労省はそのほか、「医薬品の研究開発投資を回収することが困難な薬価引下げにつながった場合、効能追加に係る新薬開発意欲を失わせることになる」と指摘した。これに対しては、診療側から「オプジーボの薬価は半額にしても、まだ英国のほうが安い。どこまで下げれば、開発意欲を失うのか」との意見が出た。
 また、薬価が下がると、医療機関や薬局、卸売販売業者の在庫価値が下がることも留意点としてあがった。このため、施行時期や経過措置を検討することとなっている。

 

全日病ニュース2017年2月1日号 HTML版

 

 

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