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支払基金の業務見直しやビッグデータ活用で報告書

支払基金の業務見直しやビッグデータ活用で報告書

【厚労省・有識者検討会】
レセプトのコンピュータチェックのルールを公開

 厚生労働省は1月12日、社会保険診療報酬支払基金の業務効率化策やビッグデータ活用を議論してきた「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」(西村周三座長)の報告書を公表した。今夏に支払基金改革の政府方針を決定するため、春をめどに、「支払基金業務効率化計画・工程表」と「ビッグデータ活用推進計画・工程表」の基本方針をまとめる。2018年度通常国会に支払基金法等の改正案を提出する予定だ。
 有識者検討会は、支払基金の組織を含め、審査のあり方をゼロベースで見直すことを求める規制改革会議の指摘を踏まえ、昨年4月25日の初会合から9回の議論を重ねてきた。課題として、①審査業務の効率化・審査基準の統一化②ビッグデータ活用③支払基金の組織・体制のあり方の3つがある。①と②の課題については、一定の方向性を示したが、③支払基金の組織・体制のあり方では、多くの論点が両論併記となった。
 ①審査業務の効率化・審査基準の統一化に関しては、「審査支払機関のレセプト審査におけるコンピュータチェックの寄与度を高め、徹底的な審査業務の効率化を行うとともに、地域ごとに差異のある審査基準の統一化を図ることが課題」とした。
 支払基金の現時点の「システム刷新計画」については、業務改革の検討が不足していると指摘し、全面的な見直しを求めた。
 これを実現するため、支払基金に専任のCIO(最高情報責任者)とICT の専門家によるタスクフォースを設置する。審査プロセスの見直しでは、コンピュータチェックのルールを公開することを原則とし、医療機関がレセプトの請求前に、レセプトの返戻を少なくするため、事前にコンピュータチェックを行うことを可能とする。
 あわせてレセプト形式の見直しも求めた。例えば、電子的情報送付のオプションとして、ある医療行為を行った理由や対象部位などを電子レセプトに選択式の項目として記載し、医療機関がそれを選択して送付できるようにする。そうすれば、「医療機関の処理時間の短縮や手戻りの減少による利便性向上が図れる」と主張した。
 審査の不合理な差異の解消も、引き続きの課題。ただ「時間的制約もあり、全体像はいまだ判明していない」とし、「より多面的な把握・分析による見える化」を進める方針を示した。
 ②ビッグデータ活用に関しては、レセプト電子化で支払基金に年間約20億件のデータの集積が進んでいることを踏まえ、「健康・医療・介護のデータベースを連結し、プラットフォーム化していく取組みを進め、ビッグデータとして分析可能とする」とした。その際に、支払基金・国民健康保険中央会が医療等ID を発行し、その活用の検討をすべきとしている。
支部の体制などは両論併記に
 ③支払基金の組織・体制のあり方に関しては、多くが両論併記となっている。まず、審査事務における職員の業務量が減少すると考えられることから、47都道府県の支部の体制を「必要最小限のものに縮小していくべき」との方針では一致した。
 その際に、「支部のブロック化を含め集約化・一元化すべき」との意見と「支部は各都道府県に残すべき」との意見の両論を併記した。両者とは別に、支部に必要な機能を今後明らかにした上で、「方向性を決めるべき」との意見もあった。審査の一元化についても、「将来的には、韓国HIRA のように全国一元化することが適切」との意見がある一方で、「当面、全国一元化やブロック単位での審査は困難」の両者があった。
 全国一元化を推進する立場からは、◇原則、本部で審査し、無理なものはブロック単位や都道府県支部で行う◇本部の常勤医師等を増やす─などの提案があった。一元化は困難との立場からは、「日本は混合診療を認めている韓国と異なり、必要とされる医療はすべて公的医療が原則で、診療報酬に係る告示・通知の適用を比較的幅広く認める必要がある」との主張があった。
 支部の審査委員会に対しては、審査される立場の医師が同時に審査する立場になることから、「利益相反を禁止する必要がある」と明記した。
 自ら関連する医療機関の審査は行わないなどの現在の取扱いを規則として明文化することや、再審査の一部を本部で行うことなどが提案された。審査委員の都道府県間での相互乗入れを行うべきとの意見もあった。また、これらの見直しに当たっては、「高い使命感を持つ審査委員の意欲を損ねないように十分に配慮する」との文言が加わった。

 

全日病ニュース2017年2月1日号 HTML版

 

 

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