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遠隔診療のサービス提供モデルの評価を今後検討

遠隔診療のサービス提供モデルの評価を今後検討

【中医協総会】
外来医療を総論的に議論

 中医協(田辺国昭会長)は2月8日に総会を開き、次期診療報酬改定に向けて外来医療の総論的な議論を行った。
 厚生労働省が外来医療の現状を説明。
 委員から外来医療費の伸びに関して調剤報酬に厳しい目が向けられた。遠隔診療に関しては、医療の質が上がるサービス提供モデルの診療報酬上の評価を今後検討していく。ICT、AI 等の活用に関して、診療側と支払側の認識に隔たりがある。
調剤の改定財源に言及
 当日は、厚労省が外来医療の現状を説明。一般診療所の総数は近年横ばいで、無床診療所は増加傾向、有床診療所は減少傾向にある。外来患者数はこの数年横ばいで、75歳以上の割合が増加傾向にある。外来受療率は全体で近年横ばいだが、10年前と比べ、65歳以上で減少、0~9歳でやや増加している。レセプト1件当たり受診日数は全体として、減少傾向にある。10年前と比べ、45歳以上で減少幅が大きい。
 外来医療費は増加している。在宅を含む入院外医療費は14.2兆円で全体の34.3%(2015年度)。対前年度伸び率は入院の1.9%に対し、3.3%だった。調剤の伸びが大きく、医薬分業や薬剤費用増加の影響が考えられる。厚労省の分析によると、入院・入院外の医療費の伸びの多くは、高齢化で説明できるのに対し、調剤は高齢化の要因が他の要因より小さい。
 これらを踏まえて診療側の委員は、「調剤は高齢化と異なる要因で伸びている。高額薬剤の影響だけでなく、調剤技術料の影響もある。調剤の改定財源のあり方を議論する必要がある」と述べ、財源配分に言及した。
 全日病副会長の猪口雄二委員は、院内処方の評価が、院外よりも低いことを問題とし、「院内処方の評価のあり方を議論すべき」と主張した。
遠隔医療で初診料を認めるかが課題
 厚労省は、個別項目である遠隔診療に関する資料を示し、課題をあげた。政府の規制改革会議や未来投資会議、保健医療2035などが、医療におけるICT、AI 等の活用を積極的に促していることが背景にある。特に、遠隔診療について厚労省は、「画像転送による診断や在宅における療養指導・助言に加え、慢性疾患の重症化予防や健康指導・管理といった多様なサービス提供モデルが検討されており、様々な状況で実用化に向けた取組みが行われている」と紹介した。
 遠隔診療における診療報酬は、医師対医師の場合と、医師対患者の場合がある。同日は、医師対患者の場合が議論になった。医師対患者では、現行で「対面診療」を原則としている。遠隔診療はあくまで、補完的な役割であり、診療報酬で評価するためには、「対面診療に比べて、患者に対する医療サービスの質が上がるという科学的なデータが必要」という判断基準を示している。
 ただし「離島・へき地」や患者の状態によっては、初診・急性期の疾患を除き、遠隔診療を認めている。患者の状態では、在宅酸素療法や難病、がんなど9種類を例示している。中医協では、多様なサービス提供モデルを分析し、医療サービスの質が上がるとのエビデンスがあるものについて、診療報酬での評価を検討する方向だ。
 支払側の委員は、「ICT の活用が医師と患者のあり方を変える。慎重にではあるが、推進していくべき」と述べるとともに、「例えば、高血圧の患者のモニタリングなどは、遠隔診療で代替できる」と主張した。これに対し診療側は、「医療でICT やAI を活用すること自体は否定しない。しかし対面診療をスマートフォンに代替させることには反対」と主張。遠隔診療をめぐる診療側・支払側の認識には隔たりがあり、議論は平行線となった。
 厚労省は具体的な検討事項が課せられていることも示した。
 政府の「日本再興戦略」2015改訂では、「初診であっても直接の対面診療を行うことが困難である場合についても、医師の判断により遠隔診療が可能であることを明確化するため、速やかに通知を発出する」と明記している。
 しかし厚労省は、「初診料」は遠隔診療の適用対象ではないとの考えを示した。
 これを受け、規制改革会議は、「初診料を適用できるケースについて、2年に1度の診療報酬改定時期まで待たずに、期中改定も含め検討し、速やかに適用すべき」と要請。中医協で検討すべき課題となっている。初診料の算定を認めれば、遠隔診療が対面診療の補完ではなく、遠隔診療で医療が完結する考えに道を開くことになる。

 

全日病ニュース2017年3月1日号 HTML版

 

 

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