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介護保険法等の一部を改正する法律案を国会に提出

介護保険法等の一部を改正する法律案を国会に提出

【厚生労働省】
介護療養病床の受け皿として「介護医療院」を創設

 厚生労働省は2月7日、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」を国会に提出した。介護療養病床の受け皿として、「介護医療院」を創設するとともに、現行の介護療養病床の経過措置期間を6年間延長し、2023年度末までとする。
 介護保険法等一部改正案は、①「介護医療院」の創設、②保険者機能の強化、③地域共生社会の実現への取組み、④利用者負担3割の導入、⑤介護納付金への総報酬割の導入─などが柱。施行期日は一部を除いて2018年4月から。
 同法案は、利用者負担の引上げを含み、重要法案の一つとされる。同法案を閣議決定した後の記者会見で塩崎恭久厚生労働大臣は、利用者負担の引上げについて「様々な配慮を行いながら実施しようと考えている」と述べ、負担増に理解を求めた。
新施設は医療法にも位置づけ
 2017年度末で設置期限が切れる介護療養病床等の受け皿になる新たな介護保険施設として「介護医療院」を創設する。
 介護医療院は、「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する。介護保険法上の介護保険施設だが、医療法上は医療提供施設として法的に位置づける。病院または診療所から転換した場合は転換前の名称を継続して使用できることになった。開設主体は地方自治体・医療法人・社会福祉法人などの非営利法人等。
 介護療養病床の経過措置は6年間延長し、2023年度末までとする。
保険者機能を強化
 全市町村が保険者機能を発揮して、自立支援・重度化防止に向けて取り組む仕組みを制度化する。具体的には、市町村が、データに基づき地域の課題を分析し介護保険事業計画を策定する(都道府県は介護保険事業支援計画を策定)。計画には介護予防・重度化防止等の取組みと目標を記載する。さらに要介護状態の維持・改善の度合など指標による実績評価を行うとともに、財政面でインセンティブを付与することとする。
地域共生社会の実現に向けて
 地域共生社会の実現に向け、地域福祉を推進する理念を規定するとともに、市町村が地域住民の福祉活動や関係機関の連絡調整を支援する体制づくりに努めることを規定。市町村の地域福祉計画の策定を努力義務とするとともに、介護や障害などの計画の上位計画に位置付ける。
 また高齢者と障害児・者が同一の事業所でサービスを受けやすくするため、介護保険と障害福祉制度の「共生型サービス」を新たに位置付ける。ホームヘルプやデイサービス、ショートステイを想定している。そのほか、悪質な事業を続ける有料老人ホームへの指導監督の仕組みを強化するため、事業停止命令措置を新設する。未届けの有料老人ホームも対象にする。
3割負担の対象者は約12万人
 利用者負担で2割負担の人のうち特に所得が高い層の負担を3割にする。
 3割負担の導入は2018年8月の予定。
 対象は、◇給与収入等から給与所得控除等を行った「合計所得金額」で220万円以上、かつ◇年金収入と、年金を除く収入の合計所得金額の合計で340万円以上(単身のケース、夫婦世帯の場合は463万円以上)とする。年金収入のみの場合344万円以上に相当する。
 対象者数は、2016年4月時点の受給者496万人の3%に当たる約12万人となる見込み。
 40~64歳の第2号被保険者が納める介護納付金について、総報酬割を段階的に導入する。2017年8月分から2分の1とし、2019年度から4分の3、2020年度から全面的に導入する。

【資料】地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案の概要

1 新たな介護保険施設の創設

○今後、増加が見込まれる慢性期の医療・介護ニーズへの対応のため、「日常的な医学管理が必要な重介護者の受入れ」や「看取り・ターミナル」等の機能と、「生活施設」としての機能を兼ね備えた、新たな介護保険施設を創設する。
○病院又は診療所から新施設に転換した場合には、転換前の病院又は診療所の名称を引き続き使用できることとする。

2 保険者機能の強化等による自立支援・重度化防止に向けた取組みの推進

○高齢化が進展する中で、地域包括ケアシステムを推進するとともに、制度の持続可能性を維持するためには、保険者が地域の課題を分析して、高齢者がその有する能力に応じた自立した生活を送っていただくための取組みを進めることが必要。
○全市町村が保険者機能を発揮して、自立支援・重度化防止に取り組むよう、
① データに基づく課題分析と対応(取組内容・目標の介護保険事業(支援)計画への記載)
②適切な指標による実績評価
③インセンティブの付与を法律により制度化。

3 地域共生社会の実現に向けた取組みの推進

○「 我が事・丸ごと」の地域作り・包括的な支援体制の整備
1.「我が事・丸ごと」の地域福祉推進の理念を規定
 地域福祉の推進の理念として、支援を必要とする住民(世帯)が抱える多様で複合的な地域生活課題について、住民や福祉関係者による①把握及び②関係機関との連携等による解決が図られることを目指す旨を明記。
2.この理念を実現するため、市町村が以下の包括的な支援体制づくりに努める旨を規定
○地域住民の地域福祉活動への参加を促進するための環境整備
○住民に身近な圏域において、分野を超えて地域生活課題について総合的に相談に応じ、関係機関と連絡調整等を行う体制
○主に市町村圏域において、生活困窮者自立相談支援機関等の関係機関が協働して、複合化した地域生活課題を解決するための体制
3.地域福祉計画の充実
○市町村が地域福祉計画を策定するよう努めるとともに、福祉の各分野における共通事項を定め、上位計画として位置づける。(都道府県が策定する地域福祉支援計画についても同様。)
○新たに共生型サービスを位置づけ
 高齢者と障害児・者が同一の事業所でサービスを受けやすくするため、介護保険と障害福祉両方の制度に新たに共生型サービスを位置付ける。(指定基準等は、2018年度介護報酬改定及び障害福祉サービス等報酬改定時に検討)
(その他)
・ 有料老人ホームの入居者保護のための施策の強化(事業停止命令の創設、前払金の保全措置の義務の対象拡大等)
・ 障害者支援施設等を退所して介護保険施設等に入所した場合の保険者の見直し(障害者支援施設等に入所する前の市町村を保険者とする。)

4 現役世代並みの所得のある者の利用者負担割合の見直し

 世代間・世代内の公平性を確保しつつ、制度の持続可能性を高める観点から、2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合を3割とする。ただし、月額44,400円の負担の上限あり。【2018年8月施行】

5 介護納付金における総報酬割の導入

○第2号被保険者(40 ~ 64歳)の保険料は、介護納付金として医療保険者に賦課しており、各医療保険者が加入者である第2号被保険者の負担すべき費用を一括納付している。
○各医療保険者は、介護納付金を、2号被保険者である『加入者数に応じて負担』しているが、これを被用者保険間では『報酬額に比例した負担』とする。(激変緩和の観点から段階的に導入)【2017年8月分より実施】

 

全日病ニュース2017年3月1日号 HTML版

 

 

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    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2006/20060628.pdf

    2006年6月28日 ... ており、介護保険創設時においても、「施行後一定の経過期間内において、. 療養型
    病床群等の介護施設への転換を図るものとする」(平成8年6月6日. 「介護保険 ... 国会
    提出した「健康保険法等の一部を改正する法律案」に「介護療養型医療.

  • [2] 慢性期の医療について(PDF)

    http://www.ajha.or.jp/guide/pdf/070911.pdf

    目次. 1.慢性期の医療とは. 2.慢性期医療の変遷. 3.慢性期病床統計. 4.医療保険
    病床と介護保険病床. 5.今後の方向性. 1.慢性期医療と ... 亜急性期病床. 【医療療養
    】. 【介護療養】. 亜急性期医療. 慢性期医療. 慢性期医療を提供する病院は、病気の
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