全日病ニュース

多くの都道府県で研修医の募集定員が減少

【厚労省・臨床研修部会】
東京は21人、大阪は８人減、実績からの減少はなし

　厚生労働省は２月15日の「医道審議会医師分科会・医師臨床研修部会」（桐野高明部会長）に、2018年度の医師臨床研修の都道府県別募集定員を示した。都道府県別に募集定員の上限を設定し、大都市への医師偏在を是正しているため、東京で▲21人、大阪で▲８人など対前年度比で募集定員が減る見込みだ。臨床研修制度では全国的に研修医に対する募集定員の比率を下げる過程にある。ただし過去の実績値と比べて募集定員が減少する都道府県はない。
　2018年度は大都市のある６都府県の募集定員が東京都▲21人、神奈川県▲３人、大阪府▲８人、愛知県▲９人、京都府▲５人、福岡県▲７人となる見込み。そのほか、北海道▲３人、青森県▲６人、群馬県▲６人など、約半数の24都道府県で募集人数が減り、合計で▲58人となる。医学部入学定員は増加しているが、研修医に対する全国の臨床研修の募集定員の比率は引き下げているためだ。
　2018年度は研修医9,940人に対し、募集定員は1.14倍の１万1,332人。一定数で研修医と病院のマッチングが成立しないことを想定した調整分を含めると、１万1,769人を募集する。現在、研修医に対する募集定員の比率を1.1倍に下げる過程にあり、2015年度から1.22倍、1.17倍、1.16倍と下げてきた。実際の上限は都道府県ごとに、人口や医学部入学定員、地理的条件に応じて設定しているので、大都市であるなど他の理由で、医師が集中する都府県は、希望に対する募集定員が相対的に少なくなる仕組みだ。
　また、千葉県で来年度、国際医療福祉大学の医学部新設があり、入学定員が140名増える。このため、2016年度の上限から2021年度までの６年間、毎年24名ずつ漸増させて、募集定員の上限を設定する。ただし千葉県は、人口に対する研修医総数が相対的に少ないため、現行の上限設定の計算方法により、入学定員の増加は、千葉県の募集定員に影響しない。
　医師臨床研修制度の研修目標を報告
　「医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ」の中間報告を福井次矢座長が説明した。同WG は2020年適用の医師臨床研修制度の到達目標とその評価の見直しの通知改正に向けて、議論している。今回、到達目標（研修目標）について、WG で一定の考えをまとめたため、報告を行った。
　項目は、◇医師としての基本的価値観（プロフェッショナリズム）◇資質・能力◇基本的診療業務に分かれる。
　基本的価値観では、医師としての社会的使命や利他的な態度を保持し、人間性を尊重し、自らを高めるため資質・能力の向上に努めることを医師のプロフェッショナリズムとしている。
　「資質・能力」は９項目ある。全日病副会長の神野正博委員は、「資質・能力」の中に、「チーム医療の実践」「医療の質と安全の管理」の項目があるにも関わらず、研修の具体的内容を示す「方略・評価案」の「特定の医療現場の経験」の中に、外科系の事項が少ないことを指摘。「外科系の考え方をもう少し入れることを検討してほしい」と要望した。
　これに対し、福井座長は「方略・評価案」は「今後１年かけて議論する予定で、まだ精緻なものになっていない」とした上で、「今後、ローテーションする診療科や分野を提示する予定だが、微妙な問題を含んでおり、WG で議論を尽くす必要がある」と答えた。