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改正個人情報保護法・改正マイナンバー法に70%が対応

【報告2016年度 個人情報保護に関するアンケート調査報告】

改正個人情報保護法・改正マイナンバー法に70%が対応

8割の施設が個人情報保護の研修を定期的に開催

個人情報保護担当委員会 委員 森山 洋

 2006年より個人情報保護法認定保護団体としての活動の一環として、実施体制等について問うアンケートを毎年実施している。全会員施設を対象に8月配布、9月中旬まで実施し、今年で11年を迎えた。2015年度には番号法、いわゆるマイナンバー法施行にともない、個人情報保護法も改正がなされたところである。例年通り傾向等について考察し、報告する。
【調査方法】
 2016年度は会員病院2,484(前年比+39)病院に対して、回答施設数679病院(前年度524)、回収率は27.3%(前年21.4%)であった。11年連続して提出頂いた施設は28施設(前年39施設)であった。配布方法は、昨年度同様①データ送信によるPDF ファイル送信②メール利用による③郵送④ FAX を併用した。 ○調査票回収状況
※ 2013年度より①を追加した(表1-(1)参照)。
【昨年の設問2の群に関するデータ修正について】
 毎年基本事項として組織的対応内容を問う設問1~3であるが、昨年は一部の設問で例年と違う傾向が出ており、昨年の考察時に「基本対策事項回答率へ大きく影響したということなのか、解釈が難しいほどの変化が見られた」としていた。今年の当該項目データ検証では、特に過去の推移と違わない傾向であったため、昨年のデータに何らかの問題があったと考え、元データから検証を行った結果、いくつかの項目で分母に間違いがあったことがわかったので、代表的な設問2-(3)を以下の表で再掲し、昨年報告を修正させて頂きたい(表2-(3)参照)。
【今年の傾向についての考察】
 上記の修正データを用いて歴年の傾向から今年の結果検証を行う。1. 施設情報、2.(1)~(4)、3. の組織的対応に関する設問には注目すべき変化は見られなかった。今年、新設問として「2.(5)電子カルテ・オーダリングシステムの導入状況について」を設定した。結果は①電子カルテ・オーダリングシステムともに導入済が52.6%、オーダリングシステムのみ導入の施設が14.1%、合わせると回答施設のうち56.7%が導入済であることがわかった。今後、電子カルテ等の導入状況によって、個人情報保護の対策に差が出るかを検証することができるようになることを期待している(表2-(5)参照)。
 次に4. の研修に関する設問では(1)定期開催は81.0%(前年比+2.2%)と初めて80%を超えた。(4)開催回数も約6割が年1回、約3割が年2回という傾向も変わらなかった。
 5. の外部の研修活用については3割が参加、6割で担当者レベルが参加する傾向が続いている。
 6.(1)個人情報漏えいに関する保険加入状況に関する問では、①加入していると答えた施設は、過去一貫して年1%程度の微増傾向であったが、今年はほぼ横ばいの0.1%増の26.4%であった。6.(3)苦情の有無については昨年と変わらず①苦情があったが6.9%と特に改定の影響も見られなかった。苦情があった47施設(6.9%)のうち、金銭的補償を行ったのは2件で、2件とも保険からの支払ではなかった。
 7.(1)個人情報保護に関する相談・問い合わせの有無については、①相談等があったが7.5%と昨年比-1.7%で継続的に減少傾向にある。
 次に昨年抽出した開示に関する設問群である8. では昨年とほぼ変わらず76.9%(昨年比+0.9%)が開示請求を受けており、(2 )の開示請求者の問いでは①本人が76. 1%(昨年66. 6%(+9. 5%)、一昨年も65.4%)、加えて④保険会社が41.2%(昨年比+6.0%)の2項目が高い伸びを示した。(3)以降の設問と併せて検証しても、病院側、患者側双方で診療情報開示が一般化したことがうかがえる結果といえる。
 今回、昨年と設問をちょっと変えて設定した改正個人情報保護法についての認知度を問う9.(1)では、約8割の79.2%が①知っている、と答え、(2)の改正への対応の①対応した、の69.7% と併せ、会員病院では(3)で回答しているように必要な規程の改訂や研修実施、システム改修を行ったことがわかる(表9-(1)参照)。
 10.「当協会の認定個人情報保護団体としての研修活動、Q&A 出版等の認知度」を聞く設問群では、特に例年と変わりはないが、引き続き相談業務や研修会の開催、情報提供を通じた会員病院への支援の継続が必要だと感じる結果となった。
【まとめ】
 毎年このアンケートを通じて個人情報保護法に関わる認識変化や各施設での管理体制整備経過を全体傾向としてつかんできた。年3回開催する個人情報保護管理者養成研修会も情報管理担当者や相談担当の社会福祉士やMSW の方の参加が増える傾向にある。法施行後11年経ち、施行後初めての大幅な法改正もされたが、スマートフォン利用者もますます増加し、SNS(ソーシャルネットワークサービス)に関わる事件や利用者も増加し、さらにはマイナンバー法施行による環境変化もある。
 本報告を機会に、あらためて現場レベルで全日病のHP・Q&A 本の活用、管理者養成研修会参加や本アンケート結果等を参考にし、自院の個人情報保護管理体制を今一度根本から見直す機会としてほしい。
【追記】
 2017年7月の仙台における医療マネジメント学会において、本報告に基づく口述発表を登録中である。

 

全日病ニュース2017年3月15日号 HTML版

 

 

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