全日病ニュース

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調整会議の進め方に委員から反発相次ぐ

調整会議の進め方に委員から反発相次ぐ

【厚労省・医療計画検討会】
一般病床の退院患者の対応でも異論

 厚生労働省は3月8日の「医療計画の見直し等に関する検討会」(遠藤久夫座長)に、地域医療構想調整会議の具体的な議論の進め方の案を示した。厚労省が、2017年度の調整会議のスケジュールを示したが、今秋の段階で、機能分化を促す医療機関名を具体的にあげるとした点に対し、委員から「現場が混乱する」との意見が相次いだ。医療資源投入量の低い一般病床の患者が将来、在宅医療等に移行する際に、「外来」で対応できるとする厚労省の説明にも、「納得できない」との意見が出た。
調整会議の進め方に疑問の声
 厚労省が、前回よりも詳細な調整会議の進め方の案を提示した。委員の意見は、2017年度の調整会議のスケジュールに集中した。厚労省案は、2016年度中にすべての都道府県が地域医療構想を策定するのを踏まえ、4月以降の調整会議の開催を見込み、2017年度は年4回の開催を予定。1回目は3月下旬以降の春、2回目は6月下旬以降の夏、3回目は9月下旬以降の秋、4回目は12月下旬以降の冬とした。
 1回目では、病床機能報告や医療計画データブックなどを踏まえ、各医療機関の役割を明確化し、不足する医療機能を確認する。データブックで、地域の現状を分析し、関係者間で結果の解釈について理解を深める。例えば、救急医療の場合、医療機関ごとの救急車受入れ実績(3次、2次、救急告示)や救命救急入院料の算定件数などをみて、担っている役割を確認する。
 2回目の調整会議では、構想区域内の各医療機関が担っている役割と将来担う役割を確認する。病床機能報告の病床数と将来の病床の必要量を比較し、不足する医療機能を確保する方策を検討する。回復期が不足する場合、現状で急性期と報告している比較的人員配置が薄い医療機関に回復期を担ってもらうことで、地域全体で充足するかを確認する。回復期の機能が充足しない場合、急性期を担う他の医療機関に回復期への転換を求めるかが検討課題となる。
 3回目以降の詳細な資料は提示されていないが、3回目の会議の位置づけが問題となった。スケジュール案では、「機能ごとに具体的な医療機関名をあげた上で、機能分化・連携もしくは転換についての具体的な決定」を行うと明記された。これに対し「3回の議論で結論を出せるとは思えない。現場が混乱する。案を修正するべき」といった意見が相次いだ。
 厚労省は、地域医療介護総合確保基金を充当する医療機関を決める必要があるので、具体的な医療機関名をあげる必要があると説明。その上で、「すべての医療機関の役割を明確化する必要はなく、その時点で決まったものをあげてほしい。2018年度以降も同じサイクルを繰り返していく」とし、調整会議の議論の進捗に応じて対応する考えを示した。
 全日病会長の西澤寬俊委員は、「地域の医療機関の自主的な取組みで達成する」ことが地域医療構想の趣旨であるとし、厚労省が示した調整会議の進め方はこの趣旨に沿っていないと疑問を呈した。その上で、スケジュール案が誤解を与えることを懸念し、スケジュール案の位置づけや地域医療構想の趣旨を明確化することを求めた。また、調整区域内のすべての病院が議論に参加できる場の設置を改めて要請した。
 病床機能報告制度の病棟コードの導入については、公表様式の基準や活用方法を今後、地域医療構想ワーキンググループで議論し、2018年度の病床機能報告制度に反映させることを了承した。病棟コードは、2016年度診療報酬改定に伴うシステム改修にあわせて、運用が始まった。病棟が担う医療機能のほか、提供している医療の内容(手術件数等)、人員配置、構造設備などが電子レセプトを通じて、報告される。
 報告内容は6月診療分のみ。個人情報保護の観点から、10未満の件数は「*」等の記号で秘匿されるため、病棟単位で1カ月の手術件数などを示すのは難しくなる。ただし調整会議において、「必要性が認められる場合」に、10未満でも開示が可能となる。
 一方、厚労省は、病棟ごとの治療件数など具体的な医療の内容を集計し、◇外科病棟の部位別全身麻酔手術の実施件数◇脳神経外科病棟の脳卒中の治療実施件数◇回復期病棟の疾患別リハビリ等の実施状況と退院先─などを分析。高度医療機器の保有状況の評価などとあわせ、医療機関の役割分担の検討につなげる方針を示している。また、現在の定性的な病床機能報告制度について、定量的な基準の検討も目指すとの姿勢だ。
 これらを踏まえ、病棟コードを反映した病床機能報告制度については、活用の方法を今後議論し、実際の公表は2019年1月頃になる見込みだ。
厚労省の分析は現場感覚と違う
 一般病床の医療資源投入量の低い患者(1日当たり175点未満)が、在宅医療等に移行する際に追加的に発生するサービス必要量について厚労省が整理し、基本的に「通院」で対応するとされたことをめぐり議論があった。前回の会合で厚労省は、現状の一般病床の退院後の状況をみると、8割が通院で対応していることを示す資料を提出した。しかし高齢者が急増する状況で、現状のデータが妥当かを疑問視する意見が委員から出ていた。
 厚労省は今回、年齢階級別のデータを提示。75歳以上は通院で対応できる割合が減るが、死亡退院等を除くと、どの年齢階級でも9割が通院で対応できているとのデータを示した。しかし委員からは「臨床現場の感覚とはやはり違和感がある」との意見が相次いだ。
 厚労省は、「個別の患者が退院後にどのような転帰をたどるかではなく、あくまで追加的なサービス量をどの程度見込むかの話」と理解を求めた。
 西澤委員は、厚労省のデータが患者調査によるものであり、長期入院患者の退院が結果に表れにくいことを指摘。
 「データに限界があることに留意して対応してほしい」と求めた。また、「患者の退院先が居宅なのか、サ高住なのかも明確でない」ことも問題視した。

 

全日病ニュース2017年4月1日号 HTML版

 

 

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    構想区域と岐阜県岐阜圏域の事例を紹介した。 ... 中核的な機能を担うのに対し、周辺
    の黒石病院(275床)、大鰐病院(60床)、板柳中央病院(87床)、その他の中小病院は、
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  • [3] 医療計画について(厚生労働省医政局長:H29.3.31)

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2017/170403_2.pdf

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    政局. 長通知)は廃止する。 記 ...... 回復期入院患者の数を平成26年における当該都
    道府県の人口で除して得. た数とする。 ...... イ 議論の進め方. ウ その他.

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