全日病ニュース

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中医協と介護給付費分科会が看取りと訪問看護を議論

中医協と介護給付費分科会が看取りと訪問看護を議論

【意見交換会】
医療・介護にまたがる評価を調整

 厚生労働省は3月22日、「医療と介護の連携に関する意見交換会」を開催した。2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定に向け、中央社会保険医療協議会の委員と社会保障審議会・介護給付費分科会の委員が意見交換し、医療・介護の両者にまたがる評価の連携・調整を図ることがねらい。同日は、看取りと訪問看護がテーマになった。
 冒頭、厚労省の迫井正深医療課長が意見交換会の趣旨を説明。団塊世代がすべて75歳以上になる2025年に向けて医療・介護需要が地域差を伴いつつ急速に増大することに対応するため、2018年度同時改定は、「2025年までに大きく舵を切ることができる実質的に最後の機会であり、非常に重要な分水嶺である」と強調した。その上で、テーマとなった看取りと訪問看護の課題を示した。
 看取りについては、国が作成した「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の認知度が医療従事者の間でも低いことを指摘。患者・家族の意思を尊重した医療・介護を提供するとともに、住み慣れた自宅や介護施設など、国民が望む場所で看取りを行う必要があるとした。国民が望む場所については、「自宅」と回答したものが約1割で、「自宅で療養して、必要になれば医療機関等を利用」と回答した者を合わせると約6割であるとの調査結果を紹介した。
 医療機関における看取りでは、看取り期の患者が「患者や家族の意思に関わらず搬送され、希望と異なる救命措置等が施されてしまう例が散見される」ことを指摘。あらかじめ本人の意向を家族やかかりつけ医などと共有し、本人の意思が尊重される取組みが必要であることを課題とした。
 全日病副会長の猪口雄二委員は、「生前の意思確認がほとんど進んでいない。意思表示できない患者の代理人を設ける仕組みを検討すべき」と述べた。あわせて、「ガイドラインに則った治療を行った場合の評価」の新設を提案した。なお、2008年度改定で、患者・家族と医療従事者が終末期の治療方針等を話し合うことを評価する後期高齢者終末期相談支援料が新設されたが、半年後に政権の意向で廃止された経緯がある。
 また、老人保健施設と特別養護老人ホームにおける医療提供の不整合も指摘。老健は、医療提供施設に位置付けられ、医療提供が介護報酬に内包されているために高額な薬剤が使えないが、特養では外部から医療提供を受けるので、そのような制限が生じないという不整合があるとした。
 日本医師会の委員は、「特養の配置医のあり方が時代に合っていない」と述べた。配置医は、療養上の指導と健康管理が主な役割だが、「看取り時代に見合う役割と報酬が必要」と主張した。また、看取り期の在宅医療では、「訪問診療を行うかかりつけ医と24時間対応の訪問看護、有床診・中小病院の後方ベッドの3点セットが必要」とした。
病院・診療所の訪問看護拡大が課題に
 訪問看護については、「病院・診療所が行う在宅支援の拡大」が課題として指摘された。病院・診療所の1月当たりの訪問看護利用者数は6万6,661人(2015年6月)で、訪問看護ステーションの55万8,183人の1割強に過ぎない。病院・診療所の訪問看護のうち、医療保険は25%、介護保険は75%。
 報酬をみると、介護保険の病院・診療所の訪問看護費は30分以上1時間未満で567単位であるのに対し、訪問看護ステーションでは814単位である。医療保険では、病院・診療所よりも訪問看護ステーションで、加算を含め算定できる療養費が多い。
 猪口委員は、「病院は24時間対応であり、緊急時には入院できる」と利便性を強調し、厚労省の論点に賛意を示すとともに、報酬の見直しを求めた。

 

全日病ニュース2017年4月1日号 HTML版

 

 

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