全日病ニュース

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心血管疾患の慢性期リハの実施体制を議論

心血管疾患の慢性期リハの実施体制を議論

【厚労省・心疾患WG】
厚労省がプロセスとアウトカムの指標を示す

 厚生労働省の「心血管疾患に係るワーキンググループ」(永井良三座長)は3月10日、心血管疾患の回復期から維持期を担う施設の診療提供体制や連携体制のあり方をめぐり議論した。特に、慢性期のリハビリテーションを実施する体制に関し、委員から様々な意見が出た。厚労省は回復期・維持期を担う施設や地域の診療体制を評価するプロセス・アウトカム指標を例示した。
 同WG は、昨年8月に初会合を開いたが、「脳卒中に係るワーキンググループ」と同様、半年間開かれず、今回が第2回目。同日から委員に、全日病副会長の美原盤委員と日本医療法人協会副会長の馬場武彦委員が加わった。
 今後、2回の会合を経て、6月に検討結果をまとめ、「脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会」に報告する。
 厚労省は、心不全の平均発症年齢は70歳で、高齢者の増加とともに、患者が増えている現状を説明した。早期からの予後改善目的の治療が必要とされるが、発症前の症状がないため、介入が遅れる傾向がある。また、退院後の心血管疾患リハの実施状況にはばらつきがあり、欧米諸国と比べて、外来通院リハ参加率は低いという。慢性心不全患者の約2~4割が、1年以内に再入院することを示すデータもある。
 厚労省はこれらの現状を踏まえ、慢性心不全患者の実態把握が必要とするとともに、「急性期から回復期・維持期へ、一貫して心血管疾患リハを継続できる体制」や「慢性心不全患者の心不全増悪予防および増悪時の早期介入・早期改善を目指した連携体制の構築」などを課題にあげた。
 厚労省が示した課題に委員からは、「すべての患者の心血管疾患リハまで、急性期の大病院がみるのは今後不可能なので、回復期を担い、慢性期リハを行える中核的な施設を設ける必要がある」との発言があった。これに対して美原委員は、「全国で患者をきちんとみられる体制を作るには、中核的な機能が必要だが、大きなセンターを作るのではなくて、地域の中小病院など既存の資源を有効活用すべきだ」と主張した。美原委員は、再発防止のための予防は長期間実施する必要があるため、費用面でも中核的な施設を設けることは現実的ではないと述べた。
 永井座長も「潜在的な患者が100万人単位のときは、高度急性期よりもローテク・ローコストの手段で対応するのが現実的」との考えを示した。日本医師会の委員は、診療所の循環器の専門医が、急性期病院と連携して実施する回復期心臓外来リハを提案した。
 厚労省は、心血管疾患の回復期から維持期の診療提供体制に関する評価指標のイメージも提示した。それによると、回復期・維持期医療施設のプロセス指標として、◇リハ実施件数◇多職種介入の実施件数◇標準的薬物療法の実施件数をあげた。アウトカム指標としては、「在宅等生活の場に復帰した患者の割合」を示した。
 医療施設単独ではなく、地域の診療体制全体の評価指標としては、アウトカム指標として、◇在宅等生活の場に復帰した患者の割合◇心疾患を主な原因とする要介護認定患者数◇慢性心不全患者の再入院率─をあげた。

 

全日病ニュース2017年4月1日号 HTML版

 

 

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