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医師偏在対策を集中的に議論、来年の国会に法案提出目指す

医師偏在対策を集中的に議論、来年の国会に法案提出目指す

【厚労省・医師需給分科会】
半年間中断していた議論を再開

 厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会」(森田朗座長)と医師需給分科会(片峰茂座長)の合同会議が4月20日に開かれ、厚労省から「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の報告書の説明を受けた。その上で、半年間中断していた議論を再開し、来年の通常国会への法案提出を視野に入れ、5月以降に具体的な医師偏在対策を集中的に議論する方針を決めた。ビジョン検討会と分科会の関係および報告書の位置づけが不明確であることや、報告書が示した提言により医師偏在を解決できるかを不安視する声など様々な意見が出た。
 医師需給分科会は昨年中に「強力な医師偏在対策」をまとめ、法改正事項を今国会に提出する方針だった。しかし、今後の医師需給や医師偏在対策を考える上で、医師などの働き方を含めて、新たな医療のあり方を踏まえて対応する必要があるとの観点から、働き方ビジョン検討会が設置されたため、分科会は半年間中断。医師偏在対策の議論は大幅に遅れることになった。
 働き方ビジョン検討会の報告書は4月6日にまとまり、今回厚労省が需給検討会・分科会合同会議に報告した。
 医政局の武井貞治医事課長は、半年間中断したことを陳謝。報告書を踏まえて、喫緊の課題としての医師偏在対策の具体化に向けた検討を分科会で行う方針を示した。5月以降に短期的な方策を集中して議論。運用で実行可能な偏在対策は、第7次医療計画に都道府県が盛り込むことができるよう検討する。法改正が必要な事項は、来年の通常国会への法案提出を視野に入れる。
働き方調査の結果に疑問
 委員からは厚労省への苦言を含め、様々な意見が出た。全日病会長の西澤寬俊委員は、報告書が「あえて医師数を増やす必要がない環境を作り上げる」と明記していることに対し、「現状で待ったなしの医師不足の状況。早急な医師偏在対策が不可欠」と訴えた。
 全日病副会長の神野正博委員は、報告書が「医師が高い専門性をもって本来医師が行うべき業務に注力できる環境整備」を行えば、「必ずしも医師を増加させずとも、高齢化を踏まえた患者の多様なニーズに応えられる」と断言していることに対し発言。「環境整備として、これまであまり議論してこなかったAIやICTの活用、新たな資格創設を含むタスクシフティングなどを前提としている。逆にいえば、この前提がなければ医師を増やす議論になるのではないか」と指摘した。
 他の委員からも、「AIやICTの導入で関連業務も増える。初期はむしろ医師の必要数は増加するように感じる」との指摘が出た。
 「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」に対しても、結果を疑問視する意見が相次いだ。働き方調査では、医師の44%が今後地方で勤務する意思があるとのアンケート結果を示している(地方とは、東京都23区および政令指定都市、県庁所在地等の都市部以外)。しかし西澤委員は、「若い医師は将来の出来事として地方勤務を考えている。現在の意思ではない」と、環境整備が整えば地方勤務が増えると期待することに疑問を呈した。また、勤務している医師の調査であり、離職している医師の意思が反映されていないことも問題とした。
 他の委員からも、「今まで出来ることをいろいろやってきたが、それでも田舎に医師は来ない。長年の経験からいうと、アンケート結果はでたらめ」、「なぜ地方に行きたいかの分析ができていない」などの指摘が出た。厚労省はこれらの意見を踏まえ、詳細な分析結果を今後示す考えを示した。
 需給検討会の森田朗座長は、「報告書は需給検討会等がこれまで議論してきた考え方を正面から否定しているわけではない。整理すれば十分反映させられる内容だ。医師偏在対策など課題の緊急性を考えると、前向きに対応すべき」と述べた。あわせて、報告書を踏まえた検討事項をどの会議体で議論するかを整理するよう厚労省に要請した。

 

全日病ニュース2017年5月1日号 HTML版

 

 

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