全日病ニュース

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24時間対応の在宅医療における負担軽減を検討

24時間対応の在宅医療における負担軽減を検討

【中医協・総会】
在宅患者訪問診療料の要件緩和が課題に

 中医協(田辺国昭会長)は4月12日に総会を開き、在宅医療をめぐって議論した。在宅医療の提供体制を構築するために、かかりつけ医の負担軽減が論点となった。現状では、在宅患者訪問診療料は1人の患者に対し、1人の医療機関の医師に限り算定できるが、1人の医師で24時間の対応は困難だ。
 このため診療側は、複数の医療機関が連携した場合の算定を認めるように求めたが、支払側の委員の一部は慎重姿勢を崩さなかった。
在宅療養支援診療所の数は横ばい
 厚生労働省は同日配布した資料で、在宅医療に求められる機能として、①退院支援②日常の療養支援③急変時の対応④看取り─に整理した。そのような機能を積極的に担う主体として、在宅療養支援診療所(在支診)・病院などを位置づけ、多職種連携を図りつつ、24時間体制で在宅医療を提供することを求めた。
 在支診・病院は創設以来増加傾向にあったが、最近横ばいに転じており、訪問診療を行っている患者数も「1~9人」にとどまる医療機関が最も多い。
 一方で、「100人以上」の在宅医療専門の診療所も少なくなく、両極端に分かれる様相となっている(2015年7月1日現在)。
 在宅医療を提供している施設数をみると、「訪問診療」では在支診とそれ以外が約半々である。算定回数では在支診が86.2%を占める。だが「往診」では在支診以外が39.6%、「看取り」では21.5%と割合が高くなる。在支診以外が在宅医療を提供する患者はそれ以前に自院に通院していた患者が多く、通院できなくなっても、同じ医師がその患者に寄り添っていることがうかがわれる。
 これらのデータが示すのは、在支診以外の医療機関が地域の在宅医療を支えていることであり、それにも関わらず積極的に在宅医療に携わる医療機関は増えていないことである。在支診ではない診療所にその理由をきくと、約4割が「24時間の往診体制が困難」と答えている。
 厚労省はこれらを踏まえ、◇在支診以外を含めたかかりつけ医による在宅医療提供体制◇かかりつけ医の夜間・時間外の負担軽減に資する地域の医療機関の連携による救急応需体制◇かかりつけ医機能を補完するため、複数の診療科の医師が協働して行う訪問診療─の評価などを論点として示した。
 同日の議論では特に、「在宅患者訪問診療料」の取扱いが焦点となった。同点数は、通院が困難な患者に対する定期的な訪問診療を評価するもの。1人の患者に対し1つの医療機関の医師が算定している場合、他の医療機関の医師が訪問診療を行っても算定できない。
 これに対し、「複数の診療科の医師が協働して行う訪問診療」を評価する観点から、診療側が要件緩和を求めた。
 全日病副会長の猪口雄二委員は、「1人の医師が24時間365日対応するのは難しいので、どのような形で連携体制を作れるかということに尽きる。機能強化型の在支診・病院であれば、そのような体制を作れるが、強化型は看取りなどの要件が厳しく、数が増えない。後方ベッドの確保を含め、複数の医師が連携できる体制が在宅医療に必要だ」と発言した。
負担軽減に理解示す委員も
 診療側の意見に対し、支払側の委員からも1人の医師が24時間対応することの負担軽減が必要であることに理解を示す意見が出た。ただ、「在宅患者訪問診療料」の要件を緩和することには、他の委員が難色を示した。かかりつけ医機能が不明確になる懸念から、複数の医師が連携することよりも、後方病床の確保とあわせ、1人のかかりつけ医を中心とした多職種連携体制の強化を優先させるべきとの意見が出た。
 また、訪問診療を行っている患者の主な原因疾患をみると、循環器疾患や脳血管疾患、認知症、糖尿病といった疾患が多い。複数の疾患を持つ患者も一定程度いて、耳鼻科や眼科の訪問診療も行われている。診療側の委員は、「疾患の数だけかかりつけ医がいたほうがよい」と主張した。
 24時間体制の負担について、厚労省が往診料のうち、実際に夜間・深夜の加算を算定している件数が約8%にとどまることを示す資料を提示した。これに対して、診療側の委員が、「算定回数が少ないので大変ではないという考えではなく、万が一の体制を整えているということが評価されるべき」と指摘した。
 在宅医療を提供した患者(在宅時医学総合管理料等を算定した患者)への診療内容をみると、「視聴打診・触診」、「バイタル測定」、「患者・家族等への問診」、「薬剤の処方」の項目の割合が高くなっている。診療時間は「15~ 30分」が最も多い。これらのデータから支払側の委員は、「現状の評価は、重症患者とそれ以外の区分となっているが、患者の病態は様々で、重症患者以外をひとくくりにしてよいのか。細分化する必要があるのではないか。また、在総管等は包括評価なのでよいが、その都度評価する訪問診療も包括化すべきではないか」と提案した。診療側は、「現場感覚として、今の体系が妥当。診療報酬を複雑怪奇にしないでほしい」と反論した。

 

全日病ニュース2017年5月1日号 HTML版

 

 

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