全日病ニュース

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定期巡回・随時対応型と小規模多機能型の基準緩和が論点に

定期巡回・随時対応型と小規模多機能型の基準緩和が論点に

【厚労省・介護給付費分科会】
グループホームにおける医療ニーズで議論

 社会保障審議会・介護給付費分科会(田中滋分科会長)は5月12日と24日に会合を開き、2018年度介護報酬改定に向けて、一巡目の議論に着手した。
  12日は、◇定期巡回・随時対応型訪問介護看護および夜間対応型訪問介護、◇小規模多機能型居宅介護および看護小規模多機能型居宅介護(旧複合型サービス)を取り上げ、24日は認知症施策を取り上げて議論した。
伸び悩む地域密着型サービス
 12日に議論された4つのサービスは、いずれも指定と基準設定に市町村の裁量が認められる地域密着型サービスであるが、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と看護小規模多機能型居宅介護が2012年度創設と新しいサービスであるのに対して、夜間対応型訪問介護と小規模多機能型居宅介護は2006年度改定で創設されたにもかかわらず、その普及は十分とはいえない。
 日中・夜間を通じて訪問介護と訪問看護を一体的に提供する定期巡回・随時対応型訪問介護看護をみると、創設から4年で請求事業所数は633、利用者数は約13,800人、利用者に占める中重度者(要介護度3以上)の割合は50%となっている(2016年4月審査分)。
 しかも普及に偏りがみられ、給付実績がない保険者は全体の65%にものぼるなど、地域ごとのばらつきが大きい。
 一方、夜間における訪問介護のみの提供を想定した夜間対応型訪問介護は、創設から11年過ぎても請求事業所数が182と少なく、利用者も8,000人前後で、伸び悩んでいる。
 「通い」を中心に、利用者の状態に応じて「宿泊」や「訪問」を組合わせて提供する小規模多機能型居宅介護(小多機)は、創設から11年たった現在、請求事業所数は4,984、利用者数も約85,200人と増加しているが、利用者に占める中重度者の割合は45%にとどまっている。
 他方、小多機に訪問看護の機能を付加した看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、創設から4年経過したものの請求事業所数は318にとどまるが、中重度者が占める割合は6割を超えている。
 厚生労働省は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護については、さらなる普及が必要とした上で、①人員基準や資格要件等の見直し、②とくに日中は兼務禁止となっているオペレーターについてICT活用も含めた人員基準や資格要件等の見直し、③定期巡回・随時対応型訪問介護看護における集合住宅対策、の検討を課題にあげた。
 小多機と看多機に関してもさらなる普及が課題であるとした上で、①人員基準や利用定員等の見直し、②看護職員の雇用が困難という現状への対応の検討を提起。さらに、小多機について、③(必置である介護支援専門員ではない)外部の介護支援専門員がケアプランを作成した場合の取り扱い、④(小多機と)他サービスとの併用の可否という2点を論点にかかげた。このうち外部の介護支援専門員の活用に関しては、介護報酬の算定対象とすべきか否かを検討することが昨年12月20日の閣議決定で決まっている。
 定期巡回・随時対応型訪問介護看護に関する議論で、日本医師会の委員は、「この事業はサ高住の併設というのがビジネスモデルとして想定されている。
 こうした不適切なやり方を是正すべく見直す必要がある」と指摘した。他の委員からも同様の指摘が相次いだ。
 小多機に関する議論で日本医師会の委員は「小多機をもっと柔軟にしていくことが大切」とした上で、1事業所登録定員(上限29名)のうち最大18名となっている「通い」の利用定員を緩和することを提案した。介護支援専門員については外部活用に反対し、多くの委員から同様の意見があがった。
医療機関との連携強化で一致
 5月24日は、認知症施策をめぐって議論した。厚生労働省は論点として、①医療ニーズへの対応など認知症対応型共同生活介護(グループホーム)のサービスのあり方、②認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)のサービスのあり方、③認知症に関連する加算のあり方という3点を提示した。
 この日の議論は、グループホーム(GH)が算定できる医療連携体制加算などGHにおける医療サービスのあり方を中心に議論したが、医療機関との連携強化によって体制の充実化を図る方向で概ね一致した。
 調査によると、GH事業所の半数が利用者における医療ニーズの増加を認めている。また、「胃ろう・経管栄養」「インシュリン注射」「膀胱カテーテルの管理」「痰の吸引」については半数以上が「対応不可」と回答するなど、「医療ニーズの増加」がGH退去にいたった理由の3分の1を占めている。退去先は、精神科病院への入院を含め、医療機関が最も多く46.5%を占める。
 GH内で死亡し、看取りまで行ったケースは19.4%だった。搬送等による入院先等で亡くなったケース(17.4%)も含めると、入居者の36.8%がGHで生を終えている。
 しかしグループホームには、看護職員の配置が義務づけられていない。このため病院・診療所や訪問看護ステーション等との連携が求められる。こうした体制に対しては医療連携体制加算が認められていて、8割の事業所が入退院時の情報の提供・受取りを実施している。
 病院団体の委員は、合併症をあわせ持つ認知症患者が様々な施設に分散しているにもかかわらず、その実態が明らかでないと指摘。全体像を把握することを提案した。その上で、医療機関における認知症対応には、総合診療医の配置が不可欠であると主張した。
 日本医師会の委員は、「GHの看護職員必置は適切ではない」とした上で、ケアプラン作成時のアセスメントにかかりつけ医を参画させるなど、GHとかかりつけ医の連携が重要と主張した。
 その一方で、必置ではない看護職員を配置している事業所を評価すべきとの声もあった。あるいは、「外部からの提供も含め、医療ニーズに対応する体制を評価する加算を強化すべき」として、GHにおける看取りの体制の整備を求める意見もあった。
 こうした意見の一方で、「GHは特養の待機場所となっている実態もある。
 地域包括ケアの重要な領域としてあらためて位置づけてほしい」「GHを地域における認知症相談の拠点とすべく強化していくべき」など、認知症の施策体系の中でGHを位置づけ直すべきとする意見があった。
 認知症にかかわる加算評価に関しては「当該事業所を支援するためには加算の種類・対象を増やしていく必要がある」との意見が出るなど充実を求める声が大勢を占めたが、保険者からは「全体的にもう少し整理してもよい」とする意見も示された。

 

 

全日病ニュース2017年6月1日号 HTML版

 

 

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  • [1] 地域密着型通所介護の施行に伴う

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2016/160401_3.pdf

    2016年3月31日 ... 号)」、「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等の一部を改正する件. (平成 28
    年厚生 .... 定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、認 ... 知症対応
    型通所介護、小規模多機能型居宅介護若しくは看護小規. 域密着 ...

  • [2] 【介護保険最新情報Vol.592】(厚生労働省老健局介護保険計画課:H29 ...

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2017/170531_5.pdf

    2017年5月30日 ... 公表しました、平成27年度介護保険事務調査の集計結果について、以下のと. おり誤り
    が ... 実施保険者数. 430 (27.2%). 定期巡回・随時対応型訪問介護看護. 262. 小
    規模多機能型居宅介護. 359. 看護小規模多機能型居宅介護. 174.

  • [3] 平成27 年度介護報酬改定に関する審議報告 社会保障審議会介護給付 ...

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2015/150113_6.pdf

    2015年1月9日 ... また、小規模多機能型居宅介護について、利用者の在宅生活の継続を促進. する観点
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