全日病ニュース

ユニットケアの長所と短所を検証、優位性は認められず

【高齢者医療介護委員会】
全国一律の基準ではなく地域に応じた施策展開を求める

　「介護保険施設における今後の施設類型の在り方に関する調査研究事業」の報告書がこのほどまとまった。高齢者医療介護委員会（委員長＝木下毅常任理事）が老人保健事業推進費補助金を受けて実施したもので、ユニットケアの長所・短所を検証した結果、患者の状態像や職員の負担軽減の面で優位性は認められなかったと結論付けている。介護・看護の担い手確保が困難となるなかで、介護保険施設の基準は全国一律の考え方ではなく、地域の実情に応じた施策が求められると提言している。
　ユニットケアは、在宅に近い居住環境で、入居者一人一人の個性や生活のリズムに沿って介護を行うことにより、個別ケアの実現を図る方法。これまでハード・ソフトを一体として施設類型と基準が設定され、介護保険上の評価を通じて普及を図ってきた。これまでの研究によると、ベッド上の滞在率の減少や他人との交流時間の増加、食事量の増加、ポータブルトイレの設置台数の減少などが指摘されている。
　一方、少子高齢化の進展で介護や看護の担い手の確保が困難となる中で、低所得者への対応や増大する医療ニーズへの対応が課題となっている。
　調査研究事業では、全国の介護保険施設から無作為抽出した施設を対象にアンケート調査を行い、507施設から回答を得た。アンケートでは、施設の人員配置状況、夜勤や長時間労働の発生状況、職員の確保状況を聞いたほか、入所居室の種類とADLや認知症の状況について回答を求めた。あわせて、自治体や介護職員に対するアンケート調査も実施した。
　アンケートの回答をもとに介護保険３施設のユニット型施設と従来型施設との間で、人員体制や入所者像、入所者のアウトカムの変化、職員の勤務負担に関する比較を行った。
　その結果、ユニット型施設は、従来型施設と比べて、入所者あたりの介護、看護職員を多く配置していることがわかった。
　一方で、人員配置の多さにもかかわらず、より重度の要介護者や医療ニーズの大きい入所者の受入れ、入所者の状態像の維持・改善、職員の勤務負担の軽減といった側面で、ユニット型施設と従来型施設の間に明確な差を見つけることができなかったとしている。
　職員の勤務負担に関しては、「夜間に１人対応が生じやすい」、「休暇が取りにくい」などの認識があり従来型施設よりもユニット型施設においてより大きな負担が生じていると考えられる事項もみられた。
　また、所得第１・第２段階の低所得者については、多床室が入所先として重要な地位を占めていることが示唆された。
　こうした結果を受けて報告書は、介護保険施設におけるケアのあり方について、ユニットケアと従来型ケアの長所・短所を客観的に分析する必要があると指摘。その上で、人的資源や利用者の負担能力は、地域ごとに状況が大きく異なることから、介護保険施設におけるユニットケアや個室化に当たっては、全国一律の基準ではなく、地域に応じた基準の設定と施策展開が必要としている。