全日病ニュース

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医療・介護同時改定を展望し活発に議論社会の変化をとらえ、病院の対応を考える学会に!

【第59回全日本病院学会 in 石川】

医療・介護同時改定を展望し活発に議論社会の変化をとらえ、病院の対応を考える学会に!

 第59回全日本病院学会in石川が9月9、10の両日、金沢市で開催される。
 学会長の神野正博副会長に学会の見どころと準備状況をきいた。

オール北陸で学会を開催

―今回の学会は、北陸ではじめての開催ですね。
 実は、石川、富山、福井の3県は、全日病の会員数が少ない県なんです。
 石川県には、全石川病院協会があり、ほぼ100%の加入率の団体です。このため、全日病などの病院団体に加入する必要を感じていないところがあります。しかし、オールジャパンの動向を知るためには、全国規模の病院団体に加入する意義があることを学会の開催を通じて見せたいという思いがあります。
 これは、富山も福井も同じなので、今回、富山県支部長の藤井久丈先生と福井県支部長の池端幸彦先生に副学会長になっていただいて、オール北陸で開催することになりました。

同時改定に向けて実のある議論を

―学会テーマ「大変革前夜に挑め!~今こそ 生きるをデザインせよ~」について説明してくれますか。
 まず、「大変革前夜」というのは、2018年度の医療制度改革を念頭においています。2018年4月にはいろいろなものが変わるわけです。診療報酬と介護報酬の同時改定があり、医療計画や介護保険事業計画がはじまります。また、療養病床の新しい姿が明らかになりますし、専門医の新たな制度もはじまります。2025年の医療提供体制をつくっていくに当たり、2018年度は節目の年となります。
 その前の年の9月ですので、一番議論のし甲斐があるときです。あまり近くなるといろいろと固まってきますし、あまり早いと方向が見えてこないでしょう。9月なら実のある話ができると思いますし、時期的なアドバンテージがあるわけです。
 同時にすべての病院が肌で感じていると思いますが、社会が大きく変わりつつあるということがあります。働き方改革が議論されていますが、これは労働者が少なくなってきたことが背景にあり、少子高齢化の進展は社会のあらゆる面に影響を及ぼしています。
 団塊の世代が65歳以上になっていますが、この人たちは今までの高齢者とは違うと思います。ビートルズを聞いて育った人たちだし、バブルの時期を経験しているので、結構わがままです。
 そういう人たちが高齢者になるのですから、価値観が変わってくるのは当然でしょう。
 こうした社会背景の中で、我々医療人が何をやらなければいけないのか考える必要がある。「生きるをデザインせよ」というのは、単に病気を治すということでなく、「生活」や「人生」を含めて、主体的に関与していく必要があるのではないか、ということです。
―制度的な対応にとどまらず、社会の大きな変化にも対応するための学会にしようということですね。
 そうです。あわせて病院の生き残りも考えていきます。病院の管理者としては、職員の生活を考えていく必要があります。

学会企画で7つのシンポジウムを用意

―学会企画の準備状況はいかがですか。
 これまでの全日病学会では、全日病本部の委員会企画のほかに学会企画のシンポジウムが2~3本ということが多かったのですが、今回は学会企画のシンポジウムを7本用意しています。
 同時改定に関する企画については医療保険・診療報酬委員会にお願いしていますし、総合診療医についてはプライマリ・ケア検討委員会にお願いしています。これらの委員会企画とは別に学会独自で7本のシンポジウムということです。
―学会企画のシンポジウムについて、いくつか説明していただけますか。
 政治家を招くシンポジウム「どうする医療~政治家放談」は、市民公開講座として行います。医療関係者や行政の関係者で医療政策の議論を重ねますが、最後に決めるのは政治の場です。
 政治家の中でも、次の世代を担う方に来ていただき、ディスカッションすることにしました。
 前地方創生相の石破茂衆議院議員、前厚生労働大臣の田村憲久衆議院議員、前金融相の伊藤達也衆議院議員、医師で厚生労働委員会所属の自見はなこ参議院議員をお招きし、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の松山幸弘さんに基調講演をお願いし、私も加わって議論しようと考えています。
―どんな議論になりそうですか。
 財務の視点、厚生労働の視点、地方創生の視点から議論をしようと考えていますが、政治家を説得しないと医療の財源を確保できません。地方創生においても、医療がいかに重要かという話をしたいと思います。また、政治を動かすにはどうすればいいかという話もできればと思います。
 「医療の社会性をデザインする」というシンポジウムでは、河北医療財団の河北博文理事長、厚生労働省の武田俊彦局長、慶應義塾大学の権丈善一教授、東京大学の渋谷健司教授をパネリストに迎え、我々が社会とどうかかわっていくかを話し合います。社会あっての医療、医療あっての社会であり、経済と社会保障の関係についても議論したいと思っています。
 「ニュージェネレーションが医療を変える~若手起業医師たちがデザインする」もおもしろい企画だと思います。
 アメリカの大学でMBAの資格をとり、病院の世界を飛び越えて起業した若手の医師にどんな思いで事業をはじめたのかを話していただきます。彼らは生活にかかわる仕事をされていて学会のテーマともつながりますし、ITの活用にも詳しい人たちです。
 「枠を越えて生きるをデザインする病院」も聞いていただきたいシンポジウムです。国際医療福祉大学の高橋泰教授に価値観の変化について話していただいたあと、特徴的な病院の話をしていただきます。
 KNI北原国際病院の北原茂実理事長は、カンボジアに病院を作った医師です。株式会社おとなの学校代表取締役の大浦敬子さんには、高齢者と共に学び合う介護を目指す「おとなの学校」について語っていただきます。
 くろさわ病院理事長の黒澤一也さんは、長野県佐久市で病院の枠を越えて公共施設と一体になった病院をつくった人です。これまでの医療の枠を越えて活動している人の話を聞いてください。
―教育講演は、どんなプログラムですか?
 教育講演では、イノベーション、AIやIoT、VRに関するテーマの講演を用意しています。人手不足もあってICTを活用した遠隔医療の取り組みが始まっていて、我々が思っている以上に早いスピードで変革がおきると思います。これを無視するわけにはいかず、ICTやAIによって社会や医療がどう変わっていくかを示すことは学会の役割だと思います。
 プログラム全体の構成としては、1日目は、2018年4月の同時改定に向けて現実的な課題を議論し、2日目はもう少し将来を展望した話を中心にしたいと考えています。2025年、2035年に向けてどう生きていくか、ヒントになる話をしたいと思います。
 発表演題の申し込みは、5月16日で締め切りましたが、全部で710題になりました。現在、参加者登録の受付中です。

学生や研究者に広く参加を呼びかける

―そのほかに特徴的なことはありますか?
 今回の学会では、全日病本部の学術委員会にお願いして、研究者や学生、大学院生、社会人大学の学生の方に対して、特別料金で参加を呼びかけることにしました。全日病学会で初めての試みです。将来の医療政策を担う研究者や医療系の学生にできるだけ参加していただき、私たちの議論を聞いていただきたいと考えています。
―金沢の魅力を一言。
 いま人気の金沢で、観光スポットは目白押しですが、伝統的なものと近代的なものが融和している街が金沢です。
 近代的な21世紀美術館もあります。
 今回の学会は、オール北陸で開催しますので、金沢にとどまらず、北陸の魅力を感じていただきたいですね。私の病院のある能登をはじめ、富山、福井も魅力的で、訪れる度に新たな発見があります。
 9月8日には、前夜祭が組まれていますし、開会式では、サプライズがあるかもしれません。学会に参加して、北陸の文化と食を楽しんでいただきたいと思います。
 病院や医療の将来を考える上でヒントになるプログラムを多数用意しています。とにかく参加しないと議論ができません。金沢学会に参加して積極的にこれからの“生きる”を考えていきましょう。

学会企画のシンポジウム概要

●特別シンポジウム(市民公開講座)
「どうする医療~財務の視点、厚生労働の視点、地方創生の視点~政治家放談」
松山幸弘( キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
自見はなこ(参議院議員)
伊藤達也(衆議院議員)
石破茂(衆議院議員)
田村憲久(衆議院議員)
シンポジウム1
「在宅医療と病院」

伯野春彦( 厚生労働省医政局地域医療計画課在宅医療推進室長)
鈴木邦彦(日本医師会 常任理事)
宮崎幹也( 独立行政法人地域医療機能推進機構高岡ふしき病院 副院長)
織田正道( 社会医療法人祐愛会織田病院理事長)
シンポジウム2
「医療の社会性をデザインする」

河北博文( 社会医療法人河北医療財団理事長)
武田俊彦( 厚生労働省 医薬・生活衛生局長)
権丈善一(慶應義塾大学商学部 教授)
渋谷健司( 東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授)
シンポジウム3
「地域をデザインする病院」

麻生 泰( 株式会社麻生代表取締役会長)
松田晋哉( 産業医科大学医学部公衆衛生学教授)
佐藤俊男( 地方独立行政法人山形県酒田市病院機構日本海病院法人管理部参事)
シンポジウム4
「枠を越えて生きるをデザインする病院」

高橋 泰( 国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻医療経営管理分野教授)
北原茂実( 医療法人社団KNI北原国際病院理事長)
大浦敬子( 株式会社おとなの学校 代表取締役)
黒澤一也( 社会医療法人恵仁会くろさわ病院 理事長)
シンポジウム5
「チーム医療をデザインする:医師事務作業補助領域の未来~病院の変革にどう貢献できるか~」

高橋 明(札幌白石記念病院)
増成倫子( 医療法人光臨会荒木脳神経外科病院)
田中加奈子(独立行政法人国立病院機構浜田医療センター診療部医療クラークリーダー)
越後加代子(医療法人社団和楽仁芳珠記念病院 事務局 医療企画部 医療サービス課 外来担当 副主任)
唐澤 剛( 内閣官房まちひとしごと創生本部地方創生総括官)
シンポジウム6「ニュージェネレーションが医療を変える~若手起業医師たちがデザインする」
木畑宏一( 株式会社メディカルノート代表取締役社長)
原聖 吾( 株式会社情報医療代表取締役)
佐竹晃太( 株式会社キュアアップ代表取締役社長)
物部真一 郎 ( 株式会社エクスメディオ代表取締役社長)

 

全日病ニュース2017年6月1日号 HTML版

 

 

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  • [1] 2017年 新年のご挨拶

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170101/news03.html

    2017年1月1日 ... 2017年 新年のご挨拶|第886回/2017年1月1日・15日合併号 HTML版。21世紀の
    医療を考える「全日病ニュース」は、 ... 平成30年4月に向けて、診療報酬・介護報酬
    同時改定、医療計画の見直し、医療法改正、療養病床廃止問題等が、多方面で結論
    形成 ... 2018年の診療報酬・介護保険報酬ダブル改定、地域医療構想を含む医療計画
    介護保険事業計画改定、療養病床の見直しなど、大変革前夜の年である。

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2017年1月1日・15日合併号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170101.pdf

    2017年1月1日 ... (2)2017年(平成29年)1月1日(日). 全日病ニュース. 2017年 年頭所感. 2017年 新年
    のご挨拶. 全日本病院協会 副会長. 菅義偉官房長官 ... 平成30年4月に向けて、診療
    報酬・介護報酬同時改定、医 ... 見直しなど、大変革前夜の年である。

  • [3] 平成29年度 事業計画・予算

    http://www.ajha.or.jp/about_us/plan/2017.pdf

    公益社団法人全日本病院協会全日病)の目的は、定款に規定されているように、「全国
    ... 報酬の同時改定が控えている。 ... 平成 29 年度事業として、種々の制度改革に対応
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