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厚労省が入院基本料と医療機能の関係を例示

厚労省が入院基本料と医療機能の関係を例示

【厚労省・地域医療構想WG】
慎重な対応を求める意見が相次ぐ

 厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(尾形裕也座長)は6月2日、今年10月報告分からの病床機能報告制度の変更を了承。施設単位で医師数などの報告を求めることとした。また、厚労省が病棟の医療機能選択で、算定している入院基本料を参考にして医療機能を選択する考えを示した。委員からは、「病院には様々な病期の患者がいる。医療機能には一定の幅を持たせることが必要」など、慎重な対応を求める意見が相次いだ。
診療報酬との関連付けを示す
 厚労省は同WG に、病床機能報告制度により、報告している病棟の医療機能と実際に提供している医療内容に関する分析結果を示した。それらを材料として、定量的な基準を含めた病床機能報告制度の精緻化を進めようとしている。その際に、診療報酬項目との関連付けをどこまで強くするかが注目されている。今回厚労省は、2017年度からの病床機能報告制度の見直し項目を示し、WG として了承した。
 診療報酬項目との関連付けでは、病棟の医療機能と入院基本料との関係を示した。例えば、7対1は高度急性期と急性期、10対1は急性期と回復期、13対1・15対1は急性期と回復期・慢性期とした(図1)。これらと異なる機能を選択することを「妨げるものではない」と厚労省は説明したが、「異なる機能を選択した場合は、地域医療構想調整会議で確認する」ことを求めた。
 また、リハビリテーションを提供していない病棟は、回復期を選択しない傾向があるため、提供していなくても、回復期を選択できることを明確化する。
 病床機能報告の項目の見直しでは、◇医師数・歯科医師数(施設単位)、管理栄養士数(施設単位、病棟単位)、診療放射線技師・臨床検査技師(施設単位)◇6年後の病床機能に「転換先の施設類型」を追加する。医師数については、診療報酬上の算定要件との関係で「混乱を招く」との指摘があったが、病院報告等で施設全体の医師数・歯科医師数の報告はすでに行われており、「既存の調査等の内容を転記」するという整理で認めることとした。
 「転換先の施設類型」は改正介護保険法の成立で介護医療院など療養病床の受け皿整備が進むことを受けたもの。
 また、現在は6月単月の状況しか把握していないことから、「入院前・退院先の場所別の患者数」と「退院後に在宅医療を必要とする患者数」について、報告対象期間を1年間とする。1年間とすることで、実際の入退院の状況を把握する。また、「稼働していない病床がある場合は、その理由を報告する」とした。ただし原則として病棟単位で稼働していない場合に限る。
 2018年度の病床機能報告に向けては、同時改定の内容を踏まえ、「抜本的な見直しを検討する」とし、「回復期・慢性期の機能を『見える化』する項目の検討」を例示した。
急性期と報告した中小病院を分析
 厚労省が2016年度病床機能報告制度から、特定機能病院の報告と急性期を選択した病院の報告内容を分析した。
 特定機能病院では、高度急性期と報告する病棟が極めて多い。特に、大学病院は全体の9割以上に当たる約5万9千床を高度急性期と報告している。同WG では、このことを問題とする意見が出ており、同日、全国医学部長病院長会議の小山信彌参考人が説明を行った。
 小山氏は、各大学病院の選択の結果として高度急性期が多くなっているとした上で、「二次医療圏を大きく超える地域の住民を対象とする」など大学病院の特殊性を強調し、配慮を求めた。
 しかし大学病院を特例的に取り扱うことには委員から賛意が得られなかった。
 急性期に関して、中小病院は大病院と比べ、◇看護職員数が少ない◇平均在棟日数が長い◇新規入院患者の割合がやや多い─という傾向が示された。
 厚労省はこれを踏まえ、「必ずしも急性期を担っていない場合もあり、自主的な報告を原則としつつ、回復期等の適切な機能の選択が必要」と述べた。
 これに対して、全日病副会長の織田正道委員は、「特に、病棟数の少ない中小病院は、病院としての機能を果たすために、回復期を一部担っていても、急性期と報告せざるを得ない面がある」と述べて、一定の配慮を求めた。

 

全日病ニュース2017年6月15日号 HTML版

 

 

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