全日病ニュース

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専門医に関する都道府県協議会の位置づけに奈良県知事が反発

専門医に関する都道府県協議会の位置づけに奈良県知事が反発

【厚労省・医師養成在り方検討会】
新整備指針運用細則は見直しの方向

 厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(遠藤久夫座長)は6月12日、来年度から始まる新専門医制度の研修体制をめぐって議論。日本専門医機構が同検討会の求めに応じて、運用細則を地域医療に配慮する形で改定する案を示したが、奈良県知事の荒井正吾委員が都道府県協議会に関する内容に異論を表明。専門医機構の吉村博邦理事長は改定案を改めて見直す考えを示した。また、7学会からヒアリングを行い、地域医療への一定の配慮がみられることを評価する意見が相次いだ。
運用細則は再度見直しに
 同検討会は、新たな専門医制度が地域医療に配慮して運用されることを求め、4点について運用細則の見直しを専門医機構に求めた。4点とは、①専門医取得は義務ではない②カリキュラム制の設置③研修の中心は大学病院のみではなく、地域の中核病院等④都道府県協議会への情報提供等─の明確化である。専門医機構は、4点に関して見直すことを決定。同検討会に運用細則の改定案を報告した。しかし荒井委員が都道府県協議会と機構、学会との位置づけについて反発した。
 都道府県協議会は、地域医療に配慮した研修体制を形成するため、地域の関係者(研修施設、大学、医師会、病院団体、都道府県等)が協議する場であり、厚労省は6月中にその取扱いに関する通知を出す予定。荒井委員は、都道府県が新専門医制度をチェックできるよう、研修施設が都道府県協議会に情報提供を行うことの明確化などを求めていた。
 しかし同日示された運用細則改正案では、都道府県協議会への情報提供が「任意」であると読み取れる文言だったため、荒井委員は、「全く受入れ難い」と発言。都道府県協議会への情報提供や協力を「義務」とすることを求めた。これに対し、吉村理事長は運用細則を再度を見直す考えを示した。さらに、荒井委員は、医師の虚偽申告による専門医の取得・更新など「不正を排除する仕組み」の必要性も指摘した。
 7学会からヒアリングを実施基本診療領域を構成する7学会からヒアリングを行った。7学会は、日本救急医学会、日本外科学会、日本産科婦人科学会、日本小児科学会、日本整形外科学会、日本精神神経学会、日本麻酔科学会。前回は日本内科学会からヒアリングを行い、委員の多くが同学会の地域医療への配慮を評価した。今回の7学会のヒアリングでも、各学会の取り組みに、一定の評価を与える意見が相次いだ。ただ今後調整が必要な研修プログラムもあり、進捗状況の継続的な管理が必要との意見が多かった。
 例えば、外科専門研修では、今年度の暫定プログラムと来年度からのプログラムを比べると、プログラム数は188から204に増え、連携施設数も1,772から1,795に増えた。大学病院が基幹施設である割合は、49.5%から46.1%に下がった。しかし、依然としてプログラムが1つしかない都道府県が14県、プログラムに入らない2次医療圏が13医療圏ある。日本外科学会は、「一定の手術数が必要なため仕方のない面がある」と説明した。
 日本医療法人協会会長の加納繁照委員は、各学会のプログラムに対し、「基準がまだ厳しく、大学病院以外が基幹施設になるのが難しいのではないか」と問題提起。来年度以降のプログラムで地域の市中病院で研修が確実に実施されることの確認を求めた。また、専門医の更新について、「市中病院で頑張ることが評価されない更新基準にならないよう配慮すべき」と主張した。
 また、他の委員からは「どの学会もカリキュラム制への配慮に言及し、新整備指針にもその記述があるが、本当に実施されるかの担保がない」、「機構が専攻医の身分保障をしなければ、結局は大学医局に属することになるのではないか」など、機構の権限・役割を強化する方向で見直すべきとの意見が出た。これに対しては、機構監事の今村聡委員(日医副会長)が、「来年度開始を目指す中で、いま変えるのは難しい。機構の人員・資金にも制限がある」と、現行の体制で進めることへの理解を求めた。

 

全日病ニュース2017年7月1日号 HTML版

 

 

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  • [1] 厚労省・医師養成検討会> 日本専門医機構の地域医療への対応方針を ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170615/news01.html

    2017年6月15日 ... 新たに策定した整備指針、運用細則、Q&Aをみれば、同様の趣旨が盛り込まれている
    という認識を示した上で、整備指針の改正内容を説明した。 ... 都道府県協議会について
    は、荒井知事が、プログラム作成で地域医療への配慮を行ったとしても、「ひとたび研修
    プログラムが認定された後は、専門研修 ... 委員からは、「地域医療への配慮」と「
    キャリア形成への配慮」を両立させる取組みを評価する意見が相次いだ。

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2017年6月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170615.pdf

    2017年6月15日 ... 定した整備指針、運用細則、Q&Aを. みれば、同様の趣旨が ... 都道府県協議会
    については、荒井知 ... を示した。委員からは、. 「病院には様々. な病期の患者がいる。
    医療機能には. 一定の幅を持たせることが必要」など、. 慎重な対応を ...

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2017年3月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170301.pdf

    2017年3月19日 ... 医療構想調整会議(調整会議)②協議. の場③ ... 介護の整合性を図るために都道府県
    と. 市町村の .... DPC 評価分科会委員は研究者や大学病. 院の先生方 ..... 荒井耕部
    会長)は2月8日、医薬品・ ...... 整備指針の運用細則を議論した。都市.

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