全日病ニュース

全日病ニュース

医療計画の見直し事項を了承

医療計画の見直し事項を了承

厚労省・医療部会回復期病床が不足する見通しに疑問の声

 社会保障審議会・医療部会(永井良三部会長)は7月20日、来年度からはじまる第7次医療計画の検討状況の報告を受けた。医療従事者の確保策や地域医療構想の達成に向けた介護施設・在宅医療等の新たなサービス必要量の考え方などについて、概ね委員の了解を得た。ただ厚生労働省が、将来的に回復期病床が足りなくなると強調していることに対し、全日病会長の猪口雄二委員らが疑義を呈した。
 報告内容は「医療計画の見直し等に関する検討会」で議論してきたものが中心で、①医療従事者の確保②協議の場③5疾病5事業④在宅医療⑤地域医療構想の達成に向けた取組みなど。
 医師の確保に向けては、来年度の法改正を目指す抜本的な医師偏在対策とは別に、地域医療支援センターの機能強化など早期に実行可能な対策を説明した。センターが大学附属病院などと連携し、地域枠の医師のキャリア形成プログラムを策定することを義務化。
 地域枠の入学生を原則地元出身者に限定し、地域定着率を高め、医師確保を支援する。
 部会では、地域枠を地元出身者に限定することについて、「様々な地域枠の取組みがある。地元に限定すると混乱する」との意見が出た。このため厚労省は、「地域定着の考えがセットされた条件であれば認める」と回答した。
 なお、歯科医師に関しては、入院患者に対する口腔機能の管理や口腔ケアが、在院日数の短縮や肺炎発症率の低下に効果があることから、病院に歯科医師が勤務することの意義が強調された。しかしこれに対し、歯科医師が病院に勤務することによる効果なのかについて疑問があるとして、再度データの整理を求める意見があった。
医療計画と介護保険事業計画の整合性を確保
 協議の場は、医療計画と介護保険事業(支援)計画の整合性を確保するため、都道府県と市町村の関係者が計画作成の段階で連携を図るために設ける。
 その際に地域医師会などを含めた作業部会を設置し、協議するとした。
 両計画では今後の介護施設・在宅等の需要を見込む必要がある。地域医療構想では、2025年に向けて介護施設・在宅医療等で約30万人の追加需要を見込んでいるほか、高齢化により訪問診療による在宅医療で100万人の増加を見込んでいる。
 約30万人の内訳は、「C3未満」(入院基本料等を除く医療資源投入量175点未満)と「療養病床の医療区分1の7割と地域差解消分」。これらをどう見込むかについて、厚労省は「C3未満」は原則外来で対応すると説明した。
 これに関し、日本医療法人協会会長の加納繁照委員は「C3未満はすべて外来で対応するのか。再確認したい」と質問。厚労省は「その通り」と答えた。
 しかし日本医師会の委員は、「C3未満は慢性期機能と一体で推計することになっているはず。地域の状況により、退院先が在宅の場合も介護施設の場合もあり得る」と述べた。
 また、追加需要の推計の考え方について、「厚労省としてできるだけデータを提示するが、どれも一長一短がある。どのようなデータを用いるかは、各調査・報告の性質を理解した上で、地域で判断してほしい」と説明した。
 在宅医療の具体的な数値目標も、医療計画に書き込むことになる。訪問診療を実施する診療所、病院を把握し、診療所であれば、在宅医療専門や一般の診療所で対応できる患者数を見込み、将来の需要増に対応できるようにする。
 地域医療構想の達成に向けた検討では、病床機能報告制度の見直しや地域医療構想調整会議の進め方について了承した。しかし、厚労省が地域医療構想ガイドラインに基づく全国推計で急性期病床が過剰になり、回復期病床が不足するというデータを強調していることに猪口委員が疑義を呈した。
 猪口委員は、「病期としての回復期の患者の多くが急性期病棟に入院している。全国推計に基づいて、回復期の不足を強調し過ぎると、将来過剰になってしまうのではないか」と質問。これに対し厚労省は、「(本来回復期の病棟が急性期を選択するなど)病床機能報告制度で回復期機能がきちんと選ばれていないことが問題で、制度の改善が必要」と回答した。その上で、現状の報告では、回復期を担う病棟が不足しているとの認識を示した。
 これに関連して回復期の報告が少ないことに対応するため、病床機能報告制度で、「リハビリテーションを実施していなくても、回復期を選択できることを再度、周知徹底する」と説明した。
 また、国家戦略特区の提案を受け、医療放射線の管理で規制緩和を行うことを了承した。
 PET(陽電子放射断層撮影)検査は現在、PET使用室での使用に限っている。しかし最近は「PET ‐ CT、PET-MRI」という複合装置が開発され、より正確な診断を行うことができるようになった。このため、「可搬型PET装置」に限定して、MRI室等でも使用できるよう規制を緩和する。その際に、放射線診療従事者や医療機関内の他の患者への放射線被曝を防護する適切な措置を求め、適正マニュアルの順守を必須条件とする。夏以降に医療法施行規則を改正する方針だ。

全日病ニュース2017年8月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 医療計画について(厚生労働省医政局長:H29.3.31)

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2017/170403_2.pdf

    2017年3月31日 ... また、「医療計画について」(平成24年3月30日付け医政発0330第28号厚生労働省医.
    政局長通知)、「地域医療構想 ... (1) 法第30条の4第2項第10号の医療従事者の確保
    については、医師、歯科医師、薬. 剤師、看護師等の医療従事者 ...

  • [2] 医療法等改正案に盛り込む事項を了承|第887回/2017年2月1日 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170201/news01.html

    2017年1月1日 ... 医療法等改正案に盛り込む事項を了承|第887回/2017年2月1日合併号 HTML版。
    21世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、全日本 ... 看護師等の行政処分について
    は、医師・歯科医師と同様に行政処分をすべきか否かを判断する際に、関係者から事案
    の報告を求め、関係 ... 医師偏在対策の議論の遅れに不安の声 厚労省は同日の医療
    部会に、「医療計画の見直し等に関する意見のとりまとめ」と「新たな ...

  • [3] 厚労省が入院基本料と医療機能の関係を例示|第896回/2017年6月 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170615/news02.html

    2017年6月15日 ... 今回厚労省は、2017年度からの病床機能報告制度の見直し項目を示し、WG として
    了承した。 ... 病床機能報告の項目の見直しでは、◇医師数・歯科医師数(施設単位)、
    管理栄養士数(施設単位、病棟単位)、診療放射線技師・臨床検査 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。