全日病ニュース

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約30万人の在宅医療等の追加需要の考え方を整理

約30万人の在宅医療等の追加需要の考え方を整理

【厚労省・医療計画見直し検討会】一般病床C3未満の取扱いに疑念残る

 厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」(遠藤久夫座長)は6月30日、2025年に向けて増加する介護施設、在宅医療等の需要に対応するための考え方を整理した。一般病床の医療の必要性の低い患者の退院と療養病床の再編を念頭に、医療計画や介護保険事業(支援)計画で、今後の需要増に地域で対応できる整備目標の設定を求めた。
 地域医療構想ガイドラインの全国推計は、2025年の病床機能の分化・連携による介護施設、在宅医療等の需要増を約30万人と見込んでいる。高齢化で増える訪問診療の需要増も約30万人で、訪問診療を必要とする患者は約100万人になると想定される。介護施設、在宅医療等の需要増には、「C3未満」と「医療区分1の70%と地域差解消分」がある。
 C3未満は、在宅等に移行できるとみなした医療資源投入量225点未満(入院料等を除いた出来高点数)に、在宅復帰に向けた調整幅を見込んだ175点未満で区切っている。地域差解消分は、療養病床の入院受療率の都道府県の差を小さくすることで生じる病床減だ。
 同検討会はこれらを踏まえ、今後のサービス必要量の整備目標・見込み量の一定の考え方をまとめた。骨太方針2017が地域医療構想について、「介護施設、在宅医療等の追加的必要量(30万人程度)を踏まえ、都道府県、市町村が協議し整合的な整備目標・見込み量を立てる上での推計の考え方等を本年夏までに示す」と明記したのを受けたものだ。
 ただ全国一律の推計方法を押し付けることはせず、参考となる様々なデータと提示し、地域の実情に応じて活用するとの取扱いにとどめた。
 考え方を具体的にみていくと、一般病床の「C3未満」は、基本的に外来で対応できるとし、介護施設、在宅医療等の増加としては見込まない。厚労省は過去の患者調査から、一般病床から退院する患者はその後、8割強が外来で対応できると主張したためだ。
 しかし全日病名誉会長の西澤寬俊構成員をはじめ、病院関係の委員は、調査結果の解釈に疑念があると指摘するとともに、一般病床の入院患者は退院が容易でない事情もあることについて配慮を求める意見があった。
 一方、療養病床の減少分は、外来、在宅医療、介護施設、新類型転換分のいずれかに移行することになる。介護保険法等一部改正法が先の国会で成立したことで、6年後の廃止が決まった介護療養病床の約6.3万床は、確実に他の施設等への転換が見込まれる。来年度からの介護保険事業(支援)計画では、移行分を一定程度見込んだ整備目標を立てる必要があり、厚労省は医療計画との整合性を図るとともに、地域医師会などとの事前協議の必要性を強調した。
 その上で、基本的には、2025年に約30万人が介護施設、在宅等に移行することを前提に、それを終点として、途中段階のサービス必要量を計画で比例的に推計すべきとした。
 在宅医療では、医療計画の目標を立てる上で、「退院支援」、「急変時の対応」、「看取り」のそれぞれの機能ごとの目標や、多職種による取組みを促す目標の具体的な数値目標を記載することに「努める」とした。具体的には、訪問看護や訪問歯科、訪問薬剤管理の目標を定める。
 また、高齢化で今後増加する訪問診療など在宅医療の対応では、想定される患者数を、一般診療所や在宅医療専門の診療所がそれぞれどれだけ受け持つかを見込む必要があるとした。
 厚労省は近く、地域医療調整会議の議論の進め方や病床機能報告制度の見直し、5疾病5事業の目標設定などとあわせ、これらの考え方を盛り込んだ通知を出す予定だ。

全日病ニュース2017年8月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 地域医療構想による在宅医療等の新たな需要を議論

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  • [2] 在宅医療と介護の整合性を図るための指標を議論|第877回/2016年8 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160815/news04.html

    2016年8月15日 ... 在宅医療と介護の整合性を図るための指標を議論|第877回/2016年8月15日号
    HTML版。21世紀の医療を考える「全日病 ... 解消することで医療需要を推計、③一般
    病床のC3基準(175点)未満の患者は慢性期・在宅医療等の患者数として推計している
    。 ... 例えば、ほとんどの都道府県で在宅療養支援診療所・病院の施設数増加を目標
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  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2015年2月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2015/150215.pdf

    2015年3月14日 ... 2月9日の「医療法人の事業展開等に関する検討会」は医療法人制度に大きな影響を.
    およぼす改正 ..... この日は、GL案に先立って、2025年の医療需要(患. 者数)を推計 ....
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