全日病ニュース

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診療報酬の簡素化やレセプトの見直しを段階的に実施

診療報酬の簡素化やレセプトの見直しを段階的に実施

【中医協・総会】「現場が回ることを前提に進める」

 厚生労働省は7月12日の中医協総会(田辺国昭会長)で、診療報酬の簡素化や事務の効率化・合理化を段階的に進めていく方針を示した。レセプトの見直しやデータの利活用の検討も同時に進める。次期診療報酬改定ですべて行うのではなく、その後数回の改定で実施する考えを示した。診療報酬の簡素化や事務の効率化・合理化には多くの委員が賛成したが、社会保険診療報酬支払基金の業務改革を背景にしたレセプトの見直しやデータの利活用には警戒感もある。
診療報酬の簡素化に大賛成
 診療報酬の算定項目は、加算を含め診療行為で約5千項目、薬価は約1万6千項目、特定保険医療材料は約1千項目あり、それぞれの算定のための施設基準や留意事項がある。項目は改定の度に増加、複雑化しており、医療機関の負担感は大きい。全日病会長の猪口雄二委員は、「改定の度に医科点数表の本がどんどん分厚くなる。毎回、改定内容が決まり、通知が出て、短い期間で医療機関が対応するのはとても大変。医療の質向上を前提に、診療報酬の簡素化や事務の効率化・合理化は大賛成だ」と歓迎した。
 厚労省は具体例として、◇各種の届出様式に重複する項目があるなど合理化の余地がある◇入院診療計画書などで求められる診療のプロセスの記載は診療録にすでにあり、別途記載が必要かを精査する必要がある◇医療情報システムなどで既存データを別の様式等への記載に活用できれば、入力の手間が省ける─などを指摘した。
レセプト情報活用の課題
 レセプトについては、情報の利活用が進んでいることが強調された。厚労省のNDB(ナショナル・データ・ベース)では、匿名化処理を施した上で、全数データを集めている。その活用も大学や研究機関だけでなく、保険者によるデータヘルスの取組みにも利用されつつある。また、DPC 制度では、診療実績データの提出が義務付けられているが、DPC対象病院ではない急性期の出来高対象病院からも、データ提出加算の新設により、2016年10月時点で約3,400病院から診療実績データが収集できている。
 一方で、レセプトの課題としては、◇患者の住所情報がないため、住所情報を基にしたデータ分析ができない◇診療行為の記載について、実臨床に即したコード体系になっていない◇国際的に標準化された用語や分類を参照した標準的なマスター等の整備の必要性─が指摘されている。
 特に、健康・医療・介護分野のビックデータの構築の観点では、レセプトを中核的なデータとして活用する上で、◇急性期入院医療以外の医療内容の分析が困難な項目になっている◇個々の情報を関連づけられない◇各分野特有の調査項目の設定によるデータ分析─などの課題を解決し、診療実績データとして活用することが期待されているとした。
 これらの取組みを進める背景の一つに、支払基金の業務改革がある。業務改革では、レセプト審査のコンピュータチェックの寄与度を高め、AI(人工知能)を導入する。2020年度から新システム稼動を目指し、コンピュータチェックに適したレセプト様式の見直しを実施するとしている。
 今後の対応方針として、厚労省は支払基金のシステム刷新と連動した対応の必要性を指摘。次期改定だけでなく、それ以降の数次の改定で、これらの取組みについて、次期改定でできることと、その後の改定で対応することを区分しつつ、秋以降に具体的な検討を進める方針を示した。また、届出・報告の簡略化や添付書類の省力化などはどの程度可能かの定量的な目標を定めることも提案した。
 委員からは、「現場を無視した進め方は避けてほしい。システム改修の費用も大きい」との懸念が示された。これに対し厚労省保険局の迫井正深医療課長は、「現場が回ることを前提に、慎重に検討を進める」と明言した。

全日病ニュース2017年8月1日号 HTML版

 

 

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