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訪問看護と他サービスの情報連携にICT導入で一致

訪問看護と他サービスの情報連携にICT導入で一致

【厚労省・介護給付費分科会】特養配置医師の役割・報酬を見直すべきとの声も

 社会保障審議会・介護給付費分科会(田中滋分科会長)は7月5日と19日に会合を開き、5日には訪問看護を、19日には居宅介護支援と介護老人福祉施設をテーマに議論した。
ステーションに比べて低い病院・診療所の訪問看護の単価
 訪問看護を実施する事業所は2012年から2016年の5カ年で1.4倍に増えているが、介護保険の訪問看護に比べ、医療保険の訪問看護を実施する事業所数の方が伸びが大きい。とくに、病院・診療所に関しては、医療保険の訪問看護を実施する4,284カ所に比べると介護保険は1,597カ所と4割を下回る(2016年)。しかも、この数は2012年の3,874カ所に対して4割に落ち込んでいて、介護保険の訪問看護を実施する医療機関数は年々減少している。
 この原因の一つに、介護報酬における訪問看護ステーションと病院・診療所との単価の格差がある。過去2回の介護報酬改定で病院・診療所による訪問看護の単価が引き上げられたが、依然として病院・診療所の単価は訪問看護ステーションの8割前後に過ぎない。
 これについて老健局の鈴木健彦老人保健課長は、委員の質問に答えて「固定費の面でやはり訪問看護ステーションの方が高くつく」と述べ、単価差は止むを得ないとの認識を示した。しかし、在宅ニーズの急増に対して病院・診療所が提供する訪問看護を量的にも充実させていく必要があることから、次回の介護報酬改定においても病院・診療所の単価が引き上げられる可能性がある。
規模の拡大が課題
 訪問看護をめぐる論点として厚労省は、(1)緊急時や看取りへの対応のあり方、それとの関係で訪問看護ステーションの大規模化等安定的提供体制のあり方、(2)看護の一環としてのリハビリのあり方や看護職員と理学療法士等との連携のあり方、(3)訪問看護と居宅介護支援を含む他サービスとの連携のあり方、の3点を提起した。
 訪問看護ステーションの看護職員数が多いと看護職員1人あたり訪問回数は多くなる関係がある。24時間対応体制と緊急時訪問を評価する緊急時訪問看護加算および重度者への対応を評価する特別管理加算の届出率もステーションの規模と比例している。その一方で、看護職員数5人未満の訪問看護ステーションが全体の3分の2を占めており、規模の拡大は進んでいない。このため、厚労省は引き続き規模の拡大を促す報酬の設定を課題とする考えを示唆した。
 (2)の論点は、理学療法士などを多数あるいは高い割合で従事させているステーションに24時間対応や重度者対応の回避あるいは要支援者に対するリハの提供を追求する傾向がみられること、さらには、「理学療法士のみで訪問し、アセスメントのための看護師訪問は行わない」ケースがみられるという調査結果を踏まえた検討を求めた。
 日看協副会長の齋藤訓子委員は、「運営基準に、リハビリ計画を看護師と理学療法士等が共同で作成することやリハ主体の利用でも月1回は看護師が訪問してアセスメントを行うことなどを盛り込むべきではないか」と主張した。
 一方、日本医師会常任理事の鈴木邦彦委員は、「訪問看護の提供は医療ニーズの高い中重度者を対象とし、軽度者は訪問介護で対応してはどうか。リハ担当者のみ、あるいは看護師と連携が取れていない訪問があるという現状は改善されるべきだ」と述べ、訪問看護の現状に厳しい意見を述べた。
 (3)は訪問看護と他サービスとの連携のあり方をめぐる論点。訪問看護を提供している看護師やOT・PTと訪問介護や通所介護さらにはケアマネジャーとの間の情報共有をどう担保するかが課題となる。とくにターミナルでの情報連携が急がれる。
 関係者が一堂に会することは難しく、ノートパソコン、タブレット、携帯電話などのモバイル端末等を駆使したICTによる連携が必要となる。分科会もICTの活用で一致したが、同時に、書類の簡素化など煩雑な事務の効率化や事務職員の配置も必要との意見も示され、こうした取組みや配置の評価を求める声もあがった。
集中減算の見直しを求める声が多数
 7月19日の介護給付費分科会は居宅介護支援と介護老人福祉施設について議論した。居宅介護支援について、厚労省は、①特定事業所集中減算のあり方、②入院時を含めた医療機関と居宅介護支援事業所のさらなる連携に向けた取組み、③身体的拘束廃止の取組みをさらに進める方策、などを論点として提示した。
 作成するケアプランの80%以上が特定事業所のサービスに集中する場合に報酬を減算する特定事業所集中減算については多くの委員が見直すべきとしたが、廃止を求める声は少数にとどまった。他方で、集合住宅に対する居宅介護支援に何らかの減算を適用すべきとの意見も多く示された。
 入院時の情報連携に関しては、診療報酬の「退院支援加算1」が入院後3日以内の退院困難患者抽出が算定要件となっていることもあり、入院時情報連携加算に「入院後◎日以内」とする要件を加えるかどうかが、今後論点として浮上する可能性がある。
 介護老人福祉施設について、厚労省は、論点として、①入所者1人1人のニーズに即したケアを実現する方策、②看取りや医療ニーズへの対応をさらに進める方策、③身体的拘束廃止に向けた取組みをさらに進める方策、などを提起した。 このうち②の看取りや医療ニーズの議論で、日看協の委員は、介護老人福祉施設における医療対応の強化や看取り推進の必要を踏まえたとき、「これ以上の医師や看護師等の配置を求めるのは無理である」として、医療の外付けを強化すべきという考え方を表明した。外付けの一例として、重度の褥瘡などに対応する専任・認定看護師との連携をあげた。同時に、より充実した夜間体制を評価する新たな報酬や配置医と一体に看取った場合のより高い加算など、内部配置や体制を評価する報酬の新たな設計が必要と論じた。
 こうした意見に対して、全国老人福祉施設協議会の委員は、「介護医療院との兼ね合いも含め、特養でどこまでやっていくのか役割分担を明確にしなければならない。何もかも特養というのは違う」と異論を唱えた。
 これ以外にも、複数の委員から、医療と介護が手厚く提供される介護医療院の設置によって特養の位置づけが変わる可能性があるとして、そうした展望をも踏まえて特養における医療のあり方を検討する必要があるとする指摘があった。
 日本医師会の委員は「老衰型の看取りまでは医師と看護師の内部配置で対応し、一定以上の医療ニーズには、介護医療院、地域の病院、有床診との役割分担を踏まえて対応していくべきである」と述べ、医療の外部利用を前提とした議論に反対する意見を展開した。
 身体的拘束廃止に向けた取組みに関して、「特養には、拘束廃止だけでなく、転倒等事故の防止や感染防止などトータルな安全対策が求められている。医療機関におけるヒヤリ・ハット報告制度の導入が必要ではないか」といった提案も出た。
 このほか、規制緩和によって看護師の確認で医師が死亡診断書を交付できるというガイドライン案にもとづく研修が議論にのぼり、日看協の委員は、特養をはじめとする看護師の積極的な研修参加への期待を表明した。

全日病ニュース2017年8月1日号 HTML版

 

 

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