全日病ニュース

アプレイザルはまず試行的導入の品目に適用

中医協・費用対効果評価専門部会より丁寧に議論を進めるため予定を変更

　中医協の費用対効果評価専門部会（荒井耕部会長）は７月26日、医薬品や医療機器の費用対効果評価の仕組みの議論の進め方を決めた。現在、集中的に議論している総合的評価（アプレイザル）や価格調整の方法は、すでに13品目が選定されている試行的導入に限って適用し、来年度以降の制度化に当たっては別途検討することにした。
　費用対効果評価の仕組みに関して、委員の合意を得るには、より丁寧な議論が必要と厚生労働省が判断し、当初の予定を若干軌道修正する。
　厚労省は来年度の制度化を目指して費用対効果評価の議論を続けている。
　一方で、今年度から始まった試行的導入では、抗がん剤のオプジーボやＣ型肝炎治療薬のハーボニー、ソバルディなど13品目を選定し、企業のデータ提出を待っている。同専門部会では、今年度に入って、QALY（質調整生存年）やICER（増分費用効果比）の概念を使ったアプレイザルの議論を進めてきた。しかし委員からは、様々な質問や懸念が出ている。
　特に、前回の専門部会では、ICERで費用に対する効果の「よい・悪い」を判断する際の基準となる「支払い意思額」を調べるための世論調査の妥当性を問う質問が相次いだ。このため厚労省は、今夏に実施予定だった調査を延期することにした。
　費用対効果評価の仕組みについて今年中に結論を得るのは、政府全体の方針。このため制度化の時期を遅らせることは想定していない。しかし次期診療報酬改定で価格調整を行う試行的導入の品目に対する費用対効果は早期に実施する必要があるため、こちらを優先して、アプレイザルや価格調整の議論を進めることにした。制度化に向けた議論も、試行的導入の検討状況を踏まえ、同時並行的に行いたい考えだ。
　同日の議論でも、前回と同じく、「支払い意思額」の調査に対して、意見が出た。全日病会長の猪口雄二委員は、「支払い意思額はこの仕組みの重要なモノサシ。定義はわかるが、重症患者に魔法のような薬があるといえば、非常に高い金額を答えるのではないか」と述べた。支払い額の定義は「公的保険から支払うべきと考える金額」だが、実際に患者が支払うのは自己負担であり、調査の目的とは異なる回答が導かれる可能性があると指摘した。
　同様の懸念は、診療側・支払側双方の委員から相次いだ。具体的には、「かかった医療費に対する自己負担はそれぞれで異なる。医療費と自己負担、医療保険財政への影響をすべて考えられる人がどれだけいるのか」、「回答者の理解度が違えば回答のばらつきも大きくなる」、「調査結果の妥当性についてのしっかりした検証が必要だ」などの意見が出た。