全日病ニュース

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患者の意思決定を支援する情報提供などを検討

患者の意思決定を支援する情報提供などを検討

人生の最終段階の医療等検討会10月に意識調査を実施

 厚生労働省は8月3日、「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」の初会合を開いた。一般国民などを対象に10月に意識調査を実施した上で、人生の最終段階の医療に関する意思決定を支援するための情報提供・普及啓発の方法を来年3月にまとめる。座長には、樋口範雄・武蔵野大学教授が選出された。
 人生の最終段階の医療をめぐっては、様々な検討の場を設けて議論を重ねてきた。1987~ 1989年の「末期医療に関するケアの在り方の検討会」(森岡恭彦座長)からはじまり、2007年には、「終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会」(樋口範雄座長)が「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を定めた。その後も2012~2013年の「終末期医療に関する意識調査等検討会」(町野朔座長)まで、アンケート調査を実施しながら、国民的な議論を深める検討を行ってきた。
 しかし、「人生の最終段階の医療に関するガイドライン」は、医療現場で十分活用されているとは言えず、患者本人の意思を共有する環境も整っていないとの指摘もある。厚労省は、国民に対する情報提供が十分でないことや具体的な手段が示されていないことが、国民的議論が深まらない原因の一つと捉え、情報提供や普及啓発のあり方について同検討会に検討を求めた。
 初会合では、木澤義之・神戸大学大学院教授がACP(アドバンス・ケア・プランニング)について説明した。
 ACP は、患者・家族と医療従事者が、終末期の治療・療養について、あらかじめ話し合う自発的な試み全体を表す。
 終末期の患者の7割は、意思決定が不可能であり、「事前に病状の認識を確かめて、意思をきいておく」という考えが基本にある。
 委員からは、「普段死に方を意識することは少ないが、お墓や相続の問題など日常生活に関連する話題から、話をつなげることで格別深刻にならずに死に方を考えることができる」、「命が危険な状態になる前に、人生の最終段階の医療に関する情報を知っておくことが大切」などの意見が出た。
 全日病常任理事の木村厚委員は、「高齢患者が急増する中で、現在は救急隊員も3次救急病院に搬送するかを家族にきいているというが、それでも3次救急病院に患者が集中し、疲弊している。救急搬送における意思確認が重要な課題になる」と指摘した。これに対し武田俊彦医政局長は、「救急搬送で最も時間がかかっているのは東京都。
 解決のため、独自のルールを定め、最適化を図っている。今後の検討会で、厚労省と消防庁の取り組みを説明する」と回答した。
 厚労省が10月に実施予定の「人生の最終段階における医療に関する意識調査」の調査票を説明した。調査項目は、「一般国民向け」「医師、看護師、介護職員向け」「施設長向け」の3つがある。
 意識調査は1992年以降5年おき、5回にわたって実施している。
 一般国民向けの調査では、「回復の見込みはなく、およそ1年以内に徐々にあるいは急に死に至る」と宣告された場合に、「どのような医療を望むか」、「最期を迎えたい場所」などをきく。医師、看護師、介護職員向けの調査では、「死が近い患者の医療・療養について本人と十分な話し合いを行っているか」、「人生の最終段階の医療に関するガイドラインを参考にしているか」などをきく。
 施設長向けの調査の質問では、「ACP を実践しているか」、「患者・家族が望む場所での医療・療養を実現するための支援をしているか」などがある。
 これらの質問を含む調査を10月に実施し、12月に結果を公表する予定だ。

第3次安倍改造内閣の厚労相に加藤勝信氏が就任

 第3次安倍改造内閣が8月3日に発足し、厚生労働大臣には加藤勝信氏が就任した。加藤氏は、第2次安倍内閣発足後に官房副長官に就任、一億総活躍担当相も務めた。厚生労働行政のほか、働き方改革や拉致問題も担当する。
 加藤厚生労働相は4日の閣議後会見で、消費税増税10%が先送りされたことなどから「社会保障は厳しい財源事情の中にある」との見方を示すとともに、2018年度の診療報酬・介護報酬・障害者福祉サービス報酬のトリプル改定に向けて「まずは概算要求からしっかり対応していきたい」と述べた。

 

全日病ニュース2017年8月15日号 HTML版

 

 

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  • [1] 後期高齢者に意見真 - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2007/070415.pdf

    2007年3月2日 ... 提言と要望、 各種検討会への参画、 県. 内病院団体との連携など支部の自発的 .....
    望ましい終末期医療に向けた教育啓蒙. とガイ ドラインの作成」. 終末期医療 ...... れた
    文言修正を座長 (樋口範雄東大大. 学院教授) に離任し、 医政局長宛の ...

  • [2] 当面の策を大臣に建議。病 - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2007/070201.pdf

    厚労省は、 終末期医療に関する指針案. をまとめるために、 医政局長 ... 検討会の委員
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    冒頭 ...

  • [3] 終末期の対応と理想の看取りに関する実態把握及びガイドライン等の

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/other/120412_1.pdf

    2012年1月28日 ... すでにいくつかの終末期ガイドラインが提示されており、また、一般国民や医療専門. 職・
    介護職 ... 講演のテーマは、第1回「終末期の医療」、第2回「終末期医療を考. える出発
    点 ...... 緩和ケア・看取りに関する委員会等での検討体制があると回答した職員は、病院
    . で 50%、 ...... もう1つは、樋口範雄先生の見解です。樋口先生は ...

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