全日病ニュース

全日病ニュース

療養病棟の医療区分の設定に一定の妥当性

療養病棟の医療区分の設定に一定の妥当性

【中医協・入院医療等分科会】看護配置25対1の取扱いが課題

 中医協の診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(武藤正樹分科会長)は8月4日に療養病棟入院基本料と障害者施設等入院基本料等、有床診療所入院基本料をテーマに議論した。また、24日に一般病棟入院基本料などについて議論した。
 療養病棟については、厚生労働省が現行の医療区分が医療の必要度を反映したものとなっていることを示すデータを示した。また、今年度で看護配置基準の特例が切れるため、25対1の取扱いが課題となる。
 療養病棟入院基本料については、介護療養病床とともに、医療法施行規則の人員配置特例の経過措置が、今年度で期限を迎えることに伴い、看護配置25対1の療養病棟入院基本料2の取扱いが今後の重要課題となる。医療法の規定で看護配置4対1未満(診療報酬では20対1未満)が認められなくなるためだ。
 これを踏まえ、保険者側の委員が「介護療養病床と25対1の患者像が類似しているとのデータも踏まえ、25対1は廃止すべき」と主張した。これに対し療養病棟を経営する委員は、「20対1は医療区分2・3の患者を8割集めなければならない。25対1は前回改定で5割に上げたばかりで、それを満たせない場合の特例措置もある。いきなり20対1になるというのはハードルが高いので、段階的な対応を検討すべき」と配慮を求めた。
 療養病棟入院基本料の区分で用いられる医療区分の詳細なデータを厚労省が提示した。
 例えば、医療的な状態が「常時、不安定」の患者の割合は、医療区分3が14.7%、医療区分2が3.6%、医療区分1が2.0%だった。医師の診察の頻度では、週1回以下の患者の割合は医療区分3が37.4%、医療区分2が55.8%、医療区分1が67.1%だった。看護提供頻度でも同様の傾向がみられ、医療区分の1、2、3の順で医療必要度が高いことが示唆され、医療区分の妥当性が一定程度確認できた。
 これを受け、董仙会理事長の神野正博委員は、「今回は医療区分を見直す議論はしなくてよいのではないか」と述べた。今年度の調査においては、医療の必要度を判断する質問として適切ではないと指摘された「医師の指示の見直し頻度」だけでなく、他の指標とあわせて、医療必要度を調査したことも評価した。また、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が合計1名以上配置されている病院で、在宅復帰率が高いとのデータに対し、「嚥下リハに関わる言語聴覚士だけの効果をみたい」と厚労省に依頼した。
 療養病棟における死亡退院が4割であることを踏まえ、「看取り」に関する機能のあり方も課題となった。厚労省は「人生の最終段階の医療の決定プロセスに関するガイドライン」の医療従事者や介護職員の認知度が高くないことを問題点として指摘した。看取りの機能に関しては、委員から「死亡退院が4割だが、すべてを看取っているわけではなく、治療の結果、残念ながら亡くなる患者も少なくない」と、療養病棟の多面的な機能を評価すべきとの意見が出た。
 また、神野委員は、「地域医療構想では医療区分1の7割を介護施設・在宅等に移行させるとしているが、医療区分1の患者の4割が、医学的な理由で入院を継続しているとのデータが今回示された。これを医政局と共有してほしい」と指摘した。
障害者施設等入院基本料は適正化
 一般病棟の障害者施設等入院基本料については、2016年度診療報酬改定で、難病患者など本来入院が想定される患者とは異なる患者が、実際には、多く入院しており、その患者像が療養病棟と類似していた。このため、療養病棟の評価に近づける改定を行った。具体的には、脳卒中の後遺症による重度の意識障害の患者の入院基本料について、医療区分1・2に該当する場合は、引下げを行った。
 今回は、障害者施設等入院基本料の患者のうち、「重度の肢体不自由」の患者の状態像を分析した。その結果、◇重度の肢体不自由の患者は障害者施設等入院基本料全体の半数以上◇重度の肢体不自由の患者のうち、医療区分1の患者の割合は、療養病棟入院基本料1より多い─などがわかった。これらを踏まえ、次期改定では、「重度の肢体不自由」の患者の入院基本料を対象にした改定を行うことが示唆された。
有床診は機能に応じた評価を要請
 有床診療所についても様々なデータが提示された。有床診は現在約8千施設で、減少傾向にあり、都道府県のばらつきが大きい。標榜診療科では、内科系が34%で最も多く、次いで、外科系(13%)、産婦人科(10%)、整形外科(7%)、リハビリテーション科(7%)となっている。年齢階級別の入院基本料の算定割合をみると、入院基本料1~3では、65歳以上の患者が約75%を占める。
 入院の1日あたり平均点数は、眼科と耳鼻咽喉科が最も高く、8千~9千点台で、手術が多い。一方、その他の診療科が2千点前後で、入院基本料の占める割合が高く、診療科で大きな違いがある。
 これらを踏まえ、神野委員は「様々な有床診がある。少なくとも専門的な医療を担っている有床診と、地域包括ケアシステムを担っている有床診を区別して分析をしないと、診療報酬の評価を議論することができない」と述べた。他の委員からも、「数床の有床診から20床に近い有床診まで規模により、役割や経営状況が異なる」、「地域医療に不可欠な産科・小児科、看取りなどを担う有床診を支援する体制が必要」など、担う機能に応じて、有床診を評価すべきとの意見が相次いだ。
7対1、10対1の関係などを議論
 8月24日の入院医療分科会では、◇一般病棟入院基本料◇入退院支援◇地域包括ケア病棟等を議題とした。
 一般病棟入院基本料については、7対1と10対1の平均在院日数と「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)の該当患者割合の関係などから、両者の機能が重なる病棟が少なくないことがわかった。一方で、7対1は看護必要度を満たす患者が一定割合以上であることが要件で、10対1は加算であるなど評価基準が異なり、点数の差も大きい。神野委員は、10対1の手厚い看護配置に対する評価を求めた。
 看護必要度について事務負担が大きいとのデータが示され、負担軽減が課題となった。その際、看護必要度のA項目(モニタリングおよび処置等)、B項目(患者の状況等)、C項目(手術等の医学的状況)の各項目を診療報酬項目に代替させて、患者の重症度を把握することが論点となった。だが、それぞれ定義が異なるため、代替可能かを整理する必要がある。例えば、A項目の「点滴ライン同時3本以上の管理」を診療報酬のG004「点滴注射」に代替させられるかなどを検証する。委員からは賛同する意見が相次いだ。
 入退院支援については、入院前を含めた入院早期の支援の取組みが論点となった。入院基本料等の要件である在宅復帰率は、必ずしも在宅に復帰することを評価する指標ではないので、名称の見直しを検討する方向だ。
 地域包括ケア病棟入院料の分析では、自宅等から入院する患者と急性期病棟から転棟する患者を比べると、自宅等から入院する患者の方が重症となっている。厚労省は、両者の違いの評価を検討する上で地域包括ケア病棟等の「救急・在宅等支援病床初期加算」を例示。これは急性期病棟からの転棟や自宅等から入院した患者に対し14日を限度に算定できるもので、機能の違いを評価する上で参考になるとした。

 

全日病ニュース2017年9月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 中医協総会> 医療療養病床25対1は6年の経過措置が必要

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170515/news02.html

    2017年5月15日 ... 医療療養病床25対1は6年の経過措置が必要|第894回/2017年5月15日号 HTML
    版。21世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、全日本病院協会が ... 中医協総会(
    田辺国昭会長)は4月26日、次期診療報酬改定に向けて療養病棟入院基本料について
    議論した。 ... 医療区分3の酸素療法、医療区分2の頻回の血糖検査、うつ症状の判断
    が厳格になった上に、療養病棟入院基本料2(25対1)で医療区分2・3の ...

  • [2] 新施設類型 介護療養型は案1、医療療養25対1は案2への転換を想定か ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160301/news07.html

    2016年3月1日 ... 新施設類型 介護療養型は案1、医療療養25対1は案2への転換を想定か|第866回/
    2016年3月1日号 HTML版。21世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、 ... 療養病棟
    入院基本料2は医療区分2と3の患者割合5割以上が要件となる。 ... これも中医協
    データから計算すると月に210万円、年間2,520万円の減収となる。

  • [3] 入院医療の2016年度調査項目を了承|第882回/2016年11月1日号 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20161101/news16.html

    2016年11月1日 ... 中医協の入院医療等の調査・評価分科会(武藤正樹分科会長)は10月12日、2016
    年度診療報酬改定の結果を検証するための2016年度調査の項目案を概ね了承した。
    また、療養病棟入院基本料等の調査は2016年度と2017年度の両年度 ...

  • [4] 中医協・入院医療等分科会> 7対1病院や地域包括ケア病棟の状況

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170615/news07.html

    2017年6月15日 ... 療養病棟入院基本料については、2016年度改定で、特に看護配置が25対1の入院
    基本料2の医療区分・ADL区分の患者割合見直しなどで厳格化が行われた。届出状況
    をみると、20対1のみが60.3%、25対1のみが31.8%、両者を合わせた ...

  • [5] 医療課長「退院支援要員の専従・専任は議論次第」|第859回/2015年 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20151115/news03.html

    2015年11月15日 ... 医療課長「退院支援要員の専従・専任は議論次第」. 【中医協総会・2016年度改定の
    議論】 診療側「療養病棟入院基本料2の要件変更は医療区分の抜本見直しが前提」.
    中医協総会における2016年度改定の審議は個別テーマごとの論点に ...

  • [6] 日病協> 次期診療報酬改定の要望書を4月に提示

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170215/news08.html

    2017年2月15日 ... 中医協で次期診療報酬改定に向けた議論が始まったことから、厚生労働省に対する
    改定要望書を通常より早く4月に提出することを決めた。10~ 11 ... 会議では、病棟
    単位の入院基本料の評価や医療療養病床25対1のあり方、在宅医療との関係などが
    議論になった。 ... 前回改定では、医療区分2・3の患者割合を5割以上とする一方、報酬
    を95%とした上で、2018年3月31日まで5割未満を認める特例を設けた。

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。