全日病ニュース

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診療報酬算定事務の効率化・合理化で対応方針示す

診療報酬算定事務の効率化・合理化で対応方針示す

【中医協・総会】レセプトへの住所地記載では賛否

 厚生労働省は9月27日の中医協総会(田辺国昭会長)に、診療報酬の算定における事務の効率化・合理化策や情報の利活用を見据えた対応を示した。
 7項目の課題に対し、対応の方向性が示され、概ね了解を得た。ただし、レセプトに患者の住所地を記載することには、賛否があった。
 厚労省は次期改定で対応できるものとできないものを分けて、診療報酬に係る事務の効率化・合理化と情報の利活用に向けた見直しを進める方針。今回示した対応方針は、次期診療報酬改定での実施を目指すものだ。
 厚労省は、課題を表1のように整理した。

表1 事務の効率化・合理化の課題
① 施設基準の届出項目や手続き等は合理化の余地がある
② 入院診療計画書等の入力に手間がかかる
③ レセプトの摘要欄の自由記載が負担になっている
④ レセプトに患者の住所情報等がない
⑤ 診療行為コードが実臨床に即したコード体系になっていない
⑥ 傷病名や診療行為の選択が統一されていない
⑦ データ提出加算の診療実績データの様式が急性期を中心にした項目になっている

 施設基準の届出項目や手続き等の合理化では、改定内容を見据えながら、届出の省略や手続きの簡素化を図る。
 次期改定以降も、継続的に作業を続け、施設基準の届出や報告・受理のオンライン化を目指す。入院診療計画書などは、所定の様式があり、それに準じた記載が求められている。一方ですでに記載済みの診療情報があるため、その場合は簡略化ができる旨を明示する。
 レセプトの摘要欄の自由記載欄については、選択形式にする。例えば、「在宅自己腹膜灌流指導管理料」の算定では、指導管理を行う理由を摘要欄に記載しなければならない。見直し案では、「糖尿病で血糖コントロールが困難」「腹膜炎の疑い、トンネル感染及び出口感染のあるもの」など5項目の選択肢を設ける形式を例示した。選択形式にすれば、自ら記入する手間が省ける。
 ただ委員からは、「選択肢に当てはまらない場合がある。自由記載欄をすべて外すのは難しいのでは」との意見があった。また、審査支払機関の審査が容易になることを評価する声があがる一方で、医療の裁量が狭まることへの懸念が示された。
 レセプト添付書類の見直しでは、不必要と考えられる添付書類の廃止や、レセプトへの記載で代用するなどの見直しを行う。例えば、「両室ペーシング機能付き植込型除細動器」を用いた移植術を行った患者については、レセプトに症状詳記を添付する必要がある。
 見直しでは、症状詳記の添付は廃止し、レセプト摘要欄に留意事項の要件を確認できる事項を記載するとした。現段階で、11項目で添付詳記を廃止できるという。
 レセプトに患者の住所情報等を載せる提案は、地域単位での医療提供体制や医療の地域差を分析するのが目的。
 また、レセプトに記載する氏名は漢字またはひらがな表記であるのに対し、介護保険の受給者台帳はカタカナ表記で、両者の紐付けができないという問題がある。このため、レセプトに患者の住所地の郵便番号を記載するとともに、氏名のカタカナ表記を求める。
 これに対し、委員からは賛否両論があった。全日病会長の猪口雄二委員は、「最近のレセコンは漢字からカタカナへの変換ができるが、古い機器ではできないときいている」と述べた。他の診療側委員も、住所地が確認できない場合や変更した場合などで、負担が増えることへの懸念が相次いだ。その上で、支払側の委員に、保険証への記載が可能かを尋ねた。支払側委員は、保険証に記載欄はあるが必須ではないと答えるとともに、「被扶養者と住所地が違う場合がある」など、確実な記載は困難との見解を示した。
 診療行為コードについては、手術分類(K コード)に外保連手術試案の基幹コード7桁(STEM 7)を併記する欄を設ける。STEM 7は、臨床的な観点から体系的に整理された分類と位置づけられている。傷病名や診療行為の統一に向けた対応でも、K コードとSTEM 7の対応関係などを確認しつつ、再編の手順の検討を進める。
 データ提出加算の診療実績データの見直しは、診療実績データの提出を急性期以外の病棟にも拡大する方向性を踏まえた対応だ。回復期リハビリテーション病棟や療養病棟に拡大する場合に、急性期を想定した現行の様式を回復期や慢性期に対応したものに変更する必要がある。その際に、新たに追加するデータの内容や対象に応じて、一定の経過措置を設けるとした。
 これらに対し、委員からは一部を除き、概ね賛意が示された。猪口委員は、システム改修に伴う医療機関の負担に配慮を求めるとともに、特に仕様の異なる電子カルテシステムを医療機関が持つことの非効率を指摘し、「早急に、国が提供する電子カルテシステムの標準マスタおよび、標準データフォーマットの義務化を検討してほしい」と要望した。