全日病ニュース

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地域医療構想に関する意見交換会を開く

地域医療構想に関する意見交換会を開く

都道府県における病院団体の連携を呼びかける

 全日病は9月18日、「地域医療構想に関する意見交換会」を開き、全国の支部から地域医療構想調整会議の状況について報告を受け、今後の方針をめぐって活発に議論した。司会は、猪口正孝常任理事。
 まず織田正道副会長が、厚生労働省の地域医療構想ワーキンググループの検討状況を説明した。全国の341の構想区域について、2015年病床機能報告の病床数と2025年における病床の必要量を比較した資料によると、回復期は336区域で病床不足(病床機能報告<病床の必要量)である一方、急性期では328区域で病床過剰(病床機能報告>病床の必要量)となっている。
 入院基本料と病床機能報告の関係をみると、13対1、15対1は急性期で報告している病院が多いが、厚労省は、13対1、15対1は回復期か慢性期として取扱うことを提案している。
 これに対し織田副会長は、「本当に回復期が不足しているのか。回復期が足りなくて困っているところはほとんどない」と指摘。その理由として、「高度急性期、急性期、慢性期でも回復期の病期に該当する患者が多数入院しているからだ」と説明した。
 特に急性期のみの病院は、平均病床数が87床で、1~2病棟で急性期と回復期が混在しているとみられる。また地方や過疎地では13対1、15対1でも二次救急の役割を担い、急性期の機能を果たしている病院が多いことをあげて、「急激な病棟再編により地域医療が崩壊しないようにしないといけない」と訴えた。
 また織田副会長は、新公立病院改革ガイドラインに地域医療構想を踏まえた役割が記載されていると指摘。「地域医療構想で回復期が足りないとされているので、これに沿って改革プランが出てくる可能性がある」と注意喚起した。
 「公立病院改革の目的は公・民の役割分担にあり、民を圧迫する形で公立病院が回復期や地域包括ケアに参入してくることは問題」と述べ、公・民の役割分担を主張することを呼びかけた。
公立病院の動きに危機感
意見交換会では、16の支部が地域の状況を報告した。各支部に共通の課題は、公立病院が地域包括ケア病棟や回復期リハ病棟への転換を進めていることだ。「地域の公立病院がオールインワンの機能を持つと民間病院は厳しい状態になる」「民間病院の立つ位置が狭くなっている」と訴える声が相次いだ。
 公立病院の役割を踏まえて地域における機能分担を進めるのが調整会議だが、十分に機能していないケースもみられる。猪口常任理事は、「病院団体が調整会議にどうかかわるかが課題だ」として、東京都の取り組みを紹介した。
 東京では都医師会が東京都病院協会の立場で、公的病院に地域包括ケア病棟の届け出を遅らせるよう牽制している。
 東京では、各病院団体の支部が東京都病院協会を立ち上げ、医師会との関係をつくってきた。現在、猪口常任理事が東京都病院協会から東京都医師会の副会長として出て、意思疎通を図っている。
 他の支部からも同様の取組みの報告があった。青森県では、村上支部長が県医師会の副会長として、県の行政に関与している。「形をつくると行政は医師会の意見を求めるようになる」と村上氏。病床稼働率が落ちている市町村立病院は老健施設に転換するなどしてベッドを減らしていると報告した。
 埼玉県では今年2月、病院の窓口を一本化するため、埼玉病院協議会(埼病協)を立ち上げた。県の医療政策課と連携して、各圏域の調整会議のメンバーを確認し、医療機能ごとに病院団体の代表を推薦する仕組みをつくった。
 猪口会長は、病院団体から医師会に働きかけ、病院に対する理解を求めていく必要があると呼びかけた。
奈良県方式を紹介
猪口会長が奈良県における病床機能報告制度の対応を紹介した。奈良県では、急性期を「比較的重度」と「比較的軽度」に分けて報告を求めた結果、軽度の急性期と回復期を合わせると、ほぼ回復期の必要病床数に近づいたという。
 回復期が不足する状態がなくなり、「回復期リハや地域包括ケア病棟に無理に転換する必要はなくなる」とコメントした。
 回復期機能は、回復期リハや地域包括ケア病棟と同義で受け止められているが、そもそもの定義では急性期を過ぎたものをすべて含む。「地域に密着して軽度の急性期を行っている病院が回復期に手をあげることによって、回復期の枠を抑えていくやり方があるのではないか」と猪口会長は問題提起した。
 地域医療構想をめぐる状況は地域によって大きく異なり、各支部における取組みが鍵を握る。他支部の取り組みを参考にしつつ、各地の実情に応じた対応が求められる。この日の意見交換会はそのための方法論を共有する上で大きな成果があったといえよう。

 

全日病ニュース2017年10月15日号 HTML版

 

 

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