全日病ニュース

病院経営をデザインする

【医療の質向上委員会】

医療の質向上委員会　委員長　飯田修平

　学会テーマ「今こそ生きるをデザインせよ」を受けて、医療の質向上委員会は「病院経営をデザインする」をテーマに選定した。
　デザインとは、問題解決のために思考・概念を組み立て、それを表現することである。重要な事項は、“ 問題”を把握し、その要因を分析し、“ 解決”しようとする意思を持ち、その“ 方策”を検討し、実践することである。これは、品質管理において、管理サイクル・問題解決サイクル・PDCA サイクルといわれる。組織運営にPDCA サイクルを回すことが必須である。
　「病院経営改善をデザインする」ではなく、「病院経営をデザインする」とした理由は以下のとおりである。①小手先では、病院経営は継続できず、病院経営をデザイン（再構築）しなければならない。②そのためには、医療法と品質管理（QM）の考え方、すなわち、原理・原則に基づいて、現場で現実に現物で実践する（５ゲン主義）こと、問題解決手法が必要である。③総合的質経営（TQM：Total QualityManagement）が有用である。④全職員に病院経営の知識が必要である。特に病院長や幹部には必須である。
１． 座長飯田が、“ なぜ、今をデザインするのか” を提示した。
　かつては、経営を考えなくても病院を運営できたが、いまや、経営の仕組み（構造・体制・制度）を、小手先ではなく、基本から再検討しなければならない。経営とは制約条件の中で、環境の変化にいかに対応するかである。
　頻繁に変更される医療制度の下で、不確実・複雑・移り変わる状態の患者に適切に対応し、極めて複雑な病院組織を運営することは、容易ではない。このような状況において、有効に「病院経営をデザインする」ことは可能であろうか。各演者にそれぞれの切り口で検討いただいた。
２．高橋肇委員が、情報技術を駆使した情報活用、すなわち、情報管理に関して現状と今後の課題を提示した。地域医療連携システムおよび地域包括ケアネットワークシステムに関する事例を紹介し、医療・介護連携指標の作成が急務であると述べた。
３．永井庸次委員が、情報管理の中の、情報活用、データマネジメントに関して、現状と今後の課題を提示した。とくに、Data WareHouse（DWH）構築の重要性を強調し、ひたちなか健康IT ネット（地域連携、医療・介護連携）における活用事例を提示した。
４．長谷川友紀委員が、臨床指標の意義と、その診療および経営への活用に関して、現状と課題を提示した。
　Quality Indicator（質指標）とは、医療の質に関する標準化された、根拠に基づいた指標であり、院内のデータを用いて臨床経過や結果を容易に表すことができるものというAHRQ の定義を提示した。また、国内外の医療の質と質指標に関する考え方と取り組みを提示し、全日本病院協会の医療の質評価事業の全体図を解説した。
５．各演者の報告を受けて、質疑応答を行った。