全日病ニュース

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総合医へのキャリアチェンジを支援

総合医へのキャリアチェンジを支援

常任理事会で全日病総合医育成プログラムを討議

 高齢患者が著増する中で、臓器別にとらわれない幅広い診療、多様なアクセスを担保する診療、そして、多職種からなるチーム医療のマネジメントなどが実践できる組織であることはこれからの地域に密着した病院には必須である。全日病は、こうした認識に立って、これらの課題の解決に取り組む人材として総合医の育成事業を進めている。10月21日の常任理事会では、総合医育成プログラムの概要について井上健一郎常任理事から説明を受けて議論した。
 全日病総合医育成プログラムは、医師経験が概ね10年以上で、プログラムでの研修を希望するすべての診療科の医師が対象。研修期間は1年を基本単位とするが、個々の職場や個人の状況を考え、1~3年の柔軟な運営とする。修了者には、「全日本病院協会認定病院総合医」の認定証を発行。2018年1月から募集を開始し、7月から開始する予定だ。
チーム医療のマネジメントを担う
 協会会員施設に勤務する一定のキャリアを持つ医師が専門性や経験を生かしつつ、さらに診療の幅を広げることがこのプログラムのねらいだ。地域包括ケアにおける複雑な課題への対応能力を高め、かつ病院組織の運営に積極的に関与し、病院内外の医師および連携施設、そして関係する多職種との連携をスムーズに行うことができる医師を育成することを目指している。
プログラムの構成
 プログラムでは、受講者がそれまでのキャリアを踏まえカリキュラム達成記録にて本人が達成目標及び研修項目を決定し、プログラムを開始する。
①診療実践
 指導医の支援、全日病による支援体制を受けながら自施設で診療・実践を行うことを原則とする。
②スクーリング
 「診療実践コース」、「ノンテクニカルスキルコース」、「医療運営コース」の3コースから構成される。(表)。
③ e- ラーニング
 プライマリ・ケアの実践に役立つ録画されたレクチャーをe-learning システムとしてオンデマンドで配信する。
自施設での研修が原則
 井上常任理事の説明に対し、専門医機構の総合診療専門医との違いなどについて質問があった。
 井上常任理事は、専門医機構の総合診療専門医とは志向する方向性は同じであるが、このプログラム自体は協会独自のものであること、総合医にキャリアチェンジする医師が数年間、自施設を離れて研修することは難しいことを指摘。自施設での診療・実践を原則にプログラムを組んでいることを説明した。また、「病院の中で組織運営ができる医師を育成する必要がある。そのためにノンテクニカルスキルコースを用意した」と述べた。
 猪口会長は、「総合診療専門医が普及するには20年はかかる」とし、それを待たずに総合医のニーズに対応する必要があることを強調した。

表 スクーリングの構成
 「今後激変するプライマリ・ケアの現場で一歩踏み出せること」を目標とする。また単なる座学ではない体験型ワークショップであり、現場での実践力を身につける。診療実践コースにおいてはコースごとに診療場面を意識した到達目標を明示し、自らのバックグラウンドや診療能力と照らし合わせて必要なコースを選択して受講する。
Ⅰ 診療実践コース(22単位)
【総論】
①臨床推論/ EBM ②病歴聴取(コミュニケーション技法含む)/身体診察③ T&A(triage & action)コース(成人、小児)④生活習慣指導(行動変容含む)⑤地域包括ケア実践⑥生活の視点、リハビリテーション
【各論】
①循環器②呼吸器③消化器④代謝内分泌⑤腎・泌尿器⑥神経⑦血液・膠原病⑧感染症⑨小児科(1)⑩小児科(2)⑪整形外科⑫産婦人科⑬眼科・耳鼻科⑭皮膚科⑮精神科⑯認知症
Ⅱ 医療者のためのノンテクニカルスキルコース(10単位)
多職種を巻き込んだチームを作り、リーダーシップを発揮し、メンバーと十分にコミュニケーションを取って効果的にタスクを遂行する能力の修得を目標とする。
① MBTI(性格タイプ別コミュニケーション)②コンフリクトマネジメント③コーチング+人材育成④教育技法⑤リーダーシップ・チームビルディング⑥ミーティングファシリテーション⑦問題解決(1)⑧問題解決(2)⑨ TEAMS-BI(仕事の教え方)⑩TEAMS-BP(業務改善の仕方)+ TEAMS-BR(人への接し方)
Ⅲ 病院運営コース(3単位)
地域で活躍する総合医に求められる、医療システム全体を俯瞰する能力を習得する。
①日本の医療の将来像②医療制度・診療報酬の理解③介護制度の理解

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全日病ニュース2017年11月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 「全日本病院協会総合医育成」事業について

    https://www.ajha.or.jp/topics/jimukyoku/pdf/171110_2.pdf

    2017年11月10日 ... 人材としての医師を育成。 ○ 病院内外の医師および連携施設、そして関係する多職種
    との連携をスムーズに行うことができる医師の. 育成。 (対象者と概要). ○ 対象:原則
    として医師経験10年目以上で、本プログラムでの研修を希望する協会施設の全て ...
    指導医の支援、全日病による支援体制を受けながら自施設で診療・実践を行うことを
    原則とする。 ② スクーリング. 「診療実践コース」、「ノンテクニカルスキルコース」、「医療
    運営コース」の 3 コースから構成される。 ③ e ラーニング. プライマリケアの ...

  • [2] 全日本病院協会総合医育成事業の概要

    https://www.ajha.or.jp/topics/jimukyoku/pdf/171110_3.pdf

    プログラム修了医師に期待される役割. 全⽇病総合医育成プログラム. 総合診療医. ⼤
    学病院等. 全⽇病会員病院. ⾏政. 多職種. 診療所. 診療所. 地域ケア. 在宅ケア. 地域
    ケア. 在宅ケア. ⾼い共通基盤を持つ総合医が. グループを形成. 外来. 救急. 病棟. 6 ...
    コースから構成される。 • 研修者は、それぞれのコースにおいて所定の単位数を受講
    することを. 修了の条件とする。 ③eラーニング. • プライマリケアの実践に役⽴つ
    レクチャーをe-learningシステムに. 録画し、オンデマンドで配信する。 全⽇病総合医
    育成プログラム.

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2017年11月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/voice/topnews/backnumber/pdf/2017/171101.pdf

    2017年11月1日 ... また、医療安全対策. では、医師などの専従配置の評価が論. 点となったが、全日病
    会長の猪口雄二. 委員が専従要件の緩和を主張し、さら. なる議論を深めることとなった
    。 救命救急入院料を見直す. 救命救急入院料は、救命救急セン. ターの充実段階 ......
    全日本病院協会プラ. イマリ・ケア検討委員会ではこれらへ. の対応の一つとして、全日
    病総合医育. 成事業の検討を進めている。なお、日. 本専門医機構で運営される総合
    診療専. 門医が2018年度から1期生の後期研修. がスタートすることになって ...

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