全日病ニュース

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精神やリハビリなど個別項目の議論進む

精神やリハビリなど個別項目の議論進む

【中医協・総会】リハビリのアウトカム評価で意見分かれる

 中医協総会(田辺国昭会長)は10月後半から週2回の開催となり、次期診療報酬改定に向けた本格的な議論を始めた。10月18日には精神医療、25日にリハビリテーション、27日に選定療養をテーマに議論した。11月1日の総会では、外来診療について、情報通信機器を用いた遠隔医療や生活習慣病の重症化予防などを議題とした。
 精神医療では、依存リスクが高く、睡眠薬・抗不安薬として使われることが多い抗精神薬のベンゾジアゼピンの適正化が課題となった。診療報酬に多剤・大量処方に対する適正化措置がある。しかしベンゾジアゼピンは「通院・在宅精神療法」の算定も受けず、単剤で長期間処方される事例が少なくないことがデータから示されている。
 これに対し、支払側の委員が適正化の必要性を強調。「一般の診療所で制限なく処方されている実態が最大の問題」と指摘した。全日病会長の猪口雄二委員は、「確かに乱用気味の実態があり、一定の規制が必要と考える。長期処方では、精神科医療がきちんと提供される体制であるべき」と主張した。
 来年度は、国家資格となった公認心理師の試験が初めて実施される。公認心理師は、患者の心理状態の観察や分析、心理に関する相談や助言・指導などを行う職種で、医療機関での勤務が想定されている。その場合に、診療報酬の「臨床心理技術者」との関係を整理する必要がある。例えば、「精神科リエゾンチーム加算」、「摂食障害入院医療管理加算」などの施設基準に「臨床心理技術者」の規定がある。
 猪口委員は、「来年度改定で診療報酬による評価をすれば、臨床心理士の奪い合いが生じるおそれがある。もう少し様子をみて、安定的に増えていることを確認してから判断すべき」と、当面は現行どおりにすべきと主張した。
アウトカム評価の効果が明らかに
 リハビリテーションについては、2016年度改定で導入した回復期リハビリテーション病棟のアウトカム評価の結果をみた。ADL スコアによる実績指数で27点未満が半年続くと、診療報酬が適正化されるが、対象となる病棟のほぼすべてで実績指数は27点を超えていた。さらに、平均在院日数、在宅復帰率、日常生活の自立度評価(FIM)などの指標は、いずれも2015年より改善していた。
 これらを受け、猪口委員は「アウトカム評価の効果が出ている。今回は評価を厳しくする必要はない」と主張。
 一方、支払側の委員は「効果があったのは認めるが、元々の基準が緩い。段階的な評価も検討すべき」と厳格化を求めた。
 退院後早期のリハビリを充実させる観点から、①退院後早期の患者は、発症からの日数上限がある疾患別リハビリテーション料の標準的算定日数の除外対象とする②病棟に専従で配置されている理学療法士などが退院後にリハビリを提供できるよう、専従要件を緩和する─の2点が提案された。猪口委員は賛意を表明した。
 要介護被保険者に対する疾患別リハビリテーション料の算定の経過措置は、2019年3月31日まで延長する方向になった。2018年3月31日までが期限となっていたが、外傷性の肩関節腱板損傷など長期間のリハビリが必要な症例があることを踏まえた。あわせて医療保険から介護保険への維持期・生活期のリハビリへの円滑な移行策を推進。
 医療機関が通所リハビリを実施しやすくなるよう、職員配置や設備の共用を可能とする見直しを行う考えだ。
 選定療養の取扱いでは、180日を超える入院基本料の15%を患者が負担する選定療養について、例外規定を追加。現在、重度の肢体不自由者など17類型の患者への費用徴収が禁止されているが、これに「造血幹細胞移植後または臓器移植後の拒絶反応に対する治療を実施している患者」を加える。
 また、治療とは直接関係のないサービスとして、患者から実費を徴収できるものに、①画像・動画情報を提供する場合②公的な手続き等を代行した場合があることを明確化する。①については、患者が他の医療機関の医師から助言を得ることを目的に、画像・動画情報を提供する場合は対象としない。
 情報通信機器を用いた遠隔診療では、新たな評価を設けることを大筋で了承した。事前の治療計画の作成や患者の同意、一定の受診期間などの条件を求める。現行では再診料の特例として認めている。睡眠時無呼吸症候群の治療での遠隔モニタリング加算も新設。生活習慣病管理料は治療計画書を見直す。

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全日病ニュース2017年11月15日号 HTML版