全日病ニュース

全日病ニュース

費用対効果評価の価格引下げの基準は500万円

費用対効果評価の価格引下げの基準は500万円

【中医協・費用対効果評価合同部会】価格引上げの検討には賛否両論

 中医協の費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会(荒井耕部会長)は10月25日、費用対効果評価の試行的導入において、医薬品などの価格を引き下げる際の効果に対する費用の基準を500万円とすることで合意した。一方、価格を引き上げる調整を行うことについては賛否両論があった。
 費用対効果評価の手法である総合的評価(アプレイザル)では、増分費用効果比(ICER)を使って、医薬品や医療機器の費用対効果の「よい・悪い」を判断する。その結果により、価格調整を行う。具体的には、ICER が一定基準より低い場合(費用対効果がよい)は価格調整を行わない。ICER が一定基準より高い場合(費用対効果が悪い)は価格を引き下げる。価格を引き下げる領域には一定範囲を設け、それ以上は価格が下がらない下限を設ける。
 今回、価格を引き下げる一定基準を500万円にすることを決めた。QOL を考慮した生存期間(質調整生存年)を1年延ばすのに、500万円を超えると費用対効果が悪いと判断されることになる。500万円は過去の日本の研究者の論文と、生活水準が比較的日本に近く、費用対効果評価の仕組みがある英国の評価基準を参考にして決めた。
 論文によると、2010年調査で「回答者の半数が支払いを許容した金額」(支払い意思額)の50パーセントタイル値が485万円だった。英国の評価基準では、「医療技術の(保険収載の)受入れ可能性を個別に判断する上限額」が3万ポンド(436万円)、「致死的疾患、終末期の治療でその医療技術が推奨される上限額」が5万ポンド(727万円)となっている。
 費用が500万円より大きいと、引下げ額も大きくなるが、上限は1,000万円とする。世界保健機関(WHO)や英国の基準に合わせた。なお、英国の基準は、保険償還の可否に用いている基準であり、単純な比較はできない。
 ICER を用いた分析では、比較対照品目(技術)と比べて、効果が増加し(または同じ)、同時に費用が削減される品目については、費用対効果を判断できない。このため厚生労働省は、別途価格調整の方法を検討する必要があるとした。そのような品目は価格引上げの対象となる。厚労省はその条件として、①臨床試験等で比較対照品目より効果が高いことが示されている②比較対照品目と基本構造や作用原理が異なるなど、一般的な改良の範囲を超えていることをあげている。
 これに対して、委員からは賛否両論があった。「医療保険財政への懸念から費用対効果評価の議論が始まった。
 価格の引上げはあり得ない」との意見も出たが、厚労省は「対象になる品目は多くない。比較対照品目と比べて、費用が削減される範囲で価格引上げを行う」と述べて、理解を求めた。

:

 

全日病ニュース2017年11月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 費用対効果評価の仕組みの制度化を議論|第889回/2017年3月1日 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170301/news05.html

    2017年3月1日 ... 費用対効果評価の仕組みの制度化を議論|第889回/2017年3月1日号 HTML版。
    21世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、全日本病院協会が毎月1日と15日に発行
    する機関紙です。最新号 ... 中医協費用対効果評価専門部会(荒井耕部会長)は2月
    8日、医薬品・医療機器の費用対効果評価の仕組みの制度化について、夏をめどに
    一定の結論を得ることを了承した。 費用対 ... ただしICER をそのまま使うのではなく、
    倫理的、社会的影響を勘案した総合的評価(アプレイザル)を行う。試行的 ...

  • [2] 厚労省が社会的影響を考慮する観点を示す|第896回/2017年6月15 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170615/news04.html

    2017年6月15日 ... 厚労省が社会的影響を考慮する観点を示す. 【中医協費用対効果評価専門部会】 委員
    は具体的な事例の提示を要望. 中医協費用対効果評価専門部会(荒井耕部会長)は
    5月31日、医薬品や医療機器の費用対効果評価の総合的評価(アプレイザル)について
    議論した。アプレイザルでは、増分費用効果比(ICER)の分析結果に基づき、倫理的、
    社会的影響の観点で評価する。厚生労働省は「公衆衛生的観点」などを示したが、委員
    からは「イメージがつかめない」といった意見が相次いだ。 費用対効果 ...

  • [3] 中医協・費用対効果評価専門部会> 費用対効果の評価基準で技術的な ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20171001/news13.html

    2017年10月1日 ... 中医協費用対効果評価専門部会(荒井耕部会長)は9月13日、費用対効果評価
    試行的導入における価格改定手法について議論を深めた。費用対効果評価の「よい・
    悪い」を決める評価基準について、技術的な論点が示されたが、委員からは費用対効果
    評価への具体的な影響がわからないとの意見が出て、結論には至らなかった。厚生
    労働省は議論を慎重に進める姿勢で、制度設計が予定より遅れている。 試行的導入
    では、総合的評価(アプレイザル)の増分費用効果比(ICER)の評価基準で、 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。