全日病ニュース

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病床報告の定量基準として平均在棟日数を検討

病床報告の定量基準として平均在棟日数を検討

【厚労省・地域医療構想WG】委員からは強い反対意見

 厚生労働省は10月26日の地域医療構想に関するワーキンググループ(尾形裕也座長)に、病床機能報告制度で報告する医療機能の選択において、平均在棟日数を基準とすることを提案した。ただ地域医療構想と診療報酬との関連付けが強くなるおそれがあることから、委員から強い反対意見が出た。
 また、奈良県の地域医療構想の実現に向けた協議の進め方に関し、報告があった。
 病床機能報告制度では、医療機関が病棟単位で高度急性期、急性期、回復期、慢性期のいずれかの医療機能を都道府県に報告する。どの医療機能を選ぶかは医療機関の判断だが、提供している医療と報告した医療機能に、かい離がある場合があり、厚労省は定量的な基準の検討を求めている。
 今回の提案は、入院期間に着目することにより、実態に合った報告を目指すものといえる。病床機能報告制度では、患者の病期によって異なる医療機能のうち、病棟で最も多い医療機能を報告することになっている。厚労省は2016年度の平均在棟日数を例示。それによると、高度急性期では9.5日、急性期では14.1日、回復期では58.7日、慢性期では240.5日となっており、これを目安に病棟の医療機能を判断することが考えられる。
 しかし日本医師会の委員から、「地域医療構想が診療報酬にもたれかかることになる。明確に反対する」と反対意見が出た。全日病副会長の織田正道委員は、「定量的な基準に対しては慎重な検討が必要。当面は、(明らかに実態に合っていない)外れ値をなくすことを考えるべきだ」と主張した。特定入院料などでは、特定の医療機能との関連付けがすでに示されており、さらなる関連付けが求められるおそれがある。
 医療提供の実態と報告内容がかけ離れている「外れ値」については、以下の2点を了承した。2017年度の報告で、①高度急性期または急性期と報告した病棟で、まったく急性期医療を提供していないとの疑義が生じた病棟に、その理由をきく②明らかに回復期または慢性期の患者の割合が多いのに、回復期または回復期と報告しない理由をきくこととした。
調整会議のもとで病院が意見交換会
 奈良県が地域医療構想の実現に向けた取り組みを報告した。奈良県は地域医療構想調整会議とは別に意見交換会を開いている。「調整会議ではどうしても議論が抽象的になってしまう」(奈良県担当者)ためで、現場の医療機関の代表が集まる会議などを開催した結果、地域の病院間で「顔の見える関係」を築くことの重要性が再認識されたという。
 また、病床機能報告制度に関し、急性期を「重症急性期」と「軽症急性期」に分ける奈良方式を紹介した。「重症急性期」の目安は、50床当たりの手術と救急医療が1日2件以上とした。
 急性期から「軽症急性期」を取り出し、現状の回復期病床と合わせると、2025年に不足すると計算される回復期の病床数の需要にほぼ合うことを示した。

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全日病ニュース2017年11月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 厚労省が入院基本料と医療機能の関係を例示|第896回/2017年6月

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170615/news02.html

    2017年6月15日 ... 診療報酬との関連付けを示す 厚労省は同WG に、病床機能報告制度により、報告して
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    を材料として、 ... 例えば、7対1は高度急性期と急性期、10対1は急性期と回復期、13
    対1・15対1は急性期と回復期・慢性期とした(図1)。これらと異なる機能 ... 急性期
    に関して、中小病院は大病院と比べ、◇看護職員数が少ない◇平均在棟日数が長い◇
    新規入院患者の割合がやや多い─という傾向が示された。 厚労省はこれを ...

  • [2] 厚労省 高度急性期75%、急性期78%、回復期90%を見込む|第841回 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20150215/news04.html

    2015年2月15日 ... 西澤構成員(全日病会長)は、「平均在日数が短縮していけば病床稼働率は下がる。
    一体改革シナリオでは、急性期の平均在日数は9日、稼働率は70%としている。この
    点を吟味すべきだ」と再検討を求めた。 中川構成員(日医副会長)も、「(事務局が考え
    ている)稼働率は、高度急性期、急性期、回復期とも高い」との認識を示した上で、稼働
    率は都道府県の裁量で決められないかと質した。これに対して、北波課長は「医療需要
    と必要病床数の推定方法は全国一律となる」という考え方を繰り返し強調 ...

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2017年8月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170801.pdf

    2017年8月1日 ... が、在院日数の短縮や肺炎発症率の低. 下に効果があることから、病院に歯科. 医師が
    勤務することの .... 松田晋哉・産業医科大学教授)の結果. も報告された。高度急性期
    では家庭か. らの入院が7割、退院先も家庭が6割. など、医療機能別の入棟・退棟経路
    の. 特徴を明らかにした。その上で、入棟・. 退棟経路別の患者構成で、病棟の医療.
    機能の推測が可能と示唆した。 全日病副会長の織田正道委員は、 .... 平均在日数
    みると、入棟前の場. 所が「自宅」の患者は28日で短く、「自. 院の7対1、10 ...

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