全日病ニュース

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医療経済実態調査で一般病院の収支が▲4.2%に悪化

医療経済実態調査で一般病院の収支が▲4.2%に悪化

【中医協・総会】給与費による費用増が病院経営を圧迫

 中医協の調査実施小委員会(野口晴子小委員長)は11月8日、2016年度診療報酬改定を挟む2015年度と2016年度の病院などの経営状況を調べた医療経済実態調査をまとめ、総会に報告した。
 2016年度の損益差額は一般病院で前年度より0.5ポイント悪化して▲4.2%となり1967年以来、過去3番目の低さとなった。給与費増による費用の増加が病院経営を圧迫する実態が明らかになった。政府は医療経済実態調査を参考に2018年度の改定率を決める。
 一般病院の損益差額は▲3.7%から▲4.2%に悪化した。一般病院のうち、医療法人は2.1%から1.8%に低下、国立は▲1.3%から▲1.9%に悪化、公立は▲12.8%から▲13.7%に悪化している。公民問わず、医業収益がわずかに増加しても、それより費用の増加が大きく収益が悪化する状況になっている。
 費用増の影響は給与費の寄与が大きい。
 厚生労働省は他の統計を確認した結果、1人当たり賃金の上昇と就業者数の増加の両者が影響していると考えている。
 国や自治体からの補てんがあり、赤字体質が続く国公立に対し、医療法人はわずかに黒字だが、損益状況をみるとより厳しい状況にある。
 医業収益の伸びは、国公立が0.8%であるのに対し、それ以外は0.2%である。医業・介護費用の伸びは、国公立が1.5%であるのに対し、それ以外は0.4%と、国公立ほど費用が伸ばせない状況だ。給与の伸びは、国公立が2.6%に対し、それ以外が1.7%で、こちらも差が出ている。
 DPC対象病院の損益差額は、全体で▲4.4%、国公立を除いても▲0.4%とマイナスが続いている。国公立を除いた7対1病院は▲0.4%、10対1は▲0.2%で、急性期は軒並みマイナスとなる。これに対し療養病床60%以上の一般病院の損益差額は5.7%だが、2015年度の6.4%より悪化した。
 全日病会長の猪口雄二委員は、「病院経営が悪化しているのは明らかだ。
 国公立は補助金・繰入金等に依存して何とか経営を続けている。民間病院はそれもなく、経営維持が困難になるような状況に陥っている」と強調した。
医師などの常勤要件の緩和を提案
 同日の総会では、診療報酬改定の個別事項として、医療従事者の多様な働き方支援・負担軽減をテーマとした。
 厚労省が「小児科・産婦人科・その他専門性の高い特定の領域や、夜間等の緊急対応の必要性が低い項目」において、短時間勤務の複数の医師の組み合わせを常勤医師とみなす緩和策を提案した。集中治療室の医師の勤務要件の緩和やICTを活用した場合の医師の柔軟な配置基準を検討する。看護師、管理栄養士、歯科衛生士、歯科技工士についても、常勤の必要性が高くない業務における常勤要件の緩和を図るとした。
 これに対し猪口委員は「常勤が難しい医師が増えている。人材の有効活用の観点から、働きやすい環境を提供することが必要だ」と歓迎した。また、「リハビリテーションの職員も対象にしてほしい」と述べた。ただ支払側の一部の委員は「医療の質と安全」の観点から、慎重な検討を求めた。
 そのほか、負担軽減策としての有効性が確認されている医師事務作業補助体制加算などの見直しや関連する事務の手続きの合理化も検討課題とした。(中医協の議論は2面にも掲載)

 

全日病ニュース2017年12月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 一般病院は赤字幅を拡大。国立・公立が顕著な赤字経営|第859回 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20151115/news04.html

    2015年11月15日 ... 【2015年実調の結果】. 一般病院は赤字幅を拡大。国立・公立が顕著な赤字経営. 厚生
    労働省は11月4日の中医協・調査実施小委員会に2015年の医療経済実態調査の結果
    を報告した。 それによると、一般病院は、前々年度(2013年4月~14年3月末の間に
    会計期間を終えた事業年度)から前年度(同14年4月~15年3月末)にかけて医業収益
    を1.5%伸ばしたものの、介護収益が0.3%落ち込んだ上に医業・介護費用が3.0%
    膨らんだため、損益差額の率は-1.7%から-3.1%へと大きく増加。14年改定 ...

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2013年11月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2013/131115.pdf

    施設改修費用、耐震化費用等、医療機. 関の資金ニーズを充足するためのツール.
    としてのヘルスケ .... 前改定を反映、急性期系の国公立が収支を大きく改善. 厚労省は
    11月6日の中医協・調査実施. 小委員会 ... 総損益差額も、国立病院は−8.3%か. ら0.4
    %へと著しく好転、公立病院も. 1.8%から2.7%へと改善をみせたが、医. 療法人は3.8%
    で変わらない横ばい状況. を示している。 □診療報酬評価別の損益差額推移. □病床
    規模別の損益差額推移(一般病院). 11年度 −0.9% −1.1% −1.6% −1.0% 4.6% −0.2
    % 6.3%.

  • [3] 第721回/2009年11月15日号

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2009/091115.pdf

    は平均1,550万円だったが、公立病院で. は同1,326万円と100万円以上の差がつ. いて
    いる。 第17回医療経済実態調査報告(2009年6月実施). 実調は病院(医科)について
    は1,619施. 設(抽出率1/5)を対象に6月に実施、917. 施設(有効回答率56.6%)から
    有効回答. を得た。 別に、特定機能病院およびこども病. 院は全施設を調査客体にした。
    □09年6月分の集計結果 単位は%(構成比率). ○一般病院開設者別の損益状況(
    介護収益が2%未満). 国 立. 2.1. 損益差額(収支差額). 公 立. −15.5. 公 的. −1.3.
    医療法人.

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