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日病協が診療報酬改定要望書を厚生労働省に提出

日病協が診療報酬改定要望書を厚生労働省に提出

5月の要望に続く第2弾 すべての病院の入院基本料の大幅引上げを求める

 日本病院団体協議会(原澤茂議長)は11月9日、加盟14団体の総意として、2018年度診療報酬改定に係る要望書を厚生労働省の鈴木俊彦保険局長に提出した(1面参照)。要望は、5月9日に続く第2弾。病院の経営状況は急激に悪化しているとし、すべての病院の入院基本料の大幅引上げが不可欠と訴えている。要望書の全文は次の通り。
診療報酬改定に係る要望書(第2回)
 平成30 年度(2018年度)は診療報酬と介護報酬の同時改定であるが、医療の現場に於いても、医師・看護師に限らず様々な職種が協働して診療にあたることが求められている一方、医師の働き方改革への早急な対応が大きな課題となってきている。しかし、近年の医療費抑制政策と人件費の高騰等により、多くの病院経営調査においても、大小を問わず多くの病院の経営状況は急激に悪化している実態が報告されている。
 日本病院団体協議会としては、このような状況を鑑み、まず全ての病院の病棟入院基本料の大幅引き上げが不可欠と考える。更に、中央社会保険医療協議会でのこれまでの議論を踏まえ、前回(平成29年5月9日)の要望内容を基本として、中長期的な視野に立ち、より安全安心かつアウトカム重視で持続可能な医療提供体制の実現を目指して、下記の全7項目を要望する。

1.全ての入院基本料の引き上げ

 安全安心な地域医療を継続していくためにも、全ての病院の病棟入院基本料の大幅な引き上げを要望する。
2.重症度、医療・看護必要度と多職種配置を主軸とした中長期的な入院基本料評価基準の抜本的見直しと、病棟群単位届出制度の改善
 現行の重症度、医療・看護必要度について、診療報酬請求区分(DPCデータ)を使った該当患者割合の分布や相関などを詳しく検証することにより、重症度、医療・看護必要度と多職種配置を基本にした新たな入院基本料の評価基準を創設し、より良質の医療が効率よく提供出来るよう、中長期的な視点で抜本的な見直しを要望する。
 ただし次回改定では、現行の重症度、医療・看護必要度の拙速な見直しを避けることを要望する。
 また、病棟群単位の届出制度については、より利用しやすい制度に改善することに加え、7対1入院基本料と10対1入院基本料の評価の差がおおきいことを踏まえ、その間を補完する段階的評価の創設を要望する。
3.地域包括ケア病棟における在宅等からの受け入れ機能の評価
 地域包括ケア病棟には主として、急性期病棟からの受け入れ、在宅・生活復帰支援、緊急時の在宅等からの受け入れの3機能があるが、特に在宅等からの受け入れについては、患者状態、検査等の実施など、より医療資源を投入する必要がある状況を鑑み、他の機能より手厚い評価を要望する。
 一方で、自院他病棟からの受け入れを主とする当該病棟の是非については、地域における3機能の組み合わせによる地域包括ケア病棟の有用性を期待し普及させる観点から、前段の評価とは別に引き続き現状の3機能を維持することを要望する。
4.療養病床の医療区分による患者評価制度の中長期的抜本的な見直しと、DPCデータ加算提出の促進、25:1療養病床の要件緩和
 療養病床に関して、急性期と同様中長期的には、患者の重症度や医療必要度と多職種の人員配置、更には療養環境の組み合わせで、より効率的かつ良質な医療提供が出来るよう医療区分による患者評価制度の抜本的な見直しを要望する。
 また、療養病床のデータ提出を促進するためにも、小規模病院が多い実態に配慮しつつ、提出項目の簡素化や新たな慢性期指標の導入を要望する。
 更に、25対1病棟については、前回改定から要件化された医療区分2・3割合5割以上の要件取得が困難な現状を考慮し、今後6年以上の当該病棟存続と共に、当該割合については、一部緩和した段階的基準の導入を要望する。
5.精神科医療費の増額と疾患特性を踏まえた在宅移行の在り方の見直し
 精神科医療については、国がその医療政策を担うべき医療であり、長年に渡る精神科医療費抑制策を根本から撤回すべきである。特に平成29年2月8日に示された精神障害者にも対応したアウトリーチを含めた地域包括支援システムの構築を含めた「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会報告書」を推進できるよう診療報酬で早急に評価されるべきである。
 また、精神病床においても在宅復帰率のアウトカム指標が設定されているが、頻回再発例や長期入院難治例の存在、生活能力障害や家族機能の脆弱さなど精神疾患の特性を考慮して大幅な見直しを要望する。
6.特定入院料算定病棟における包括対象範囲の見直し
 昨今の高額薬剤の動向や病床機能の分化・連携の促進の観点から、薬剤が包括化された特定入院料を算定している病棟において、患者の生命維持や治療に不可欠かつ代替困難な高額薬剤等に関しては、一定の条件のもと、包括対象から除外することを要望する。
7.診療報酬体系の簡素化と医療ICTの推進
 年々複雑化する診療報酬体系について、抜本的な簡素化を要望する。
 また、更なるICT推進による重症度、医療・看護必要度や医療区分等の情報入力の省力化と、システム導入・維持・更新等に伴う診療報酬上の評価を要望する。 以上

 

全日病ニュース2017年12月1日号 HTML版

 

 

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