全日病ニュース

地域での診療実績を管理者要件にすることで賛否

【厚労省・医師需給分科会】認定制度を設ける方向性では一致

　厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会（片峰茂座長）は11月８日、医師偏在対策として、地域医療への従事を医療機関の管理者要件とすることの是非をめぐり議論したが、賛否が分かれた。医師が少ない地域の診療に従事する医師を、厚労省が認定する仕組みを創設する方向性では、委員の意見は概ね一致した。
　厚労省が、医師少数区域で一定期間以上の勤務経験のある医師を認定する仕組みを提案した。その上で、認定を受けるモチベーションを上げるため、「認定医師であること」を広告できる事項にするとした。さらに、「地域医療支援病院等一定の病院の管理者としての認定医師を評価」することを論点として示した。
　また、外来医療に関して、診療所の開設が都市部に偏っているなど現状を示した上で、地域ごとの「医師偏在の度合い」による客観的な指標を作成することも踏まえ、経営判断を行うに当たっての有益な情報を、開業を検討する医療関係者に伝える仕組みを検討する考えを示した。
　その際に、伝える情報の内容については、地域の医療関係者が事前に協議できるようにする。医療関係者による協議では、「地域における救急医療提供体制の構築、グループ診療の推進、医療設備・機器等の共同利用等の外来医療機関間での機能分化・連携の方針」も話し合うべきと指摘した。
　委員からは、地域医療への従事を医療機関の管理者要件とすることをめぐり様々な意見が出た。地域医療支援病院の管理者要件とすることにも反対意見が出たが、診療所を含むことについて、賛否が分かれた。
　全日病副会長の神野正博委員は、「強力な医師偏在対策が必要な状況になっている。地域医療での診療経験を管理者要件とすることは、日医医学部長病院会議の合意事項のはずだ。この点を含めて、都道府県の医療審議会で、病床規制と同様に開業の是非を判断するのは『あり』だと思う。一定の規制がないと有効な医師偏在対策にならない」と訴えた。
　一方、日本医師会の委員は、「診療所の開業の制限は相当慎重に検討しなければならない問題だ」と強調した。
　なお、厚労省は診療所の開設を規制する場合に解決しなければならない課題として、◇自由開業制との関係◇医療法の性格との整合性◇新規参入と医療の質の関係◇新制度導入前の駆け込み開設─を指摘し、これらを解決しなければ、導入は困難と説明した。ただ病院・有床診療所に対しては、基準病床数制度や地域医療構想での都道府県知事の権限など一定の規制がある。
　そのほか、同日の分科会では、２カ所の病院・診療所の開設者になれる特例を法令に位置づけることで明確化し、その理由に明示することが提案され、委員の了承を得た。現行では、都道府県知事の許可を得る理由として、「無医地区など医療施設が少ない地区に開設する病院等の兼任管理」などを医療法のＱ＆Ａで示すにとどめている。