全日病ニュース

全日病ニュース

7対1、10対1の評価体系の大幅な変更を検討

7対1、10対1の評価体系の大幅な変更を検討

【中医協・総会】基本部分と診療実績に応じた加算を組み合わせ

 厚生労働省は11月24日の中医協総会(田辺国昭会長)に、一般病棟入院基本料を大幅に見直す提案を行った。
  現行の7対1入院基本料と10対1に、看護職員等に応じた基本部分と診療実績に応じた段階的な評価部分を組み合わせた評価体系を検討する。その結果、7対1と10対1の間に中間的な評価が設けられる。委員から強い異論はなかったが、具体的な基準が示されないと賛否を明らかにできないとする意見が大勢だった。
 中医協は次期診療報酬改定に向けた議論を加速させている。11月29日には性同一性障害の手術の保険適用など技術的事項を審議。12月1日はICTを活用した遠隔診療の新たな評価や対面要件の緩和、12月6日は再び急性期入院医療をテーマとして議論した。
 また、11月22日の薬価専門部会では、薬価制度の抜本改革案が示された。
基準値は現行どおりを主張
 一般病棟入院基本料について厚労省は、高齢化・人口減少社会の中で「より高い医療資源を投入する医療ニーズは減少し、中程度の医療資源を投入する医療ニーズが増加する」との基本認識を示した上で、医療ニーズが低い患者に多くの医療資源を投入するのは「非効率」との考えを示した。
 現行の7対1入院基本料と10対1をみると、7対1は1,591点であるのに対し、10対1は最も高い加算を取っても1,387点で、その差は大きい。200床の病院で、この差を試算すると、年間約1.2億円程度と推計され、病院経営に与える影響は非常に大きい。このことが、7対1からの転換をとどまらせ、医療ニーズに対応した「弾力的で円滑な選択・変更を困難にしている」と厚労省は認識している。
 新たな報酬体系のイメージは次のようなものだ。看護職員等に応じた基本部分が現行の10対1に相当し、それに診療実績に応じた段階的な評価部分が加算され、段階的な評価の最も高い部分が、現行の7対1水準となる。最も高い部分では、7対1の看護職員配置をそのまま適用するとしている。10対1からの段階的な加算になるので、現行の7対1と10対1の水準の間に中間的な評価が設けられる。
 このような評価体系に対し、強い異論はなかった。しかし具体的な基準が示されないと賛否は示せないという意見が大勢だった。特に、診療実績に応じた段階的な評価部分は、「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)やDPC データのEF 統合ファイルでの測定が想定される。その基準値がどう設定されるかが重要となる。全日病会長の猪口雄二委員は、「評価体系が変わるのに病院が対応するのは大変なこと。その上に基準値が動けば現場は混乱する」とし、7対1水準の評価が得られる基準値は現行どおりにすべきと主張した。
 厚労省は今回、患者の急性期医療の必要性を、看護必要度ではなく、EF統合ファイルで判定することが可能であるとのデータを示している。希望する病院は来年4月からDPC データを活用することが可能になる見通しだ。
 その際には、看護必要度の該当患者割合25%に相当する基準値を設定する必要がある。試算では、看護必要度の該当患者割合の平均は28.8%、DPCデータでは23.3%となっている。
 ただし、この試算は「入院医療等の調査・評価分科会」に示されたものから変更があった。当初は24.8%だったが、単純ミスを修正し、両者のばらつきがより小さくなるよう追加分析を行った結果だ。しかし追加分析では、看護必要度のA項目「救急搬送後の入院」が削除された。DPC データでの該当が厳しくなる可能性があり、猪口委員は「反対」を表明した。
ICU、地域包括ケア病棟の見直し
 特定集中治療室管理料等(ICU 等)については、◇救命救急入院料1および3、脳卒中ハイケアユニット管理料も「重症度、医療・看護必要度」の測定を要件とする◇特定集中治療室管理料にアウトカム評価として入院時の患者の生理学的スコアの記載を求める◇特定集中治療室で重症患者に対するケアに関する研修を受けた看護師の配置を特定集中治療室管理料1・2の要件とする─などが論点になった。
 猪口委員は、研修を受けた看護師を要件とすることに対し、「9割以上の病院で配置されているというが、逆にいえば1割が取れない」と反対した。
 地域包括ケア病棟入院料等については、「自院・他院の急性期病棟からの受入れ患者(ポストアキュート)」と「自宅等からの受入れ患者(サブアキュート)」で評価を分けることで概ね合意した。「救急・在宅等支援病床初期加算」を見直す考えだ。
 四病院団体協議会と日本医師会が提言した「地域包括ケア病棟のあり方」に沿った対応も進める。地域の医療・介護連携の支援病院として、地域包括ケア病棟入院料等の要件に「訪問系サービスの提供」を選択肢の一つに設けることや、在宅医療や介護サービスの実績を加味した評価などを検討する。
 在宅復帰率については、◇自院の他病棟への転棟患者は評価対象(分子)に含めない◇在宅復帰機能強化加算なしでも介護老人保健施設などを評価対象(分子)に含める◇見直しの影響を検証できるよう自宅等への退院患者と他医療機関への退院患者を区別した内容で報告を求める─ことを検討する。
 12月1日は、ICT を活用した遠隔診療の新たな評価の具体案が示されたほか、医療・介護従事者の対面でカンファレンスを求める要件を緩和する。緩和対象の診療報酬項目としては、感染防止対策加算や退院支援加算1、退院時共同指導料1・2などがある。
 12月6日は、急性期入院医療を再び議論。厚労省が看護必要度の項目変更案を示した。A項目の救急搬送後入院(2日間)を、救急医療管理加算の算定患者(2日間)に置き換えるなど3項目を見直す。これにより、現行25%の該当患者割合の基準を引き上げることの是非が議論の焦点になりそうだ。
薬価制度の抜本改革を議論
 11月22日の薬価専門部会では、薬価制度の抜本改革案が議論された。長期収載品の薬価を最終的に後発医薬品に合わせ、後発品への置換えを加速させるとともに、革新的新薬創出等促進制度を創設し、指標の達成度・充足度に応じて加算にメリハリをつけるなどの対応を図る。しかし11月29日の日米欧の製薬企業へのヒアリングでは、特に革新的新薬創出等促進制度に対し「評価が不十分」との意見があった。

 

全日病ニュース2017年12月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 1割の病院で転換。新たな基準に高い実績で応える7対1病院

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20150615/news07.html

    2015年6月15日 ... 1割の病院で転換。新たな基準に高い実績で応える7対1病院. 【2014年度入院調査の
    結果】 地域包括ケア病棟(病床)は国・公立・公的医療機関による届出が1/4を占める.
    厚生労働省の医療課は5月29日の診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価
    分科会」に「2014年度入院医療等における実態調査の結果」(速報)を報告した。 同
    調査は、14年度改定後の、①一般病棟7対1入院基本料算定病棟の変化、②地域包括
    ケア病棟入院料(入院医療管理料)算定病棟・病床の状況、③療養病棟入院 ...

  • [2] 特定除外に該当する入院患者実態 調査結果

    https://www.ajha.or.jp/topics/4byou/pdf/131007_4.pdf

    2013年9月18日 ... 更。脳卒中の後遺症の患者及び認知症の患者を特定除外患者から除外。 2010. 後期
    高齢者に係る診療報酬については廃止するか、「後期高齢者」という名称. を削除する
    ことになり、全年齢を対象とする「特定入院料」に改組。 2012. 一般病棟入院基本料13
    対1、15対1の特定除外制度を廃止。 改定内容. 2 「長期入院患者に係る診療報酬
    について」(2009 年 12 月 18 日, 中央社会保険医療協議会 診療報酬基. 本問題小
    委員会資料)から作成。http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/dl/s1218-k3d.pdf ...

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年10月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/161015.pdf

    2016年10月15日 ... とがうかがえる」とコメントしている。 薬剤費の伸びが医療費に与える懸念を共有する. 2
    割を超える病院が7対1入院基本料を変更、病棟群単位の利用は1割に満たず. 中医協
    総会. 2015年度の伸びの主因は高額薬剤. 日病協が7対1入院基本料の動向調査を
    発表. 表1 変更先(多かったもの);病院数. 20 ~. 199床. 200 ~. 399床. 400床. 以上.
    合計. ① 一部の病棟を「地域包括ケア病棟入院料」に. 21. 64. 27. 112. ② 病棟群単位
    の届出を利用して. 3. 9. 3. 15. ③ 全ての病棟を「一般病棟 10対1入院 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。