全日病ニュース

全日病ニュース

猪口会長が入院医療見直しや人員要件緩和を評価

猪口会長が入院医療見直しや人員要件緩和を評価

【2018年度診療報酬改定】四病協・日医が中医協答申後に合同会見を行う

 四病院団体協議会は2月7日、中医協が2018年度診療報酬改定を加藤勝信厚生労働大臣に答申したことを受け、日本医師会と合同で会見を行った。全日病の猪口雄二会長は、中医協委員の立場から個別項目についてコメントし、入院基本料の評価体系の見直しや医療従事者の常勤・専従要件の緩和などを評価するとともに、現場の作業量が反映される評価体系とするために、「次期改定までにデータを蓄積し研究する必要がある」と述べた。
地域医療構想に寄り添う改定
 会見は、日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会の三師会と合同で行われた。冒頭、日本医師会の横倉義武会長が全体の評価について考えを述べた。横倉会長は、今回改定を100点満点で採点した場合の評価を問われ、「本体改定率0.55%に対しては60点をつけた。その限られた財源の中でよい配分をしたと理解している。その意味では60点より少し上の点数」と答えた。
 改定全体の考え方としては、「2025年に向けた医療提供体制を構築するために、都道府県では地域医療構想が実行に移されており、改定はそれに寄り添うものとして行われる。地域包括ケアシステムの構築では、かかりつけ医を中心にした切れ目のない医療・介護体制を確保する必要がある。厳しい財政状況だが、超高齢社会に対応するために、必要な財源を医療に配分することが不可欠だ」と訴えた。
 改定率は政府の歳出抑制目標に従った予算編成の中で決定された。一方、今夏に閣議決定する経済財政運営の「骨太方針2018」では、新たな歳出抑制目標が議論される。横倉会長は、「社会保障が過度に抑制されることがあってはならない」と警戒感を示した。
急性期医療の評価は今後の議論重要
 続いて、四病協の代表が感想を述べた。猪口会長は、中医協委員であることから、全体としての評価よりも、個別改定項目に関して発言した。
 最初に、急性期入院医療の評価体系の見直しの方向性を評価した。「7対1入院基本料と10対1の間ができて、7対1から10対1に移るときの落差が大きかったことを考えると、よい方向だと思う。『重症度、医療・看護必要度』のDPCの診療実績データによる判定も、人手からICTの活用の観点で評価できる」と述べた。
 その上で、「しかし、まだまだ過渡期の段階であり、あるべき姿の方向性も示されている。それに向けて、十分に検証しデータを蓄積し研究した上で、できれば次期改定までに、現場の作業量がきちんと反映される『重症度、医療・看護必要度』にする必要がある」と発言。急性期入院医療の評価に向けて今後の議論が重要との見解を示した。
 地域包括ケア病棟に200床以上の病院が算定できない入院料等が新設されたことについては、「自宅等からの入院や介護との連携強化、地域で求められる多様な役割・機能が評価されることはよい方向性だ」と述べた。一方で、厳しい査定が行われていると指摘される救急医療管理加算の要件見直しがなかったことに対し、「次期改定までにデータを蓄積して、適切な評価が行われるよう見直してほしい」と要望した。
 医療従事者の負担軽減と働き方改革の推進が大きなテーマとなり、医療従事者の常勤・専従要件の緩和などが行われたことに対しては、「大いに評価する」と強調した。「今後の人口減、若年層の減少を踏まえれば、人材の有効活用の観点で、病院の運営を考えなければならなくなる。その方向性で診療報酬を見直していくべき」と、引き続きの課題とすることを求めた。
 日本病院会の万代恭嗣委員は、急性期入院医療の評価体系の見直しについて、「方向性は日病として常々議論してきたものと同じ。日本病院団体協議会で要望したものとも一致する」と評価した上で、猪口会長と同様に、「今後データを蓄積し、入院医療の現場にどのような影響をもたらしているかを検証し、早急に公開すべき」と述べた。
 また、「病院がどの評価の区分を選択しても、経営が維持される診療報酬を目指すべきだ」と強調した。
 日本医療法人協会の加納繁照会長は、「今回改定が最終的に経営に与える影響」を懸念した。福祉医療機構の病院経営状況分析によると、前回改定のあった2016年の一般病院の医業収益率は0.3%となり、2014年改定後より下がったことを指摘。2018年でさらに悪化することを心配した。個別項目に関しては、「努力により経営改善できる要素はあり努力したいが、急性期の一般病棟に厳しい改定であることが垣間みえる」と述べた。
 日精協の長瀬輝諠委員も、医療経済実態調査の数字を引いて民間の精神科病院の厳しさを訴えた。特に、給与比率が65%を超えて、経営を圧迫しているとした。改定内容に関しては、長期入院患者の地域移行や生活支援で様々な改定があり、影響について今後検証する考えを示した。精神病薬のクロザピンが入院料の包括から外れたことを指摘し、「非常に使いにくかった状況が改善され、評価できる」と述べた。