全日病ニュース

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医療界の生産性向上の取組みを神野副会長が説明

医療界の生産性向上の取組みを神野副会長が説明

【生産性向上国民運動推進協議会】恵寿総合病院の好事例も紹介

 政府は2月15日、オールジャパンで生産性向上を高めるため、「生産性向上国民運動推進協議会」を開催した。
 安倍首相出席の下、医療界からは日本医師会の横倉義武会長と全日病の神野正博副会長が参加。神野副会長は、生産性向上を目指す上での医療界の特殊性を説明するとともに恵寿総合病院(石川県七尾市)の取組みを紹介した。
 同協議会は、働き方改革とともに生産性向上と人づくり改革を一体的に進めるため、各業界の先進的な取組みを聴取し、全国展開することを目指すもの。安倍首相は冒頭から終了まで出席。
 挨拶で、「国民生活に最も密着している皆さんが生産性の向上に成功すれば、間違いなく日本全国津々浦々でどんどん成長していく。そういうチャンスを得ることができる」と、先進事例の広がりに期待を示した。
 横倉会長は「科学技術の発展は医療現場の効率化、働き方の改善につながる。医療の生産性を上げ、我が国の社会経済に貢献したい」と述べた。
 神野副会長は、医療界における生産性向上の取組みとして、医療機能の分化・連携やチーム医療の推進、ICTの活用などをあげた。その上で、医師事務作業補助者のデータを示し、医師以外の職種で可能な業務がどこまで代替されているかは、病院でばらつきがあり、「横展開の余地がある」と説明した。
 一方、医療業界の特殊事情を指摘。「医療はその中心が公定価格による保険診療収益であり、単純な労働力の投入だけでは生産性の変化が見えづらい。
 また、病院等における医療従事者の配置数には一定の基準がある」と述べ、生産性向上の取組みと制度との間に齟齬が生じる場合があるとした。
 その上で、勤務環境改善策が当面の課題であると強調し、◇長時間労働を是正する経営管理◇タスクシフティングなどの普及◇ICTの活用による診療業務の効率化─が重要になるとした。
 神野副会長は、生産性向上の事例として、恵寿総合病院の「ユニバーサル外来」を紹介した。一般的な病院では、診察室は各診療科にある。「ユニバーサル外来」では、電子カルテを持ち運び可能(クラウド化)にすることで、「どの診療科でも使える診察室」を実現した。
 これにより、混雑状況に応じて柔軟に診察室を割り当てられ、患者の誘導も容易になった。患者の受診先が特定されず、プライバシーの保護にもなる。
 また、受付を統一したため、複数診療科に精通する職員が育ち、受付事務の人員を半減し、他の業務に回すことができたという。これらは2017年度のグッドデザイン賞につながった。