全日病ニュース

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オンライン診療でガイドラインを作成

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【厚労省・情報通信機器診療検討会】医師対患者の外来・在宅診療で活用

 厚生労働省の「情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会」(山本隆一座長)は2月8日に初会合を開き、情報通信機器を用いた診療に関するルール整備に向けた論点を大筋で了承した。年度内にガイドラインをまとめる。ガイドラインは医師対患者の外来・在宅診療を対象とし、それを「オンライン診療」と呼ぶことでも合意を得た。情報通信機器の急速な発展に伴うオンライン診療の拡大に備える。
 医師法第20条は、医師が「自ら診察しないで治療をすること」を禁止している。厚労省は、情報通信機器が部分的に対面診療を代替できるようになるのに応じて、通知などでこの条文の解釈を変えてきた。例えば、2015年の事務連絡では、離島・へき地での遠隔診療だけを認めるそれまでの限定を外した。2017年の通知では、一定の条件の下であれば、対面診療を行わなくても医師法違反にならない考えを示した。
 こうした解釈の変更は、法令に違反しないことを示すものであり、情報通信機器を用いて適切な診療を行うためのルールは未整備だった。今回、政府の「新しい経済政策パッケージ」(2017年12月8日閣議決定)で、年度内に遠隔診療のガイドラインの整備が求められたことを踏まえ、検討会を開催することになった。
 一方、2018年度診療報酬改定では、オンライン診療料(70点)やオンライン医学管理料(100点)を新設し、報酬面の対応を行った。診療報酬では、対面診療を原則とし、対面診療と対面診療の間の一定期間内のオンライン診療を評価する取扱いとなった。ガイドラインが整備されれば、診療報酬の取扱いも、それに従うことになるが、診療報酬の要件はガイドラインよりも狭まると考えられる。
 初会合で厚労省は①遠隔診療の定義と名称②基本理念と倫理指針③ガイドラインの項目─を論点として示した。
 これらに関して、「情報通信機器を用いた診療に関するルール整備に向けた研究報告」を基に、議論を行った。
 ガイドラインの対象は、医師対患者の「外来・在宅診療」にすることで合意した。名称については、「遠隔診療」とすると、距離が著しく離れているという印象を与えるが、今後の広がりを想定すると、必ずしもそうではないため、「オンライン診療」という名称を用いる。また、「診療」ではない「遠隔医療相談」との違いについて、ガイドラインで一定の基準を示すことが必要とされた。
 基本理念と倫理指針では、患者の求めがある場合に実施することの徹底や医療の質を担保するオンライン診療であることの必要性などが指摘された。
 ガイドラインの項目としては、「適用の基準」と「提供体制」がある。
 「適用の基準」では、オンライン診療は医師・患者双方が事前に取り決めた診療計画に沿って、対面診療と適切に組み合わせるべきとの意見が多かった。
 情報通信機器の発展を踏まえれば、対面診療を完全に代替でき、初診でも活用できる場合を見込むべきとの意見もあったが、「その都度ガイドラインを見直せばよい」ということで落ち着いた。
 また、急変時の対応はオンライン診療で安全性を担保できないので除外すべきとの指摘があったが、在宅医療で急変時の対応を含め診療計画を立てている場合は除外しない整理になった。
 「提供体制」では、場所について医師は「必ずしも医療機関内で診療を行う必要はないが、最低限の体制確保が必要」、患者は「患者居宅等、日常生活や社会生活を営む場所が望ましい」とされた。情報通信機器を使う環境や端末に関しても、一定のルールを設ける方向だ。プライバシー保護のためのセキュリティについて、内部監査・外部監査が必要との意見が出ている。
 これらの論点を検討会は大筋で了承。これを受け、厚労省は次回会合でガイドライン案を示す見込みだ。