全日病ニュース

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医師の働き方改革の論点整理に反発や懸念相次ぐ

医師の働き方改革の論点整理に反発や懸念相次ぐ

【厚労省・医療部会】猪口会長は医師偏在などを含めた対応求める

 厚生労働省は2月28日の社会保障審議会・医療部会(永井良三部会長)に「医師の働き方改革に関する検討会」がまとめた中間論点整理を報告した。委員からは、医師の労働時間を減らすことが目的化しているとして反発する意見が相次いだ。全日病会長の猪口雄二委員は、「様々な問題との関わりがある。
 特に、医師偏在対策や専門医養成のあり方も網羅して対応する必要がある」と強調した。
 働き方改革関連法案が成立すれば、罰則付きで時間外労働の上限規制が設定され、労使協定にも適用される。医師に対しては、別途議論することが必要とされ、検討会は来年度中に医師の時間外労働規制のあり方について、結論を出すことになっている。
 中間論点整理では、医療提供体制を損なわない改革が必要としつつ、医師は他業種と比較して抜きん出て労働時間が長いことから、医師の健康や医療の質・安全の確保の観点から、長時間労働の是正を求めている。労働時間の実態把握の論点では、医師の労働時間のうち「自己研鑽」や「宿日直」の取扱いが課題になるほか、裁量労働制が医師に適用できない理由の一つである「応召義務」のあり方も検討課題だ。
 検討会は、論点整理とあわせて現状でも取り組むことができる緊急対策を6項目に整理。医療機関の取組みを求めた。他職種への業務移管を積極的に進めるほか、複数主治医制や当直明け勤務負担の緩和などを盛り込んでいる。
 これらの内容に関し、委員から様々な意見が出た。特に病院関係の委員から、上限規制を設けて医師の労働時間を減らしても、様々な取り組みを行えば、医療提供体制への影響は限定的になるとの見込みに反発する意見があったほか、医療現場の実態を踏まえていないことへの懸念が相次いだ。
 「長時間労働をしている医師は被害者とみなす論点整理だが、長時間労働でも充実している医師は多い」、「労働時間とストレスは必ずしも相関しない」などの意見があった。一方で、「古い医師はそう考えるが若い医師が何を願っているかの視点も重要」との指摘もあった。「医師の労働時間短縮が目的化していると感じる。拙速に議論を進めるべきではない」として、来年度中の結論は困難との意見もあった。
猪口委員も拙速な議論を避けることを求めた。その上で、「労働時間短縮の取組みにより、地域の救急、産科、小児科、へき地医療などのパフォーマンスを低下させかねない。様々な問題が絡まりあっており、医師偏在対策や専門医養成のあり方も網羅した対応をまとめる必要がある」と述べた。
新たな広告規制は厳格な運用求める
 6月から施行される医療機関の新たな広告規制について厚労省から報告を受け、議論した。省令案を含め規制の枠組みは概ね了解を得たものの、今後の運用に対して厳しい指摘が相次いだ。
 今回の対応は、美容医療サービスに関する消費者トラブルの相談件数が増加していることを踏まえ、医療機関のウェブサイトを「医療法上の広告規制」の対象とした上で、一部を例外とし、虚偽や誇大の基準に該当しなければ、幅広い事項を広告できる。
 厚労省は「(治療に関連しない)『感謝の声』などはホームページに掲載できる」と説明したが、委員から「治療に全く関係しない『感謝の声』があるのか」「『感謝の声』をたくさん掲載している医療機関と全く掲載していない医療機関を比べたら、住民はどう思うか。
 一律に禁止するべき」といった意見が出た。
 また、成年被後見人等の欠格条項の見直しに伴う医療法・医師法等の改正事項を了承した。成年被後見人であることを理由に不当に差別されないようにするためのもので、医師や医療法人の役員・評議員になれない条件として、成年被後見人であることの条項は削除し、適否を個別に判断するとした。

 

全日病ニュース2018年3月15日号 HTML版

 

 

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