全日病ニュース

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人生の最終段階の医療ガイドライン改訂を了承

人生の最終段階の医療ガイドライン改訂を了承

【厚労省・人生の最終段階医療検討会】2017年度の意識調査の結果も報告

 厚生労働省の「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」(樋口範雄座長)は2月23日、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂案を概ね了承した。入院医療だけでなく、在宅医療や介護の現場で活用できるよう見直すとともに、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の考え方を取り入れた。2018年度から診療報酬の評価でも使われることから、年度内に改訂し、内容を周知する。
 「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は2007年に作成された。その後、2015年に「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」に名称変更されたが、実質的には10年ぶりの見直し。近年、諸外国でACPが普及していることを踏まえ、本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセスであるACP の考えを盛り込んだ。
 ガイドラインの表題では、「医療」を「医療・ケア」に変えた。当初は入院医療での活用を主に想定したものだったが、今回は、在宅医療や介護施設での活用も想定した内容となっている。
 ガイドラインは、本人の意思確認ができない場合に備え、本人の意思を推定する手続きを整理している。意思が確認できなければ、家族やそれ以外の者(親しい友人など複数人存在することも想定)が推定し、医療・ケアチームと合意形成を図る。
 全日病常任理事の木村厚委員は、「病院としては、誰が患者の意思を代弁しているのかを知る必要があり、医療代理人を明確化してほしい」と求めた。
 これに対し、「医療代理人に法的な位置づけはなく、そもそも明確化できない概念だ」との意見があった。厚労省も明確化に難色を示した。
 また、従来のガイドラインと同様に、生命を短縮させる意図を持つ積極的安楽死は対象ではないと明記している。
意識調査の結果を公表
 厚労省は同日、「人生の最終段階における医療に関する意識調査」の結果を報告した。調査は、1992年以降5年ごとに実施。今回は2017年度調査の結果をまとめた。
 人生の最終段階の医療・療養の方針に関する患者・家族等と施設関係者との話し合いの状況をみると、「十分に行っている」との回答は、病院が32.3%、診療所が10.9%、介護老人福祉施設が51.5%、介護老人保健施設が48.0%だった。これに「一応行われている」を加えると、病院が87.5%、診療所が35.2%、介護老人福祉施設が94.1%、介護老人保健施設が89.4%となる。
 ACPの実践状況では、「実践している」との回答が、病院で23.6%、診療所で13.3%、介護老人福祉施設で38.7%、介護老人保健施設で32.4%となっている。
 どのガイドラインを使っているかについては、厚労省のものという回答が、病院で51.5%、診療所で13.9%、介護老人福祉施設で37.9%、介護老人保健施設で35.4%となっており、診療所を除けば最も普及している。日本医師会のガイドラインは、病院で35.5%、診療所で16.0%、介護老人福祉施設で11.8%、介護老人保健施設で15.5%だった。全日病のガイドラインは、病院で10.6%、診療所で0.3%、介護老人福祉施設で1.2%、介護老人保健施設で1.6%となっている。
 一方、医師の24.3%、看護師の29.1%、介護職員の34.3%が「ガイドラインを知らない」と答えている。ガイドラインや人生の最終段階の医療に関する普及・啓発が課題であり、同検討会は近く報告書をまとめる。同日は、報告書の論点を議論し、大筋で了解を得た。
 その中で、ガイドライン等の普及・啓発が「決して医療費削減、営利目的等のために行うべきものではないこと」を留意事項として明記することが論点になった。木村委員は、「あえて明記する必要はない」と主張したが、賛否両論があり、今後の調整となった。

 

全日病ニュース2018年3月15日号 HTML版

 

 

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  • [1] 人生の最終段階の医療ガイドラインを改訂|第910回/2018年2月1日 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180201/news05.html

    2018年2月1日 ... 人生の最終段階の医療ガイドライン改訂. 【厚労省・人生の最終段階の医療検討会】
    ACPの考え取り入れ施設・在宅も想定. 「人生の最終段階における医療の普及・啓発の
    在り方に関する検討会」(樋口範雄座長)は1月17日、厚生労働省が提示した「人生の
    最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂案を議論した。改訂
    案に対するパブリックコメントを2月中に募集するが、同日の委員の意見を反映させるか
    は改めて調整する。 現行のガイドラインは、主に病院を想定したもの ...

  • [2] 院内感染対策のための指針案の送付について

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2015/150108_2.pdf

    2015年1月5日 ... 厚生労働省医政局地域医療計画課. 院内感染対策のための ... 町 中小病院 E 診療所
    を対象としたガイドライン及びマニュアルと. アウトブレイク早期特定策の改訂. 町一1. “
    中小病院/診療所を対象にした医療関連感染制御策指針(ガイドライン)2009”. 、. “小
    規模病院/有床診療所施設内指針(マニュアル) 2009ー単純かつ効果的マニュ. アル
    の 1伊ト”、“無床診療所 ... イドライン) 2009”に関して、院内感刺繍中央会議の提言。
    011年2月8日付)および厚生労働省から発出され. た各種通知などに準拠 ...

  • [3] ウェブサイトの広告規制で省令・ガイドライン案を了承|第908回/2017 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20171215/news08.html

    2017年12月15日 ... ウェブサイトの広告規制で省令・ガイドライン案を了承. 【厚労省医療情報の提供内容
    等に関する検討会】患者の体験談とビフォー・アフターの写真は原則禁止. 厚生労働省
    の「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(桐野髙明座長)は11月29日に
    会合を開き、医療機関のウェブサイトに対する広告規制の施行に向けて、省令および
    ガイドライン案を検討。文言等の修正を座長に一任した上で、パブリックコメントの手続き
    に入ることを了承した。厚労省は、来年6月の施行にむけて準備を進める。

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