全日病ニュース

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医療と介護の複合ニーズに対応して介護医療院を創設

医療と介護の複合ニーズに対応して介護医療院を創設

【全日病・介護報酬改定等説明会】介護医療院の基準と報酬を説明

 全日病は3月1日、2018年度介護報酬改定及び介護医療院に関する説明会を都内の会場で開き、厚生労働省老健局老人保健課の鈴木健彦課長が介護医療院の基準および報酬設定の考え方を説明した。介護医療院に関する説明の要旨は次の通り。
長期療養・生活施設として創設
 介護医療院は、2017年の介護保険法改正によって法律に位置づけられた。
 「日常的な医学管理が必要な重介護者の受入れ」や「看取り・ターミナル」等の機能と、「生活施設」としての機能を兼ね備えた、新たな介護保険施設として4月に創設される。
 病院から介護医療院に転換した場合は、転換前の病院の名称を引き続き使用できる。〇〇病院から転換した場合、「〇〇病院 介護医療院」もしくは「介護医療院 〇〇病院」という形で以前の病院の名称が使える。
 介護医療院は、要介護者に対し、「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する機能を持ち、介護保険法上の介護施設であるが、医療法上は医療提供施設として位置づけられる。また、現行の介護療養病床の経過措置期間は、6年間延長することが決まった。
Ⅰ型とⅡ型の2つのサービスを導入
 介護医療院は、医療と介護の複合的ニーズに対応する施設であり、介護療養病床(療養機能強化型)相当のサービス(Ⅰ型)と老人保健施設相当以上のサービス(Ⅱ型)の二つの類型を設け、そのための人員・設備・運営基準を定めた。
 人員基準については、 ①医師、薬剤師、看護職員、介護職員は、Ⅰ型とⅡ型に求められる医療・介護ニーズを勘案して設定し、 ②リハビリテーション専門職、栄養士、放射線技師、その他の従業者は施設全体として配置をすることを念頭に設定した。
 療養室については、定員4名以下、床面積を8.0㎡ / 人以上とし、プライバシーに配慮した環境になるよう努めることとした。療養室以外の設備基準については、診察室、処置室、機能訓練室、臨床検査設備、エックス線装置等を求めることとする。
 運営基準については、介護療養型医療施設の基準と同様としつつ、他の介護保険施設との整合性や長期療養を支えるサービスという観点も鑑みて設定した。医師の宿直については求めるが、一定の条件を満たす場合等に一定の配慮を行うこととしている。
 なお、介護療養病床または医療療養病床から介護医療院に転換する場合は、 療養室の床面積や廊下幅等の基準緩和など、配慮が必要な事項については基準の緩和等を行う。
人員基準と基本報酬
 実際の報酬は、表のようになる。
 Ⅰ型介護医療院の算定要件は、介護療養病床の機能強化型Aの要件と同様である。サービス費(Ⅰ)は、従来の機能強化型A相当であり、看護6:1・介護6:1が基準となる。
 サービス費(Ⅱ)と(Ⅲ)は、機能強化型B相当で、サービス費(Ⅱ)は看護6:1・介護4:1、サービス費(Ⅲ)は看護6:1・介護5:1が基準となる。
 サービス費(Ⅰ)と(Ⅱ)は同じ人員配置だが、入所者の要件が異なる。
サービス提供単位
 介護医療院のⅠ型とⅡ型のサービスについては、介護療養病床において病棟単位でサービスが提供されていることに鑑み、療養棟単位で提供できることとする。ただし、規模が小さい場合については、これまでの介護療養病床での取扱いと同様に、療養室単位でのサービス提供を可能とする。
 全部の療養棟をⅠ型介護医療院にそろえることもできるし、Ⅰ型とⅡ型でフロアを分けることもできる。ただし、Ⅰ型介護医療院またはⅡ型介護医療院の中で、サービス費(Ⅰ)と(Ⅱ)を組み合わせることはできず、サービス費は(Ⅰ)か(Ⅱ)か(Ⅲ)のいずれかを選択しなければならない。
介護療養病床の基本報酬の見直し
 介護療養病床の基本報酬も見直す。介護療養型老人保健施設では、一定の医療処置の頻度等を基本報酬の要件としていることを踏まえ、この要件を介護療養病床の基本報酬の要件とし、メリハリをつけた評価とする。
 療養機能強化型A・B・その他の基本報酬は変えないが、「一定の要件を満たす入院患者の数が基準に満たない場合の減算規定」を新設する。基準を満たさない場合、100分の95の減算とし、一部の加算のみ算定可とする。
加算関係
 これまで介護療養病床で評価されている加算等その他の取扱いについては、引き続き介護医療院においても同様とする。なお、必要に応じて加算等の名称を変更する。また、介護療養病床から転換したことに伴い新たに創設される加算がある。
再入所時栄養連携加算(400単位/回)
 介護保険施設の入所者が医療機関に入院し、経管栄養または嚥下調整食の新規導入など、施設入所時とは大きく異なる栄養管理が必要となった場合であって、介護保険施設の管理栄養士が当該医療機関での栄養食事指導に同席し、再入所後の栄養管理について当該医療機関の栄養士と相談の上、栄養ケア計画の原案を作成し、当該介護保険施設に再入所した場合に、1回に限り算定できる。
 栄養マネジメント加算を算定していることが要件となる。
重度認知症疾患療養体制加算
 重度の認知症疾患への対応について、入所者のすべてが認知症である老人性認知症疾患療養病棟で評価されているような、精神保健福祉士や看護職員の手厚い配置に加え、精神科病棟との連携を加算として評価する。
移行定着支援加算(93単位/日)
 介護医療院への早期・円滑な移行を進めるために新設する加算である。介護療養病床または医療療養病床から介護医療院に転換後、転換前後におけるサービスの変更内容を利用者およびその家族や地域住民等に丁寧に説明する等の取組みについて、最初に転換した時期を起算日として、1年間に限り算定可能である。
 転換を行って介護医療院を開設した等の旨を地域の住民に周知するとともに、入所者およびその家族等と地域住民等との交流が可能となるよう、地域の行事や活動等に積極的に関与することが求められる。2021年3月までの期限を設けている。
緊急時施設診療費(緊急時治療管理)(511単位/日)
 介護医療院は、病院・診療所ではないものの、医療提供施設として緊急時の医療に対応する必要があることから、介護老人保健施設と同様に緊急時施設療養費と同様の評価を行う。入所者の病状が著しく変化した場合に緊急その他やむを得ない事情により、緊急的な治療管理としての投薬、検査、注射、処置等の医療行為を行ったときに算定する。同一の入所者について1月に1回、連続する3日を限度とする。
居宅サービス
 介護療養病床で提供可能であった短期入所療養介護、通所リハビリテーションおよび訪問リハビリテーションについては、介護医療院においても提供可能となる。
医療機関併設型の特定施設への転換
 介護療養病床から「有料老人ホーム等と医療機関の併設型」に転換する場合は、生活相談員、機能訓練相談員、計画作成担当者の兼任を認めるほか、浴室、便所、食堂、機能訓練室の兼用を認める特例を設ける(省令改正)。
第7期介護保険事業計画
 介護保険事業計画の関係では、介護療養病床から介護医療院、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、特定施設入居者生活介護に転換する場合、定員の増加分は、第7期介護保険事業計画の必要入所(利用)定員総数に含めないこととしている。
診療報酬での取扱い
 介護医療院は、医療提供が内包されている施設であるため、その内容に応じて給付調整を行うこととし、介護老人保健施設に係る給付調整と同様に扱う。
 また、在宅復帰・在宅移行に係る評価において、介護医療院は住まいの機能を有するとの考え方から、居住系介護施設等に含め、「退院先」として扱う。
 入院料において、在宅からの受入れに対する評価について、「自宅」と同様の取扱いとする。
 医療に係る情報提供や共同指導については、介護老人保健施設と同様の取扱いとする。対応する報酬は、診療情報提供料(Ⅰ)、退院時共同指導加算(訪問看護管理療養費)である。
 病院の機能分化の観点から、介護医療院等の介護保険施設を有する医療機関については、総合入院体制加算の評価対象から除外する。

 

全日病ニュース2018年3月15日号 HTML版

 

 

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    と15日に発行する機関紙です。最新号から3 ... 社会保障審議会・介護給付費分科会(
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